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ガンダムシリーズの登場兵器 ウィキペディアから
ヴィクトリーガンダム(VICTORY GUNDAM 通称Vガンダム)は、「ガンダムシリーズ」に登場する架空の兵器。架空の有人操縦式ロボット兵器「モビルスーツ」(MS)の一つ。初出は、1993年放送のテレビアニメ『機動戦士Vガンダム』。
このフィクションに関する記事は、全体として物語世界内の観点に立って記述されています。 |
主人公側の勢力であるレジスタンス組織「リガ・ミリティア」が開発したガンダムタイプMS。従来作品では「ワンオフの試作機」としての設定が多いガンダムタイプとしては珍しく、複数の同型機が存在する「量産機」としての設定が特徴。『機動戦士ガンダム』の主役機「RX-78 ガンダム」や、『機動戦士ガンダムΖΖ』の主役機「ΖΖガンダム」に似た分離合体機構を持ち、コクピットを持つ「コア・ファイター」を中心に機体を3機のメカに分離することができる。
『Vガンダム』劇中では、主人公「ウッソ・エヴィン」をはじめとする主要人物たちが搭乗する。上述のとおり複数の同型機が登場するが、ウッソ機の頭部はガンダムらしいV字アンテナタイプ、それ以外は側頭部にアンテナを持つ「ヘキサタイプ」として一応の区別がつけられている。劇中後半でウッソが後継機の「V2ガンダム(ヴィクトリーツーガンダム、またはブイツーガンダム)に乗り換えてからは、「マーベット・フィンガーハット」搭乗のヘキサがV字アンテナに換装される。
当記事では、小説版『機動戦士Vガンダム』でのV2ガンダム的位置づけにある「セカンドV」や、その他のバリエーション機の解説も記述する。
メカニックデザインはカトキハジメが担当した。カトキはデザインに際し、ガンダムのアビオニクスは頭部に存在する事から脱出装置に組み込むことは合理的であると考えた事と、設定上の機体スケールが従来よりも小型化していた事から新しい合体スタイルを考えたと語っている[1]。また旧来からのガンダムファンよりもSDガンダムで参入したファンを意識したデザインを行ったとも語っている[2]。
TVシリーズらしく、デザインはシンプルなものとなっている[3]。変形の際に上半身パーツではなくコア・ファイターに頭部が格納されたり、コクピットが水平に格納されたりと、斬新なアイディアが盛り込まれた。コアブロックを搭載するというアイディアは久しぶりのTVシリーズだったことで携わっているスタッフのファーストガンダムへのオマージュによりVガンダム企画当初からあり、新しいセンスのコアファイターを中心とした分割方式が大前提だったといわれる[4]。
Vガンダムはガンダムタイプとしては作品内の位置づけが従来の作品とは大きく異なる。主人公機ですら量産型という設定で、派生型や発展型も登場するなど、デザイン面でもバラエティ豊かだった[3]。
またデザインの演出面への取り込みにも見るべき点が多く、復活したコア・ファイターや合体・変形システムの積極的な作劇への組み込み、ロールプレイングゲームの要素を取り入れた工場を巡ってパーツを取得する展開など、新たな試みがなされていた[2][3]。
ヴィクトリーガンダム Victory Gundam | |
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型式番号 | LM312V04 |
製造 | リガ・ミリティア秘密工場 (アナハイム・エレクトロニクス社説も存在[注 1]) |
生産形態 | 量産機 |
頭頂高 | 15.2m |
本体重量 | 7.6t |
全備重量 | 17.7t |
装甲材質 | ガンダリウム合金スーパーセラミック複合材 |
推進機関 | ミノフスキーフライト |
出力 | 4,780kW |
推力 | 7,390kg×6 4,420kg×8 (総推力)79,700kg |
武装 | バルカン砲×2 ビーム・ライフル(ビーム・ピストル) ビーム・サーベル×2 ビーム・シールド×2 ハードポイント用オプション×最大8 その他オプション多数 |
搭乗者 | ウッソ・エヴィン マーベット・フィンガーハット |
その他 | アポジモーター×34 |
