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大友克洋作の漫画。「アクションデラックス」(双葉社)などに1980年から1981年にかけて4回に分けて発表された ウィキペディアから
『童夢』(どうむ)は、大友克洋による日本の漫画作品。1980年から1981年にかけて4回に分けて雑誌連載された後、1983年に単行本として発行された。
初出は漫画雑誌「アクションデラックス特別増刊」第3号(双葉社)。第5号まで3回連続して掲載された後(1980年〜1981年)、間を置いて最終話が『漫画アクション増刊スーパーフィクション』第7号(1981年)に掲載された[1][2]。その後、加筆修正と描き下ろしページを加えてアクションコミックス(双葉社)より単行本化された。
また、原稿の原寸のままのB4判函入、定価5000円、限定5000部の『童夢 豪華版』も1984年に刊行された。2022年には大友克洋全集の第1期・第1回配本のうちの1冊として刊行された。
1983年、第4回日本SF大賞受賞[1][注 1]。1984年、第15回星雲賞コミック部門受賞[3]。
大友の代表作の一つで、郊外のマンモス団地で起こる連続不審死事件を巡るモダンホラー[1][2]。
超能力の表現や建物の破壊描写等において、『Fire-ball』と共に代表作『AKIRA』の原型とも言える作品[4][5]。
この作品や『AKIRA』以降、見開きを背景にして人物は小さく描くなど、背景を主役にした作品が増えた[6]。
背景の作画はアシスタントの高寺彰彦や末武康光らが担当した[7][8]。
作中に登場する団地は埼玉県川口市の芝園団地[9]、警察署は旧川口警察署の庁舎[要出典]を参考に描かれた。
1990年代、デヴィッド・リンチ監督で映画化される構想があったという。大友は脚本に満足を示し、リンチも企画に前向きだったが、企画が持ち込まれた米プロパガンダ・フィルムズとリンチの関係が悪化していた時期だったため、制作には至らなかったとのこと[3]。
大友は短編漫画『Fire-ball』制作中にスタッフたちと映画『エクソシスト』の話題で盛り上がり、SFにホラーの要素を加えた漫画を描くことを決めた[4][10]。大林宣彦のホラー映画『HOUSE』が日本人に馴染みのない西洋館を舞台にしていたことに違和感を覚えた大友は、また当時、東京の高島平団地で飛び降り自殺が相次いでいたことに着想を得て、舞台を日本の団地にした[4]。
単行本1冊を1本の映画のように描こうと思った大友は、最初からきっちり構成を決めて本作を描いた[10]。その構成を守るためにかなり苦労したと言う大友は、単行本化にあたっては加筆修正を加えるなどかなり手を入れている[1][10]。特に最終回は全面改稿に近い形で、最終的には百ページ近い増ページになった[1]。
「堤団地」というマンモス団地では不審な死亡事件が連続していた。警察の捜査は山川部長が指揮していたが、なかなか進展しない。ある夜、団地を巡回していた巡査2名のうち1名が屋上から転落死し、拳銃が紛失。常識では説明できない短い時間の出来事であった。
別の夜、山川はひとり団地にいて、自分を嘲笑する誰かの声を聞く。声を追って団地の屋上に至ると、団地に住む老人「チョウさん」が空中に浮遊した状態で現れる。直後、山川もまた犠牲者となって発見される。
小学生の悦子の一家が団地に引っ越してきたその日、チョウさんは幼児をベランダから転落させるが、悦子はそれにいち早く気づき、新たな犠牲を阻止する。悦子もまた能力を持ち、その力を見せつけてチョウさんの「イタズラ」を牽制する。
悦子はアル中の父親を持つ吉川ひろし、「ヨッちゃん」と呼ばれる藤山良夫などと親しくなる。
警察では山川の後任として岡村部長が着任するが、あいかわらず捜査は進展しない。そんな中、団地の住人である浪人生・佐々木勉がチョウさんに操られカッターナイフで悦子に襲いかかる。悦子は佐々木を能力で止めるが、ショックを受け団地の診療所に収容される。
捜査員である高山刑事は参考意見を求めにシャーマンの野々村を訪ね、二人は団地へ向かうが、団地の入口で野々村は震え出し、高山に「子供に気をつけなさい」と告げて逃げ帰ってしまう。
チョウさんは転落死した巡査から奪った拳銃を吉川ひろしの父に与える。夜、チョウさんに操られたひろしの父が拳銃を手に、悦子のいる診療所に侵入する。悦子はひろしの父を倒し、彼を操るチョウさんと対決する。
チョウさんと悦子は宙に浮き、空を飛び、コンクリート片等を念動させて相手にぶつけ、団地の上空で戦い続ける。チョウさんをしかりつける悦子に、チョウさんは「今迄僕一人で遊んでたのに」と言う。
チョウさんが起こした団地のガス爆発を阻止しきれず、激情に我を忘れた悦子は、あらゆるものを破壊しながらチョウさんを追う。
悦子から逃げるばかりとなったチョウさんがほうほうの体で建物の外に這い出し、悦子が泣きながら追い詰めるが、悦子の母が悦子を見つけ、ふたりは抱き合う。悦子が我を取り戻し、事態は収束する。
二週間後の警察の記者会見の日、ケガから復帰した高山刑事はチョウさんに面会し、以前にシャーマンの野々村が言った「子供」とは、実はチョウさんのことであったと気づき愕然とする。
チョウさんは行き先の養老院が決まるまで、いったん団地に戻る。平穏な春の日の団地に、京都の母親の実家にいるはずの悦子が再び現れる。高山刑事はチョウさんが座るベンチの近くにいて、チョウさんの杖が破裂するのを見たが、何が起きているのかは理解できない。悦子は、チョウさん達がいるのとは別の場所にいて、ただブランコをこいでいる。団地の子どもたちだけがそこで起きているなにかを感じ取り、見つめている。すべてが終わり、子どもたちは遊びの輪に戻っていく。
1984年に、作中の各シーンをイメージした楽曲を収録したアルバムが、LP盤としてキングレコードよりリリースされた。
作曲の中心になったのは音楽プロデューサーの伊豆一彦。本作の大ファンであった伊豆からの熱烈なオファーを受け、レコードとして発売されるに至った。レコーディングには和泉宏隆や濱瀬元彦、岡本敦郎、中西俊博などが参加している。アルバムのジャケットは大友の描き下ろしイラスト。
発売以降しばらくして絶版となっていたが、2019年に復刻版としてリマスターをした音源がCDとしてリリースされた[12]。
『童夢』の実写映画化は、極秘に長編映画のプロジェクトが進められていたが実現せず、大友克洋自身が監督を務めた7分間のパイロット版のみが制作された[2]。しかし、タイトルや内容や出演者などを一切知らせずに行うスニークプレビュー(試写会)でしか上映されなかった[2]。
2023年3月、「第1回新潟国際アニメーション映画祭」の目玉企画のひとつ、大友克洋作品を一挙上映するレトロスペクティブ部門で、初めてパイロットフィルムが上映される[13]。
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