アトラスV
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アトラスV(アトラスファイブ、Atlas V)は、アメリカ合衆国で運用されている使い捨て型ロケット。21世紀初頭に運用が開始されたアトラス・ロケットシリーズの最新型である。アトラスVはロッキード・マーティンが運用していたが、2010年代現在はロッキード・マーティンとボーイングの合弁会社のユナイテッド・ローンチ・アライアンスが運用する。アトラスVはロシア製のケロシンと液体酸素を推進剤とするRD-180を第1段のロケットとして使用し、アメリカ製の液体水素と液体酸素を燃焼するRL-10を第2段のセントールで使用する。
NASAが初めてアトラスVを使用したマーズ・リコネッサンス・オービターの打ち上げ(2005年8月12日11:43:00 (GMT))。ロケットの仕様は401であった。 | |
機能 | EELV/中規模衛星打ち上げロケット |
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製造 | ユナイテッド・ローンチ・アライアンス |
開発国 | アメリカ合衆国 |
打ち上げコスト (2024) | 18700万ドル[1] 401仕様の場合 |
大きさ | |
全高 | 58.3 m (191.2 ft) |
直径 | 3.81 m (12.49 ft) |
質量 | 334,500 kg (737,400 lb) |
段数 | 2段式 |
積載量 | |
LEOへのペイロード | 9,797–18,814 kg [2] (21,598–41,478 lb) |
ペイロード GTO |
4,750–8,900 kg [2] (10,470–19,620 lb) |
打ち上げ実績 | |
状態 | 運用中 |
射場 | ケープカナベラル SLC-41 ヴァンデンバーグ SLC-3E |
総打ち上げ回数 | 92 (401:40回、411:6回、421:8回、431:3回) (501:7回、511:1回、521:2回、531:4回、541:8回、551: 12回、N22:1回) |
成功 | 91 (401:39回、411:6回、421:8回、431:3回) (501:7回、511:1回、521:2回、531:4回、541:8回、551:12回、N11:1回) |
部分的成功 | 1回 (401)[3] |
初打ち上げ | 401:2002年8月21日 411:2006年4月20日 421:2007年10月10日 431:2005年3月11日 501:2010年4月22日 521:2003年7月17日 531:2010年8月14日 541:2011年11月26日 551:2006年1月19日 |
特筆すべきペイロード | マーズ・リコネッサンス・オービター ニュー・ホライズンズ ルナー・リコネサンス・オービター ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー ボーイング X-37B シグナス CRS OA-4 |
補助ロケット (ノーマル仕様) - エアロジェット | |
補助ロケット数 | 0から5基(本文参照) |
エンジン | 固体燃料:1基 |
推力 | 1,270 kN (285,500lbf) |
比推力 | 275秒 |
燃焼時間 | 94秒 |
燃料 | 固体燃料 |
補助ロケット(ヘビー仕様 (5HX)) - アトラスCCB | |
補助ロケット数 | 2基 |
エンジン | RD-180:1基 |
推力 | (933,400 lbf) |
比推力 | 311秒 |
燃焼時間 | 253秒 |
燃料 | RP-1/LOX |
第1段 - アトラスCCB | |
1段目名称 | アトラスCCB |
1段目全長 | |
1段目直径 | |
エンジン | RD-180:1基 |
推力 | 4,152 kN (933,400 lbf) |
比推力 | 311秒 |
燃焼時間 | 253秒 |
燃料 | RP-1/LOX |
第2段 (アトラスV XX1) - セントール | |
2段目名称 | セントール |
2段目全長 | |
2段目直径 | |
エンジン | RL10A または RL10C:1基 |
推力 | 99.2 kN (RL10A) (22,300 lbf) |
比推力 | 451秒 |
燃焼時間 | 842秒 |
燃料 | LH2/LOX |
第2段 (アトラスV XX2) - セントール | |
2段目名称 | セントール |
2段目全長 | |
2段目直径 | |
エンジン | RL10A:2基 |
推力 | 147 kN (41,600 lbf) |
比推力 | 449秒 |
燃焼時間 | 421秒 |
燃料 | LH2/LOX |
RD-180エンジンは RD AMROSS から供給され、RL-10はプラット&ホイットニー・ロケットダインから供給される。いくつかの仕様ではエアロジェット製の補助ロケットを第1段の周囲に使用する。ペイロード・フェアリングは直径が4または5mで3種類の長さがあり、RUAGスペース(英語版)社が生産する。ロケットはアラバマ州ディケーター、テキサス州ハーリンジェン、カリフォルニア州サンディエゴとULAの本社近くのコロラド州デンバーで製造される[4]。
2012年6月時点の成功率はほぼ完璧に近い。2007年6月15日に打ち上げられたアメリカ国家偵察局(NRO)のNROL-30は上段のセントールロケットの燃焼が予定よりも早く停止したために、2機の海洋偵察衛星は予定よりも低い軌道へ投入された[5]。しかし、アメリカ国家偵察局ではこの打ち上げは成功に分類されるとしている[6][7]。
アトラスVロケットの信頼性の高さを武器に、ロッキード・マーティンは2014年3月、業界で初めて、そして唯一、打上げが完全に失敗した場合の打上げ費用を100%補償あるいは再打ち上げするプログラムをアトラスVロケットに導入した。また米国政府の契約以外の打上げであれば、部分的なトラブルがあった場合も、費用の一部を払い戻しすることにした[8][9]。
2021年8月、ULAはアトラスVの販売停止を発表した[10]。残りの打ち上げ予定回数は29である。後継機はメインエンジンに米国製のBE-4を採用し、2024年1月8日初打上げに成功したヴァルカンである[10][11]。