リガ・ミリティアが、ザンスカール帝国軍の軍事的脅威に対抗すべく推進したMS開発計画「V(ヴィクトリー)プロジェクト」に基づき開発した機体[6]。「ヴィクトリー」という名称には、勝利へのシンボルとなる祈りが込められている[7]。
量産小型MSとしては同年代にもジャベリンやジェムズガンが存在したものの、開発年次から見てそれらは既にロートルと化しており、ベスパが保有するMS群との性能を踏まえた場合、抵抗運動には新規の高性能MSが必要となった事から開発がスタートした[8]。元々は連邦傘下のMS開発企業がモデルチェンジの候補機として検討していた事もあり、ガンイージとともに開発は進行した[8]。とりわけヴィクトリータイプはリガ・ミリティアの反抗の象徴とする狙いもあり、「ガンダム」の伝説を復活させる機体として高性能かつ高汎用性を有するMSとして設計がなされている[8][注 2]。MS形態はベスパのMSを凌駕するほど高性能を持っている[9]
リガ・ミリティアはアナハイム・エレクトロニクスから協力を受けMS開発を行っている[10][注 1]。その組織の性質上ベスパの秘密警察の監視からカムフラージュしなければならず[11]、各地に点在する秘密工場がいつ攻撃を受けるかわからない状況下でリスク分散を図る必要があった。また、資金が限定されていることから汎用性の高い機体を運用する必要があった[12]。この2つの理由から、このような高コスト機の生産に踏み切った[12]。
量産化はヨーロッパの各地に点在するリガ・ミリティアの工場で行われた[13][注 3]。各パーツは、ヨーロッパ各地や月面など各地に点在する工場で別々に製造されていた。MSとしての正確な総数は掴めていないが、少なくとも、地球上のみで20機前後相当のパーツが完成していた[14]。加えて、各工場ごとに独自の調整を行っていたため、それぞれに若干の差異が生じていたことが確認されている[14]。
本機はミノフスキー・フライトを採用し、同時代のMSと比較しても高い飛行性能を獲得している。機体の変形・分離・合体が可能で、さまざまな運用に応じた形態が取れ、装備換装によって性能強化が可能である[8]。また、機体各部にはハードポイントが設けられ、武装追加も可能[11]。腰部前方のスカートアーマーは変形機構の都合上独立して可動し、水平に展開することで人員や物資を運搬するための荷台にもなる[15]。以上の通り、実戦レベルまで完成されたミノフスキー・フライトを搭載している点と、「マルチプル・モビルスーツ」としてカテゴライズされるに相応しい優れた拡張性が本機の特徴である。基本性能はU.C.150年代時点で特筆すべきレベルにはない[16]ものの、偶然からウッソ・エヴィンという稀代のパイロットを得て、その性能を遺憾なく、あるいは本来のスペックを越えて発揮し[16]、リガ・ミリティアの抵抗運動そのものを大きく勢いづかせることとなる。
なお劇中、後継機であるV2ガンダムが登場した第33話以降は、区別のため「V1(ブイワン)」と呼称されている。ベスパからは、後継機のV2ガンダムも含めて「白いヤツ」「ガンダムもどき」などと呼ばれる。
Vガンダムは、RX-78-2のようなコア・ブロックシステムを有する機体として開発された。頭部とジェネレーター[17]を有するコアファイターはBパーツと呼ばれ、トップリム(Aパーツ)、ボトムリム(Cパーツ)とドッキングし、Vガンダムやトップファイター、ボトムファイターの形態をとるほか、機体各所のハードポイントによりさらなる拡張が可能となっている[11][注 5]
これらの各パーツは空力特性を無視した形状であるが、ミノフスキー・フライトによって通常の航空機を凌駕する低速飛行能力を有している。ドッキング時は、それだけで飛行は行えないもののリフティングボディに近い形状となり、揚力を発生させている。しかし、単独では大した高度をとれないために揚力を発生させる機動装備との併用が必要となり、停止しているパーツとの換装時や着陸状態から飛行へ移る際など、他の機動を伴わない浮遊の際は最大で数十秒しか稼働する事が出来ない。もっとも、一旦飛び立てばリフティング効果とミノフスキーフライトの併用により飛行することができ、低速での換装も可能である。これらのシステムによって各パーツの誘導には既存の光学端末を使用する事ができたため、短い開発期間で完成にこぎつけている[8][注 6]。トップリム・ボトムリムともに単独での飛行時は内部のバッテリーとコアファイターからのマイクロ波送電に頼る構造となっている[20]。トップリム・ボトムリムともに自動操縦またはコアファイターからのリモートコントロールで制御される[21][注 4]。
