古代のサガ
サガのサブジャンルの一つ / ウィキペディア フリーな encyclopedia
古代のサガ(こだいのサガ、古ノルド語: fornaldarsǫgur[注 1])[注 2]とは、サガのサブジャンルの一つである。伝説的サガ(英語: legendary saga)と呼ばれることもある[3][4][1][注 3]。
「古代のサガ」という名称は、デンマークの学者カール・クリスチャン・ラヴン(英語版)が1829-30年に刊行した著作『Fornaldarsögur Norðrlanda』(北欧古代サガ[5])に由来する[3][4][6][7]。この著作はサガを集めたものであり、この著作に収録されたサガと同傾向のサガが「古代のサガ」と呼ばれている。
アイスランドでサガが写本に書き残されたのは主に12世紀後半以降、特に盛んだったのは13世紀初頭から13世紀末にかけてである[4]が、古代のサガの多くが書き残されたのは、他の種のサガよりも後となる13世紀半ば以降であったと考えられている[3][8][9]。ただし伝承自体はそれ以前から伝わっていたようで、例えば『ストゥルルンガ・サガ(英語版)』(「ソルギルスとハヴリジのサガ(スペイン語版)」第11章[注 4])に、1119年のレイキャホウラルの婚宴においてフロームンド・グリプスソンに関するサガを含む複数のサガが語られ、またスヴェッリル王から「このような『嘘のサガ』[注 5]は面白い」と評された、という記述が残されている[10][11][12]。
内容としては、アイスランド植民以前(9世紀以前)の英雄や伝説的な人物(王、ヴァイキング、戦士など)を扱ったものが多い。書き残された時代からは遠い昔の出来事を扱っているため「古代」のサガと呼ばれる[13][14]。同じくサガのサブジャンルの一つである「アイスランド人のサガ(英語版)」などと比べ、より空想的な傾向が強いとされる[3][15]。現代の学者からの文学的評価はアイスランド人のサガに比べ劣るとされる[16][9]が、中世から近世にかけて民衆には人気があったようで、数多くの紙写本が残されている[9][7]。また古代のサガにインスピレーションを受けた創作者も多く、例えば『豪傑フリズショーヴのサガ』を基としたエサイアス・テングネールの『フリショフ物語』、『ヴォルスンガ・サガ』を素材の一部としたリヒャルト・ワーグナーの『ニーベルングの指環』などがある。