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生物学を研究する科学者 ウィキペディアから
生物学者(せいぶつがくしゃ、英: biologist)とは、生物学分野の科学者のことである[1][2]。生物学者は、個々の細胞から多細胞生物、さらに生物同士のコミュニティに至るまで、地球上の生命を研究の対象とする[1]。今日の生物学者はより細かい特定の分野(例えば分子生物学や動物学、進化生物学など)を専門とし[3]、さらに特定の研究対象(例えばマラリアやがんの研究など)を持っている[4]。
生物学者の中でも特に基礎研究に従事する学者は、自然界に関する人類の知識をより深めるために研究している[1]。彼らは、科学的方法と呼ばれる仮説を立証するための経験的手法を用いて研究を行っている[1][5]。彼らの挙げた成果は、人類にとってより有用な医薬品の開発などを目標とするバイオテクノロジーなどの目的などに応用される[1][6]。
現代において、生物学者は学士に加え、修士号や博士号などのさらに専門的な学位を取得している[3][7][8]。そして他の科学者と同様に、生物学者は学界や非営利団体、企業や政府機関など様々な経済分野で働いている[9]。
生物学の創始者であるフランチェスコ・レディは、歴史上もっとも偉大な生物学者の1人として知られている[10]。自然哲学者でもあったロバート・フックは、植物を拡大すると見られるハチの巣状の構造に対して「細胞」という用語を作りだした[11]。
チャールズ・ダーウィンとアルフレッド・ラッセル・ウォレスは独自に自然選択説による進化論を組み立て、1859年に出版されたダーウィンの著書「種の起源」で詳細に提唱された。この中でダーウィンは、人間を含む全ての生物の特徴は、長期にわたって多様性を蓄積してきた自然の過程によって形作られたとしている。現在の進化論は生物学の多くの分野に影響を及ぼしている[12]。またこれとは別に、1866年にはグレゴール・ヨハン・メンデルが遺伝の法則を発見し、これは現代の遺伝学の基礎となっている。1953年にはジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックが、全ての生物の形態や性質を決定する遺伝子を形成する核酸であるDNAの基本構造が二重らせん構造であることを、モーリス・ウィルキンスやロザリンド・フランクリンの研究結果をもとに決定し発表した[13]。
1996年にはイアン・ウィルムット率いる研究チームが、成体の体細胞から初めてクローンの哺乳類を生むことに成功し、この時生まれた羊はドリーと名付けられた[14][15][16][17]。
生物学の学士を取得するには、学部教育において分子生物学、細胞生物学、発生学、遺伝学、生態学、微生物学、解剖学、生理学、植物学、動物学などの中から大学が要求した単位を取得することを求められる[8][18]。大学の方針によっては、追加で物理学や、一般化学・有機化学・生化学などの化学、微積分や統計学などの要件を要することもある。
さらに研究志向の高い学生はその後修士号や博士号(Ph.D.など)といった大学院の学位を取得し、研究員などのポストで研究責任者の下でさらに訓練を受け業績を残していく[7]ことが、欧米で1800年代ころから生まれた見習いのシステムにより一般的になっている。この課程にある学生は、生物学の中のより下位の区分に絞った分野で専門的な教育を受ける[3]。
基礎研究にかかわる研究者は、仮説を立て実験で検証することで、進化や生化学、分子生物学、神経科学や細胞生物学などのトピックを含む、生命についての人類の知識を深める。
生物学者は微生物や植物、動物、生体物質などに関する実験を実験室内で行うが、実験に限らず自然観察を要する一部の分野・テーマでは実験室の外・野外での研究も行われる。こうしたテーマとして、たとえば植物学者による特定環境での植物種の調査や、生態学者による山火事後の森林回復の様子の記録などが挙げられる[19]。
応用研究の分野の生物学者は、基礎研究で生まれた知見を得てそれを特定の分野や応用に関する知識を深めるために使う。たとえば、医薬品や治療法の開発や、臨床検査の確立などに用いられる。民間企業で応用分野を研究する生物学の研究者は、自身の研究計画や成果について生物学者ではない人に説明することを要することがある。彼らは、自身の研究が会社のビジネスに影響を与えることを理解している。
遺伝学や有機分子に関する分野の飛躍的な進歩は、この分野のバイオテクノロジーを急成長させ、生物学者の活躍の場を大きく広げた。生物学者は現在動物や植物への遺伝子組み換えによって、より生産性の高く病気に強い種を作り出している。遺伝子組み換え技術についての基礎・応用研究の成果は新しい種の創造だけでなく、ヒトのインスリンや成長ホルモンなどの重要な物質の産生にも役立っている。こうした以前は大量に産生できなかった物質がバイオテクノロジーの研究成果によって生産可能となり、その中には疾患治療に役立つ物質もある[20]。
様々なゲノムや、関連遺伝子の染色体に関するプロジェクトに関わる生物学者は、特定の遺伝子を分離しその機能を決定する。この研究によって、鎌状赤血球症などの遺伝性の疾患や健康リスクに関与している遺伝子が特定される。バイオテクノロジーの進歩により、新たな研究機会が生物学のほとんど全ての分野に生まれており、医学・農学・環境修復の分野でも商業利用がなされている。
ほとんどの生物学者は、決まった1つの生物や活動についての分野に特化して研究を行うが、近年の研究の進歩により分野境界が曖昧となっている部分もある。
生物学者はほかの職種と同じような通常の勤務時間で働くことが多いが、イレギュラーな場合それより長時間の労働時間になることも珍しくない。研究の分野にもよって、実験室やその他の場所(特にフィールドワークにおける野外)で時間外の労働を要することがある。
多くの生物学者は自身の研究の資金を助成金に頼っている。新規もしくは延長の予算を得るためのプロポーザルを準備する間、締め切りに合わせ厳格な様式の助成金申請書類を準備する負担が大きくなっている[35]。
フィールドに出ることの多い分野、例えば海洋生物学者は様々な労働環境に遭遇する。研究室での労働もあれば、調査船上での労働のほか、水中で鋭いサンゴ礁や危険な海洋生物に囲まれながら安全なダイビングを習得して活動することを要する時もある。それでも海から直接標本を入手する海洋生物学者は一部で、多くは研究室のオフィスで実験を行い、結果を記録しデータを解析している[36]。ほかにも植物学者、生態学者、動物学者の一部は激しい身体活動や原始的な生活を伴うフィールドワークを行うことがある。こうした研究は寒暖の気候や天候を問わずあらゆる環境下で行われている。
生物学者は常に安全でなく健康を害す可能性のある状況に晒されるわけではない。それでも、危険な生物や毒性のある物質を扱う研究者は、コンタミネーションを起こさないための安全基準を遵守する必要がある。
生物学者にとっての最高の栄誉は1901年から続き、現在カロリンスカ研究所が選考しているノーベル生理学・医学賞がある。もう1つの重要な賞は、1980年から続くクラフォード賞の生物分野で[37]、他にも医学などより細かい関連分野ごとに最高栄誉とされる賞が存在する。
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