このような構造となった理由は、リガ・ミリティアという組織が正規軍でないことに由来する。すなわち、育成に時間のかかるパイロットの人数が十分ではなく、補給体制も万全ではなかったため、パイロットの生存性を極力高め、かつ一部破損した機体であっても戦力としてすぐに再使用できるようにする必要があったからである。そこで機体を3つに分割すると共にコクピットと主要部分をコア・ファイターに集約し、破損した部分は即座に新しいパーツと交換できるようにした。各部をブロックごとに分割することによって修理やメンテナンスを容易にし、早急に体勢を立て直すことができた[11]。操縦自体は小学生でも可能なほど簡便であるが[22]、非常に高密度な技術が導入されているため、ユニットそのものの整備性が高いというものではない[22]。稼働状態を維持するためには、消耗品の他にブロック単位での換装や交換を前提としたストックパーツの確保が必須である[22]。なお、ガンイージ等の同時期に生産された機体も共通のものを採用し一括で生産管理できるようになっている[11]。
地上でのリガ・ミリティアの活動初期には、分割構造を活かしてカミオンおよびコア・ファイターキャリアに部品を搭載して運搬した。
なお、MS形態からコクピットをせり出し、ハンガーとブーツ両方がドッキングしたまま飛行形態に変形することも可能で第13話では地上から雲の高さまで上昇し敵機に奇襲を掛ける際に用いているが、過去の可変機ほどの加速性能の描かれ方はされていない。また同様に人型に変形しつつもコックピットのみをせり出した状態でも一瞬戦闘を行っている[注 8]。この形態の設定画・名称は存在しない。
アナハイム・エレクトロニクスはV1、V2ガンダムの生産に協力している[48]が、開発の主体にはなかった[49]とされる。
「クラスターガンダムはどことなくガンイージと似ているシルエットをしています。L・MのMSはサナリィの流れをくむものかもしれませんね」と大河原邦男はF90Y改の試製トップファイターの模型情報1993年8月号掲載画でコメントしている。
「サナリィはサナリィで、F91のような特殊な機体ではなくもっと汎用性のあるMSとして、ヴィクトリーやガンイージー[注 13]といったMSを作っています。」と機動戦士Vガンダムの文芸設定を担当したサンライズ企画室室長の井上幸一が『グレートメカニック.DX 7(2008 winter)』内でのインタビューで述べている。
後述する朽ちていくガンダムが投棄されているラストシーンの背景には、総監督の富野が東欧取材の際に見つけた、実在の山々が用いられている[50]。
物語前期の主役機として29話までの全編にわたり登場する。当初の番組構成では第4話で初登場を予定していたがスポンサーの意向により1話での登場に変更されたため、本編1話の開始時点でウッソは奪ったシャッコーでクロノクル・アシャーのゾロと戦闘中であり、逃走後にVガンダムに乗り換え勝利する、主役機と主人公の出会いや本来コアファイターのパイロットはマーベットだったことが2話-4話の回想で明かされるという変則的な演出となっている。
1話の初合体の際にはクロノクルのゾロに妨害されボトムリムを破壊されるが即座に予備パーツが射出されるなど、従来のガンダム系主役機と異なり消耗パーツを随時換装可能な機体である、9話では捕獲された機体をクロノクルが使用しウッソは取り戻すためゾロで交戦するという1話の逆パターンの展開、ベチエンで合流した輸送機には予備機が搭載されており3機のVガンダムで迎撃するなど、序盤ではそれまでのガンダム作品で見られない新しい描写が行われた。
11話まではゲリラ組織であるリガ・ミリティアの性格が強調され、戦闘時以外は分割してカミオントレーラーに積載して運用された。
