シュードウリジン
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シュードウリジン (英: pseudouridine、ギリシャ文字のΨや英文字のQで略記される)[1] は、ヌクレオシドであるウリジンの異性体。リボース環とウラシルの間のグリコシド結合のN-C結合がC-C結合に置き換わっている。RNAに知られている100を超える修飾塩基としては最も一般的で[2]、Ψはすべての生物種、ほとんどのRNAに見出されている[3][4]。
シュードウリジン | |
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5-[(2S,3R,4S,5R)-3,4-Dihydroxy-5-(hydroxymethyl)-oxolan-2-yl]-1H-pyrimidine-2,4-dione | |
5-(β-D-ribofuranosyl)pyrimidine-2,4(1H,3H)-dione | |
別称 psi-Uridine, 5-Ribosyluracil, beta-D-Pseudouridine, 5-(beta-D-Ribofuranosyl)uracil | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 1445-07-4 |
PubChem | 15047 |
ChemSpider | 14319 |
UNII | 7R0R6H6KEG |
ChEBI | |
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特性 | |
化学式 | C9H12N2O6 |
モル質量 | 244.20 g/mol |
外観 | White granular powder |
水への溶解度 | Highly soluble in water. |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
転写やその後の合成過程の後、RNAは化学的に異なる100以上の修飾を受ける。こうした修飾は転写後の段階でRNAの発現を調節している可能性があり、RNAの翻訳、局在、安定化などさまざまな役割を果たしている可能性がある。シュードウリジル化もそうした修飾の1つであり、ウリジンがC5-グリコシド結合型異性体であるシュードウリジンへ変換される。ウリジンには一般的なリボースのC1位とウラシルのN1位の間のC-N結合が存在するのに対し、シュードウリジンではリボースのC1位とウラシルのC5位がC-C結合を形成している。C-C結合は、より大きな回転自由度と立体配座の柔軟性を与える[3]。さらに、シュードウリジンにはN1位に余分な水素結合供与体が存在する。シュードウリジンは5-リボシルウラシルとしても知られ、tRNA、rRNA、snRNA、snoRNAなどの構造的RNAの構成要素として普遍的に存在している。近年では、タンパク質をコードするmRNAにも発見されている。シュードウリジンは最も豊富に存在する修飾塩基であり、生物の3つのドメインすべてに存在し、最初に発見された修飾塩基である。このヌクレオチドは「5番目のヌクレオチド」であると見なされており、酵母のtRNAの4%を占めている。この塩基修飾はRNAを安定化し、余分なイミノ基を介して水分子と水素結合を形成することで塩基のスタッキングを強化する。大腸菌Escherichia coliのrRNAにはシュードウリジンが11個存在し、酵母の細胞質のrRNAには30個、ミトコンドリアの21S rRNAには1つ、ヒトのrRNAには約100個存在する。これらからは、生物の複雑さとともにシュードウリジル化の程度が増大していることが示唆される。rRNAやtRNA中のシュードウリジンは局所的な構造を微調整して安定化し、mRNAの解読、リボソームの組み立てとプロセシング、そして翻訳に関する機能の維持を助けることが示されている[3][5][6]。snRNA中のシュードウリジンは、スプライソソームRNAとpre-mRNAとの相互作用を高め、スプライシングの調節を促進することが示されている[7]。