トランスジェンダーになりたい少女たち
2020年の著書 / ウィキペディア フリーな encyclopedia
『トランスジェンダーになりたい少女たち SNS・学校・医療が煽る流行の悲劇』(トランスジェンダーになりたいしょうじょたち エスエヌエス・がっこう・いりょうがあおるりゅうこうのひげき、英: Irreversible Damage: The Transgender Craze Seducing Our Daughters、以下「トランスジェンダーになりたい少女たち」)は、2020年にアビゲイル・シュライアーによって書かれ、レグナリー・パブリッシング社(英語版)から出版された本である[1][2]。この本は、「急速発症性性別違和(ROGD)」という論争のある概念を支持している[1][3][4][5]。ROGDは、どの主要な専門機関によっても医学的診断として認められておらず、信頼できる科学的証拠に裏付けられていない[1][6][7][8][9][10]。
著者 | アビゲイル・シュライアー |
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国 | アメリカ |
言語 | 英語 |
出版社 | レグナリー・パブリッシング社(英語版) |
出版日 | 2020年6月30日 (2020-06-30) |
出版形式 | 印刷物、デジタル |
本書は、ソーシャルメディアのインフルエンサーなどの影響を受け、トランスジェンダー[注 1]ではないのにそうだと思い込んだ結果、後に後悔することになる不可逆的な医療ケアを受ける子どもが増えている、また、その治療は科学よりもイデオロギーに基づく医師たちによって助長されると主張するものである[1][15][16]。著者は、出生時に女性として割り当てられた10代の若者たちを指しながら、「2010年代に思春期の女の子たちの間で突然、トランスジェンダーであるという自己認識が急増した」と述べ、これを「拒食症や過食症、多重人格障害の犠牲になった、不安感が強く抑うつ的な(主に白人の)女の子たち」の間の「社会的伝染」に原因するものだとした[1][16]。そして、若者の性別違和に対する治療法として、性別を肯定する精神医学的支援、ホルモン補充療法、性別適合手術(これらをまとめて「ジェンダーを肯定するケア〈gender-affirming care〉」と呼ぶことが多い)をおこなうことを批判した[17][18]。また、流行から子どもを守るために「子どもにインターネットで交流させないこと」「親の権威を保つこと」「ジェンダー・イデオロギー教育を支持しないこと」「子どもの性別違和の主張を認めないこと」「出産能力は祝福であると娘に伝えること」などを親に勧めた[1][16][17][18]。
この本の反応は賛否両論であり、肯定的なレビューの多くは著者の主張を支持しているが、批判の多くは本に利用された逸話の選択や主張の科学的根拠に関する問題に焦点を当てている[17][18][15]。この本がトランス差別的であるとして[19][20][注 2]、またトランスマスキュリン[注 3]やノンバイナリーであると認識する10代の若者を「彼女」と呼ぶ本書の姿勢をミス・ジェンダリングであるとして[23]、販売を制限しようとするいくつかのボイコットが行われた[24][25][26]。
日本においても、当初は「あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換[注 4]ブームの悲劇」というタイトルで2024年1月にKADOKAWAから刊行される予定だったが[30][31]、タイトルや事前公開された内容紹介について議論や批判が起き[32][33]、2023年12月5日に発売中止と当事者への謝罪が発表された[34][35]。その後、産経新聞出版より2024年4月に『トランスジェンダーになりたい少女たち SNS・学校・医療が煽る流行の悲劇』というタイトルで刊行された[36][37][38]。