ウッソの搭乗機は15話でアーティー・ジブラルタルから引っ越し公社のシャトルで宇宙に上がり、慣れない宇宙戦を経たのちにカイラスギリー攻略戦でオーバーハングパックを装着し強化される(OPでは既に登場している)。カイラスギリー戦後、ゴッドワルド・ハインの駆るアビゴルとの死闘やザンスカール本国での戦闘を経て、マケドニアコロニーからの脱出時、自らがV2ガンダムに乗り換えた際に敵機を撃墜するのに使用され、喪失する。後半ではオリファーの死後、マーベット・フィンガーハットを元気づけるためにオデロらが彼女の使用していたヘキサの頭部をVタイプへと換装する。この機体はユカ・マイラスもホワイトアークにいた時期に時折搭乗していた。マーベット機は地球浄化作戦からエンジェル・ハイロゥ攻防戦まで第一線で戦闘に参加し続け、終戦までその仕様のままで(機体自体は46話でコクピットを残して一度失われている)、最終話ではウッソが戻った故郷カサレリアにV2ガンダムと共に投棄される。
ヴィクトリータイプの製造はヨーロッパ各地に存在する、旧世紀時代の自動車や飛行機の工場を利用したリガ・ミリティアの工場にて行われた。設計図面は各地ともに共通のものを用いているものの、工場ごとに独自の調整を行ったため、機体には若干の差異が存在する[11]。なお、各地でパーツ製造された機体であるために正確な号数はつけられていないものの、ウッソ・エヴィンが搭乗した機体が便宜上1号機と呼ばれる[11]。ABCのパーツを各工場で生産したために正確な生産数は把握されておらず、恐らく地球上では20機分は完成していたとされる[11]。
Vガンダムの量産後期に製造された機体で、頭部を換装した指揮官用の通信・索敵能力強化型。「ヘキサ」は型式番号の「06」に由来する[11]。V字型アンテナを廃止し、側頭部排気ダクト脇に高性能アンテナを設置[11]。額部には高性能複合センサーが備えられている[51]。基本的には頭部のみの違いであり、そのほかはトップリム・ボトムリムともにVガンダムと同一の機体[11][注 14]。月面生産型に限り、ノーマル機と区別するために足の甲の部分が青く塗装されている[11]。当初は指揮官用の機体として運用計画が立てられていたが、Vガンダムの後期生産型はこのヘキサタイプに切り替えられたことから部隊単位での機種転換が行われた[51][注 4]。
アニメ16話より登場。カイラスギリー戦を前に1機が投入され、オリファー・イノエ機として運用される。24話では追加投入されたVガンダムヘキサが登場、マーベットが乗り換えたのをはじめ、モトラッド艦隊追撃で地球へ降下する時にシュラク隊メンバーのコニー、ユカも乗り換えて地球浄化作戦の阻止に参加している。41話以降でリガ・ミリティアの地下工場で生産された機体が補充パイロットのフラニー、ミリエラとともに登場、フラニー機はメガ・ビーム・シールドを装備して出撃するものの、出力が安定せずオーバーロードを起こしている。その後はウッソのV2ガンダムのサポート役として活躍しベスパとの艦隊戦を経て全機が最終決戦まで生き残る。しかし、エンジェル・ハイロゥを巡る戦いでは激戦の末マーベット機を除いた全機がカテジナ・ルースの駆るゴトラタンに撃墜される。EDテーマ画面中では、1機のV字アンテナタイプに随伴する3機のヘキサタイプの姿が確認できる。
Vダッシュガンダム V Dash Gundam | |
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型式番号 | LM312V04+SD-VB03A |
製造 | リガ・ミリティア秘密工場 (アナハイム・エレクトロニクス社説も存在) |
頭頂高 | 15.2m |
本体重量 | 9.2t |
全備重量 | 20.8t |
装甲材質 | ガンダリウム合金スーパーセラミック複合材 |
推進機関 | ミノフスキーフライト スラスター |
出力 | 4,970kW |
推力 | 29,010kg×2 4,420kg×8 (総推力)93,380kg |
武装 | ヴィクトリーガンダム標準装備 八つ手ビーム・サーベル オーバーハングキャノン×2 ビーム・スマートガン |
搭乗者 | ウッソ・エヴィン マーベット・フィンガーハット |
その他 | アポジモーター×36 |
Vダッシュガンダムヘキサ V Dash Gundam Hexa | |
型式番号 | LM312V06+SD-VB03A |
搭乗者 | シュラク隊 |
