ヌクレオソーム
真核生物におけるDNAのパッケージングの基本的単位 / ウィキペディア フリーな encyclopedia
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ヌクレオソーム(nucleosome)は、真核生物におけるDNAのパッケージングの基本的単位であり、クロマチンの基本要素である。ヌクレオソームは、ヒストン八量体 (histone octamer) とその周囲に巻きついたDNAから構成される[1]。ヒストン八量体はヒストンH2A、H2B、H3、H4各2コピーずつから成る。
より正確には、ヌクレオソームは、ヌクレオソームコア粒子 (nucleosome core particle) とリンカーDNA (linker DNA) から構成される。ヌクレオソームコア粒子とは、ヒストン八量体の周囲を約146 bpのDNAが左巻きに1.67周分巻いて形成される構造であり[2]、それぞれのコア粒子は最長で約80 bpのリンカーDNAによって連結されている。ヌクレオソームという用語はしばしばコア粒子と同義に用いられることも多いが、正確には両者を区別すべきである[3]。
ヌクレオソーム構造は、1974年にDon OlinsとAda Olinsによって電子顕微鏡を用いて初めて観察された[4]。ヒストン八量体と200 bp DNAから成るヌクレオソームの基本構造モデルは、ロジャー・コーンバーグ (Roger Kornberg) によって提唱された[5][6]。ヌクレオソームの遺伝子発現抑制への関与は、1987年にLorchらによってin vitroで[7]、1988年にHanとマイケル・グルンスタイン (Michael Grunstein) によってin vivoで実証された[8]。
ヌクレオソームは、コアヒストンの翻訳後修飾という形でエピジェネティックな遺伝情報を運ぶと考えられている。ゲノム中のヌクレオソームの位置はランダムではなく、各ヌクレオソームの位置によって調節タンパク質のDNAへのアクセシビリティが決定される[9]。
真核生物のクロマチンは、ヌクレオソーム形成を基盤として、より複雑な構造へと折りたたまれ、細胞核内に収納される[10]。ヒトの各細胞には約3000万個のヌクレオソームが含まれている[11]。現在では、全ゲノムのヌクレオソームの位置マップがマウスの肝臓や脳など多くのモデル生物で利用可能である[12]。
ほとんどの真核細胞とは対照的に、成熟した精細胞はゲノムDNAのパッケージングに主にプロタミンを利用する。これは、はるかに高いパッケージングを達成するためである可能性が高い[13]。
古細菌でもヒストンに対応するものや単純なクロマチン構造が発見されており[14]、ヌクレオソームを利用する生物は真核生物だけではないことが示唆されている。