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日本の法律 ウィキペディアから
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(ぼうりょくだんいんによるふとうなこういのぼうしとうにかんするほうりつ、平成3年法律第77号)は、暴力団員の行う暴力的要求行為の規制等に関する法律で、刑法に対する特別法である。
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
暴力団員の行う暴力的要求行為について必要な規制を行い、および暴力団の対立抗争等による市民生活に対する危険を防止するために必要な措置を講ずるとともに、暴力団員の活動による被害の予防等に資するための民間の公益的団体の活動を促進する措置等を講ずることにより、市民生活の安全と平穏の確保を図り、もって国民の自由と権利を保護することを目的とする。略称は暴対法[1]、暴力団対策法、暴力団新法[2]など。
主務官庁は警察庁刑事局組織犯罪対策部暴力団対策課で、同庁警備局公安課、法務省刑事局公安課および公安調査庁調査第一部と連携して執行にあたる。
出典:[3]
本法は、指定暴力団員がその者の所属する指定暴力団等又はその系列上位指定暴力団等の威力を示して以下の行為をすることを禁止する。(第9条)
1992年(平成4年)3月1日に施行された。山口組、稲川会、住吉会、工藤會など24の暴力団が、本法による指定暴力団とされている。本法によって暴力団員の数は減少し、暴力団事務所の撤去も進んだ。また、対立抗争事件数も減少し、その継続期間も短縮傾向にある。さらに暴力団員による資金獲得活動も困難になった。
本法の施行の結果、暴力団の活動が法律に触れぬように巧妙になり、一般企業社会への進出(企業舎弟の増加)や組織擬装が増加するなど、組織の不透明化・地下組織化・マフィア化が進んだ。また、組織犯罪の国際化や、暴力団の寡占化や政治的殺害も進むことが懸念される[1]。
しかし現在では暴力団排除条例[5]が全国の都道府県、市区町村で施行されていることによって、暴力団員側または暴力団関係者側、事業者側ともに就職、取引、契約、借金、銀行口座の開設、部屋の賃貸などが禁じられているため、暴力団員が一般社会に進出することはできない状況にある。実際に条例違反に関する事例もわずかなことからして、暴力団員が一般社会へ進出していることは、ほぼあり得ないのが現実である。溝口敦は「情けないのはヤクザの側ともいえる。法的に突っ込みどころのある暴排条例に反論するような理論武装ができなくなっている」と事実上皮肉を込めた発言をしている[6]。
2013年施行の法改正により、代理訴訟制度の仕組みが整理され、都道府県単位で設立されている暴力追放運動推進センターなどが、地域住民の代理として暴力団事務所の使用差し止めなどを求める裁判を起こすことが可能になった。発足当初は、制度を活用する動きは低調であったが[7]、2017年10月2日には、指定暴力団神戸山口組の本部事務所に対し、暴力団追放兵庫県民センターが使用差し止めを求める仮処分を神戸地方裁判所に申し立てるなどの動きがみられるようになった[8]。
2008年の法改正で対立抗争などで暴力行為などを起こした指定暴力団組員に絡んで、刑期満了から5年以内の労金や出所祝い金など金品の授受を禁じる賞揚等禁止命令制度が8月に施行された。同年9月に各公安委員会から指定暴力団の代表者等34人に対して賞揚等禁止仮命令が発出した。
法案は、治安立法に対する一部政治勢力の根強い反対風土からすれば、異例といえる衆参全会一致で可決された。しかし、日本国憲法21条1項が保障する「結社の自由」を不当に制限し違憲であるとの主張がある。制定時、暴力団員や支援者らが、抗議のデモ行進や座り込みをし、各地で本法の違憲を主張した訴訟を提起した。弁護士の遠藤誠は、本法の違憲を主張する行政訴訟の弁護に際して、山口組からの12億円余の資金提供の申出を受けたが断り、無償で弁護した。また、遠藤と野村秋介の音頭により、暴力団有志による「任侠市民連合」、右翼団体・一水会の青年組織「統一戦線義勇軍」、新左翼の日本共産党(行動派)が合同で、デモ行進などによる反対運動を展開した。
二代目工藤連合草野一家が提起した訴訟において、福岡地方裁判所は、「暴力団も個人の結合である団体、結社であり、構成する個人については、その憲法上の人権保障の規定は当然に効力が及ぶものであるから、一律にその結社や行動等を禁止し、規制することは、憲法の基本的人権保障の趣旨を無視し、各条項を形骸化し、個人の思想、良心を弾圧する結果を招来しかねない」し、「法3条による指定暴力団との指定処分は、その指定された団体が法に抵触し、存在を許されないとの印象を与えることになることは、払拭できず、その指定された団体の構成員が、いわば暴力的行為を常習する者との印象を受けることは免れないところであり、また、憲法14条1項にいう社会的身分とは、人が社会において占める継続的な地位をいうものである(最高裁昭和39年5月27日判決民集18巻4号676頁)が、少なくとも原告主張のとおり、犯罪経歴保有者の地位は、右にいう社会的身分に当たると解することができ、これを理由として他と異なる取扱いをすることには慎重でなければならないところである」としながら、本法につき、「立法の趣旨は、市民生活の安全と平穏の確保を図ることにあり(同法1条)、この目的自体は必要かつ合理的なもの」であり、「ただ特定の団体の壊滅等のためにのみ制定されたものではない上、暴力団の構成員にとっては、法が企図する規制は、自らの他の人権侵害を阻止される結果になるというにすぎず」、「団体の活動の制限、団体の解散等のような団体への直接の規制は、行うこととされておらず、指定については、一応3年間の有効期限を限ってなされ、また、指定に当たっては、暴力団しか有しない団体的特徴を法文上で明示し、対象の範囲の拡大をなくすとともに審査専門委員制度(法27条)と不服申立制度(法26条)を設けて暴力団の規定の趣旨に逸脱した指定がされないように配慮がされている上、直接には指定暴力団の構成員の具体的な暴力的要求行為が規制されることになっており」、「暴対法による規制の目的は、公共の福祉の観点からのものであり、一応の合理性がある制度ということができ」、憲法21条1項に違反しないとした[9]。
2012年(平成24年)12月27日に、福岡県公安委員会および山口県公安委員会が、工藤會を「特定危険指定暴力団」に指定したことから、工藤會は2013年(平成25年)1月18日に、指定処分の取り消しを求める訴えを、福岡地方裁判所および山口地方裁判所に提起した。代理人弁護士は「改正暴対法は工藤会の活動を著しく制限するもので、表現の自由や結社の自由を定めた日本国憲法にも違反している」としている[10]。2015年(平成27年)7月15日、福岡地方裁判所は「結社ではなく構成員による反社会的な行為に対する規制で、公共の福祉の観点から必要かつ合理的」などとして訴えを退けた。
暴力団対策法が規定する再発防止命令に絡む刑事裁判で日本国憲法第14条に規定する平等権に違反するという指定暴力団員の被告の主張については、2023年1月23日に最高裁は「規定による規制は市民生活の安全と平穏の確保を図る目的を達成するために必要かつ合理的。理由のない差別とは言えない」として合憲判決を出した[11]。
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