Vガンダムの背部メインスラスターにオーバーハングパックを装着した形態。性能が向上しつつあったベスパの新型機に対抗するため、Vガンダムへの長距離攻撃機能の付加と機動性向上、クルーズ機能の強化を行うために開発された[54]。Vガンダムの宇宙用形態であり、純粋に宇宙戦用として開発された機体と互角以上の戦闘が可能となっている[55]。宇宙世紀0153年4月頃より実働部隊への配備が始まり、当初はエースパイロットだったウッソ機から優先配備された[56]。
漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト』に登場。リア・シュラク隊に配備された濃紺カラーの機体。形状や性能は通常の機体と同一。作中ではヴィクトリーではなく、「ビクトリータイプ」と呼ばれている。
漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』に登場。Vガンダムのコアファイターにガンイージの手足を接合したMS。互換性の高いパーツで組み合わせてあるため、性能低下はほとんど起きていない[61]。コアファイターの機能も残されているが、一度ドッキング・アウトを行うと、再合体には整備施設での作業が必要となる[61]。
元はリア・シュラク隊に所属していたトレス・マレスが、ザンスカール戦争後に地方紛争平定で使用していた機体である。カラーリングは当初リア・シュラク隊仕様に準じた暗黒色だったが、トレスの婚姻を機に青色主体のカラーへと変更された[61]。
メカニックデザインはヴィクトリーガンダムに引き続き、カトキハジメが担当した。カトキはインタビューに際し、胸部のミノフスキードライブユニットをVの字に見立て、背中から光の生えたようなデザインを提案したという。カトキは、同じ富野由悠季監督による宇宙世紀を舞台にした小説『ガイア・ギア』に登場する人型機動兵器マン・マシーンへのオマージュを込めてデザインしたと語っている[注 16][62]。理由としてカトキは、劇中にメカデザイナーとしてチャレンジしたくなるような技術背景があった事を挙げている[注 17][62]。カラーリング面では、『Vガンダム』放映前の主役機デザインコンペにおいて、大河原邦男が提出した『大河原版 Vガンダム』(のちのガンイージ)から引き継がれている部分もある[63]。
V2ガンダムをデザインする際のバンダイ側との打ち合わせでは、Vガンダムをプラモ化した際の問題点を解消する方針が採られ、直立させるためのクリアランスの確保から肥大化していた足首パーツを修正する等、詳細なディスカッションが行われたが、バンダイ側の担当者が非常に協力的で、カトキが省略を懸念していたパーツ類を殆ど採用した組み立てを行い、玩具化を実現したという[64]。
V2ガンダムという名前は準備段階の仮称であったが、そのまま本採用となった[65]。
なお、アサルトパーツとバスターパーツは、V2ガンダムの企画当初から存在していたものではなく、ガンダム本体のデザイン校了後に番組のてこ入れがあり、急遽プラモデルのために書き起こされたものである[65]。
小説版『機動戦士Vガンダム』にはV2ガンダムは登場しない(後述)。
リガ・ミリティアの新たなフラッグシップMSとして開発されたVガンダムの後継機[66]であり、宇宙世紀0153年に至るまでの技術を結集した最高性能のモビルスーツ[67]。2機のコア・ファイターがワンオフ仕様[68]で完成している。「史上最速のモビルスーツ[69]」、「宇宙世紀が生んだ究極のモビルスーツ[70]」、或いは「宇宙世紀史上最強の機動兵器[71][72]」と評されており、宇宙世紀時代における最強の「ガンダム」と言っても過言ではない[73]。
ザンスカール戦争において、圧倒的な戦力数の差を覆せるだけの性能で戦局をリガ・ミリティアへ傾ける[74][75]という、文字通りの戦略級機動兵器として戦場を翔けている。優れたパイロットが引き出したその絶大な戦闘力によって、一機のモビルスーツながらも戦争終結の原動力のひとつとなった[76]。
これほど高度なモビルスーツを開発するための技術を、リガ・ミリティアが単独で入手・使用できるはずもなく、背後には戦況がリガ・ミリティアに有利と見て、より積極的に支援に出たアナハイム・エレクトロニクスとサナリィの存在がある[67]。また、リガ・ミリティア創設期のメンバーでもあるミューラ・ミゲルが開発に関わっている[77][注 4]ともされる。
