Loading AI tools
ウィキペディアから
消しゴム(けしゴム、英:eraser)とは、主に鉛筆などで書かれたものを消去するときに使う文房具。従来は天然ゴムが主成分だったためそう呼ばれる。現在はプラスチック製が主流のため字消し(じけし)とも呼ばれるが、慣用的に消しゴムと呼ばれている。英語ではrubber(ラバー、《米》eraser《イレイサー》)である。直方体のものが最も一般的であるが、ボールペンのような形のノック式の消しゴムなども販売されている。また、色調は一般に白色のものが多いが黒色など色付きのものもある。
かつてはパンが使われていたが1770年、イギリスのジョゼフ・プリーストリーが、ブラジル産のゴムに紙に書いた鉛筆の字を消し去る性質があることを発見したのが消しゴムの始まりである[1]。発見日とされる4月15日はRubber Eraser Dayとされている[2]。1772年頃にはロンドンで市販されており、「rub out(こするもの)」と呼ばれた。これが、今日ゴム一般を意味する英単語ラバー(rubber)の語源である[3]。なお、現在でもパンが消しゴムとして用いられることはある[4]。
日本では、明治初頭の1886年に東京の町工場で製造が始まった。そのころは消去性能がよいといえなかったが、その後改良が加えられ、1959年、日本のシードゴム工業(現在の株式会社シード)がより消去性に優れたプラスチック字消しを開発し、以後その性能から市場の主流となる。天然ゴムは後述の特殊用途の品を除き、原材料として現在はほとんど使用されていない[5]。
なお、消しゴムが存在する前の時代、パンを使っていた当時は字消しのパンを「消しパン」、そして食事のためのパンを「食パン」と呼んでおり、それが現在の「食パン」の語源となっているといわれているが、これは俗説である。消しゴムは1770年代にはすでに製品として存在していた。少なくとも日本に鉛筆という語ができた時代には、すでに消しゴムもあったのである。そして、パンを字消しとして使用した時代でも、わざわざ字消し専用にパンが製造されたわけではなく、製造後時間が経過して食味に劣ったパンを使用していた。現在でも、木炭デッサンにおいて消しゴムは紙を痛めるため、油分の少ないパンを用いて描線を消去することがある。
一般的には原材料のいかんにかかわらず「消しゴム」という名称が使用されるものの、消しゴムメーカーの業界団体である日本字消工業会をはじめ、メーカー側の表記としては「字消し」が用いられている。
これは日本産業規格(JIS)のプラスチック字消しの規格(JIS S 6050)に、名称として「プラスチック字消し」「Plastic eraser」「プラスチック」などと表示しなければならないとされているためである[6]。なお、天然ゴムを使用した消しゴムの規格であったJIS S 6004は1999年、廃止されている[7][8]。
鉛筆で書いた線が消える原理は単純なものである。まず、鉛筆で書いた部分には黒鉛(鉛筆の芯の成分)が付着する。消しゴムでこれをこすると、ゴムが紙に付着した黒鉛を剥がし取りながら、消しゴム本体より消しくずとして削れ落ちる。さらにその消しくずが紙から黒鉛を剥がし取りつつ、包み込んで取り除く。紙からは完全に黒鉛が除去されて消しくずに移行し、消しゴムには新しい表面が露出する。以上のサイクルで消しゴムが減り、消しくずが出て字が消える[9]。
通常、ボールペンなどのインクで書かれた線は、インクが紙に染み込むために通常の消しゴムで消すことはできないが、砂消しゴムは、ゴムに研磨砂を配合してあり、インクを紙ごと削ることによりこれを消すことを目的にした製品である。 消せるボールペンとして、書いてすぐには紙に染み込まない高粘度インクを利用した、筆記後短時間なら通常の消しゴムで消せる筆記用具も実用化されている。
プラスチック消しゴムは、ポリ塩化ビニルにフタル酸系可塑剤や炭酸カルシウム、安定剤を加えて軟質に固めたもので、消しくずがすみやかに出るため消字性能が高い[10]。プラスチック消しゴムやその消しくずを、CDケースなどのプラスチック製品と長期間接触させておくと、プラスチック消しゴムに大量に含まれている可塑剤が移行し、溶けて融合してしまうことがある。消しゴムを覆うスリーブ(紙ケース)は、消しゴムを長時間入れておくとプラスチック製筆箱などがこの作用で溶かされてしまうことを防ぐためのものでもある。またプラスチック消しゴムはポリ塩化ビニルを使用しているので、燃やすとダイオキシンが発生するなど環境負荷が大きい(これは学校などで焼却炉が使用された時代で問題とされたが[11]、現代日本の高度なごみ焼却では影響は少ないとされる[12][13])。
前述の欠点を克服し環境負荷を軽減する商品として、合成ゴム系などの非塩化ビニル(non PVC、PVCフリー)の消しゴムも多くのメーカーで製品化されており[14][15][16][17]、プラスチック消しゴムに近い消字率90%台も実現されている[18]。
三菱鉛筆、パイロット(上記でインデントされている企業)といったいくつかの用品メーカーは自社製造せずOEM供給を受けている。日本字消工業会の加盟メーカーの製造品であれば、パッケージ上のクリーンマーク番号で個別の製造元が確認できる[20]。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.