矢吹駆
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矢吹 駆(やぶき かける)は、笠井潔の探偵小説「矢吹駆シリーズ」に登場する架空の人物である。
笠井の小説家としてのデビュー作『バイバイ、エンジェル』から登場する経歴不明の青年で、1970年代のパリを主要舞台に物語が展開される。本シリーズの特色はいくつかあるが、とりわけ異彩を放っているのはカケルと実在の思想家や哲学者らをモデルにした事件関係者との討論で、その論題は事件に関連するイデオロギー、神学、哲学等である。また事件の背景になっている文学、思想哲学、文化芸術や中世から近現代のヨーロッパ史に渡る衒学趣味が披瀝されている。事件は一作ごとに解決されるが、記述者であるナディア・モガールが異邦人の青年へ心が傾斜していく過程と、事件の背後で暗躍する宿敵ニコライ・イリイチとの対決の構図がシリーズを通してのストーリーになる。黄金期本格ミステリのコードを継承しながら人文学と物語性を取り入れた、独創性な現代ミステリの先駆けである。