Vガンダムと同様にコア・ファイターとハンガー、ブーツで構成される分離合体機構を持ち、各パーツや武装も一定の互換性が保たれている。一方で、コア・ファイターのメインスラスターに革新的な推進機関「ミノフスキー・ドライブ」を採用しており、従来の推進剤によるスラスターをメインに使用する機体をはるかに凌ぐ加速性・機動性を発揮する。当初はVガンダムのメインスラスターをジェネレーター[17]ごと換装する「セカンドV」プランが進行していたが[78]、機体がミノフスキードライブの出力に耐えうる設計ではなかったため、改めて本機が新規設計された。実機の製造は月面で行なわれ、サナリィの施設提供とアナハイム・エレクトロニクスの出資を受けたとされる[79]。
更に、ミノフスキードライブを主機とするため出力に余裕が生まれ、補器ジェネレーターの余剰出力を活かしたアサルトパーツ、バスターパーツといったオプションパーツも並行開発された[80]。これらのオプションパーツは高機能でありながら、戦場で友軍機に直接取り付けることさえ可能となっている[81]。通常、MSに増加パーツを装着するには専用設備が必要となるものだが、V2ガンダムは拡張性においても既存の兵器を大きく上回っていたため、換装作業は短縮され機体運用性の拡大に繋がった[81]。
作中での機体呼称について、宇宙世紀0153年5月14日に受領してからの運用当初(第29話 - 第31話)は「V2(ブイツー)」の呼称が定着しておらず、「ヴィクトリーガンダムのタイプII」「ヴィクトリー(の)Mk-II」の呼称も用いられた。
V2ガンダムに採用された新型の推進システム[94]。駆動原理の詳細設定は、ミノフスキー粒子#ミノフスキー・ドライブを参照。
V2ガンダムでは大気圏内外でのメイン・スラスターのみならず、姿勢制御用の[95]アポジモーターや慣性緩和装置[96][76]としても機能し、パイロットには戦闘時にかかる最大20Gの負荷も許容できる[96][78]。
一説には、元々は宇宙世紀0130年代にF99レコードブレイカーにおいてテストされていた技術であったが、試験機の大破によって開発が頓挫していたところ、当時同機に携わっていたミューラ・ミゲルの意向で採用した[77][注 4]ともされる。
V2ガンダムの最大の特徴として、ミノフスキードライブの出力上昇とともに背部に出現する「光の翼」がある。これはドライブユニットに封じ込めきれなかったミノフスキー粒子が放出されたものであり、荷電粒子ビームとして振る舞う性質を持つ[6]。この状態は、そのまま巨大なビーム・サーベルとしても機能し、最大1キロのビーム帯を発生させる事すら可能としている[6]。また、ミノフスキードライブは展開時に磁場帯をも発生させているため、接近すれば電子機器に対する影響が発生[97][注 19]。逆に光の翼そのものがIフィールドによる干渉を受けるリスクも存在する[97]。
尚、この光の翼は両腕のビーム・シールド発生装置でコントロールする事も可能で、翼を取り込み機体全体を覆う強固な防御壁としても利用できる[97]。ただし、光の翼はある程度は意図的に生じさせることも可能だが、現象としては制御不能であり、そのため光の翼は青色やピンク色をはじめ様々な色や形状が報告されている[98][注 20][注 21]。
機体の構成は基本的に前世代機であるVガンダムから引き継がれているが、アーキテクチャの刷新によりスペックは格段に向上した。
当初は「V2ダッシュ」の名でデザインされていた[103]。
模型化しやすさを優先して、ミノフスキー・ドライブ(ウイング・バインダー)を一旦分離してからバスターパーツを装着、再度ウイング・バインダーを接続する方式でデザインされおり、デザイン画には、バインダーが延長されても胸からの「Vの字」が崩れないよう注意する旨が記載されている[103]。
このため、カトキハジメはバスターへの換装は戦艦のドック内での作業を前提と考えていた[104]が、アニメスタッフの解釈ミスで破損したバスターパーツを戦場でパージする、更には戦場でMSが直接V2ガンダムに装備(野戦換装)させる、バスターパーツの構造的に不可能なシーンが登場してしまった[104]。
しかしながら、“ウイング・バインダーを外す事が前提のパーツの立体構造を、根本から修正する”のは非常に難度が高く、『Vガンダム』放映当時(1994年)以降、長年に渡ってカトキ画通りの(アニメの動きが再現できない)ガンプラ、フィギュアが販売され続けてきた。これを打開し、バスターパーツで挟み込む構造にアレンジすることができたのは、放映から約25年が経過したマスターグレード版V2アサルトバスターガンダム(2018年発売)であった。
オーバーハング・パックと呼ばれる2種類のビーム兵器と、6基のマイクロミサイルポッドを装着した中・長距離砲撃形態。ミノフスキー・ドライブの推力に余裕があるため、補助推進装置は追加されていない[105]。増設したパーツによってミノフスキー・ドライブ・ユニットの自由度を向上させ、重量増加を相殺するほど機動力を確保する[106]。主に拠点攻撃のための強襲用装備として位置付けられるが、総合的には機動性も向上する[66]。
46話から登場し、ファラ・グリフォンの乗るゲンガオゾと戦う。47話で装備を破壊されたが49話で再度装備して出撃し、V2アサルトバスターに換装されている。
コミックボンボンの漫画版では未登場。
デザイン開始当初、アサルトパーツは「フルアーマーV2」や「V2ガンダムクロス(聖衣)」など、さまざまな名前で呼ばれていた。金色のパーツはカトキハジメが、パイロット及び周囲の人間のサイコミュエネルギーを増幅する“聖衣(クロス)”というアイデアを練っていた名残である。この頃の画稿では、コクピット周りにもパイロットを保護するための“聖衣”を装着していたが、結局はプラモデルの金型制限、そしてコア・ファイターへの変形を阻害して玩具としての価値を落としてしまうという理由により没となっている[110]。これ以外にも、腕部に装備するミサイルポッドがデザインされていた段階もあったが、こちらもやはり玩具のコスト面をクリアできず、採用されなかった[42]。
カサレリア以来ウッソの戦いを見守ってきた老技術者達がリーンホースJr.においてあつらえた[ep 1][89]、突撃・白兵戦用追加装備「アサルトパーツ」を装着した形態[111]。Iフィールド・ジェネレーターと耐ビーム・コーティングによって特に対ビーム防御性能を高め、敵陣突破能力の向上を図っている[111]。
ビームに対しては無類の防御力を誇るうえ、実体弾からもV2本体を守る仕様により、敵防衛線を単機で突破してエンジェル・ハイロゥ内部への侵入に成功することで、運用コンセプトを証明して見せた。更にエンジェル・ハイロゥ攻防戦の終盤においては、リグ・コンティオの放ったメガ・ランチャーの直撃によって全てのパーツが失われるも、機体への大きな損傷を防ぐ[ep 4]という本来のコンセプトを果たしている[111]。以上の通り中・長距離の攻撃に対し有効な一方で、ハードポイントでのパーツ接続もあるため、格闘戦における破損の実例が報告されたといわれる[66][111]。
コミックボンボンの漫画版では、終盤の2話で登場。こちらでは、ハンゲルグからアサルト装甲を託される形で現地換装している。登場シーンでは、企画段階の名称にも通じる「CROSS」の書き文字が添えられている。
V2アサルトバスターガンダム V2-Assault-Buster Gundam | |
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型式番号 | LM314V23/24[112] |
全高 | 15.5m |
本体重量 | 13.8t |
全備重量 | 19.9t |
装甲材質 | ガンダリウム合金スーパーセラミック複合材 |
推進機関 | アポジモーター×46 |
出力 | 7,510kW |
推力 | サブスラスター 16,700kg×2 4,770kg×7 (合計)66,790kg 総推力 計測不能 |
武装 | バルカン砲×2 ビーム・サーベル×2 ビーム・シールド×2 ビーム・ライフル(大型マルチプルランチャー装備) メガ・ビーム・ライフル メガ・ビーム・シールド ヴェスバー×2 Iフィールド発生器×2 メガ・ビーム・キャノン スプレー・ビーム・ポッド マイクロミサイルポッド×6 |
搭乗者 | ウッソ・エヴィン |
アサルトパーツ、バスターパーツは当初から同時に装備できるよう設計されており、併用した形態を便宜上アサルトバスターと呼称する[66][注 24]。
宇宙世紀0153年6月22日(49話)におけるエンジェル・ハイロゥ攻防戦の最中に、V2バスターガンダムからこの形態に換装している。本来は長距離支援用のバスターパーツと、中距離戦闘用のアサルトパーツは、戦術の違いから両用することはないとされていた[89]が、各パーツは装備部位が重複することがなく、両方の装備を同時に使用することが可能である[89]。結果的には、対艦隊戦を想定した長距離戦闘用装備と、対中距離・モビルスーツ戦を想定した防御用装備の併用が功を奏し、混線極まる対エンジェル・ハイロゥ戦において理想的な装備となる[89]。事実、戦場では白兵戦から中~長距離に至る全領域においてモビルスーツの範疇を越えた性能を見せ、ウッソ・エヴィンというスペシャルなパイロットの手によって、単機で戦局を左右する絶大な戦闘力を発揮している[113]。
また、ガンダム・タイプのフルアーマーに相応しい着脱機能を活かしたパージによる戦闘続行と、交戦距離の変化に伴う増加装備のパージを組み合わせた戦術を見せている[114]。V2アサルトバスターは増加装備の併用により戦闘形態の変化に対応しやすかったため、敵艦隊との交戦開始から要塞突入に至るまで交戦距離に応じて増加装備をパージする[114]事で、V2ガンダム本体は無事にリーン・ホースJr.へと帰艦している。
劇中のものはV2バスターのマイクロミサイルポッドが装備されておらず、下半身はアサルトと同一である。設定画もこの仕様のものが公開されている[115][116][112]。これとは別に、ミサイルポッドやメガ・ビーム・ライフルまで装備した画稿も放送当時から存在する[105]。
コミックボンボンの漫画版では、バスターパーツが未登場のため本形態は登場しない。
アプリ『機動戦士ガンダム U.C. ENGAGE』の「クロスオーバーUCE」モードに登場。
V2アサルトバスターガンダムに、エンジェル・ハイロゥを破壊するために用意された大口径ビーム・キャノンを装備した形態。大口径ビーム・キャノンは、チャージ時にザンネックの両肩の粒子加速器に似たユニットを展開する。
装備の関係上、ビーム・ライフル、メガ・ビーム・ライフル、メガ・ビーム・シールドは装備不可。
長谷川裕一の漫画『機動戦士Vガンダム外伝』に登場する。青を基調にしたカラーリングのV2ガンダム。本機は合体変形機構検証のために製作・運用試験されたのちに木星船団に譲渡された機体で、ミノフスキードライブは搭載されておらず、性能的にはヴィクトリータイプとほぼ同等[120]となっている。機体カラーは試験運用に携わった「青い閃光」の二つ名を持つ連邦軍退役軍人のパーソナルカラーであるとの説もある[120][注 25]。ハリソン・マディン(地球連邦軍に所属していた頃は「連邦の青い閃光」の異名を持つエースパイロットであった)搭乗によるテストで機体バランスを入念に確認したあと、小型ミノフスキードライブの図面の到着を待ってV2ガンダムの実機製作が行われた[100][注 4]とされる。
デザインはV2ガンダムと同じくカトキハジメが担当した[103]。小説版ではV2ガンダムが登場せず、4巻の終盤からウッソの乗機としてこのセカンドVが登場する。2019年にプレミアムバンダイ限定商品として『HGUC 1/144 セカンドV』が立体化。それまで挿絵のみしか存在してなかったため、この立体化に際してカトキにより改めて設定画が描き起こされた。更に当該商品には、プレミアムバンダイ限定HGUCとしては初の、設定解説付き組立説明書が同梱されている[122][123]。
名称については、一部書籍では「Vセカンド」[124][6]、「セカンドVガンダム」[125]と記載されている。なお、「V」は「ブイ」と発音する[126][122]。
『機動戦士Vガンダム』の放送直前から放送中にかけて三井グリーンランドなどで2/3サイズ(約10メートル)のヴィクトリーガンダム立像を用いたアトラクション『三井グリーンランド決戦! VガンダムVSボーリアン』が行われた。ヴィクトリーガンダム立像は首や腕が可動するが脚は動かず、台の上に直立したまま台ごと移動する。ボーリアンはアメリカからレンタルされたガンダムとは無関係なロボット立像で首や腕か稼働する[要出典]。
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