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アルプス山脈周辺の先史時代の杭上住居群

スイス、イタリア、ドイツ、フランス、オーストリア、スロベニアの6か国に跨る世界文化遺産 ウィキペディアから

アルプス山脈周辺の先史時代の杭上住居群
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アルプス山脈周辺の先史時代の杭上住居群(アルプスさんみゃくしゅうへんのせんしじだいのこうじょうじゅうきょぐん)は、紀元前5000年頃から前500年頃までにアルプス山脈周辺で建設された杭上住居 (pile dwelling / stilt house) の遺跡群を対象とするUNESCO世界遺産リスト登録物件(ID1363)で、スイス(56件)、イタリア(19件)、ドイツ(18件)、フランス(11件)、オーストリア(5件)、スロベニア(2件)の6か国111件の資産によって構成されている[3]。2011年の第35回世界遺産委員会で登録された時点では、シュトルーヴェの測地弧(10か国)に次いで多くの国にまたがる世界遺産であった。また、この世界遺産は、スロベニアの世界遺産としては初の文化遺産登録となった[4]

概要 英名, 仏名 ...
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概要

杭上住居は高床建物の一種で、アルプス山脈周辺ではボーデン湖ツーク湖ガルダ湖などのやリュブリャナ湿原などの湿地に杭を立て、その上に住居が築かれた(杭上住居のうち、湖に建てられたものは「湖上住居」ともいう)。それらは氾濫などを避ける工夫ではあったのだが、長い間水没したまま忘れ去られていた。その存在が再び知られるようになったのは1853年から1854年にかけての冬季大旱魃がきっかけで[5]、長い間水没していたことが、さまざまな遺構や遺物を良好な状況で保存しておくことにつながった[6][7]。以下に見る構成資産のうち37%はいまなお完全に水没しており、30%は部分的に水没している[6]

後期には漁撈も行なったが、むしろ湖上に立てた当初の理由は、外敵に対する警戒や、農業に適した土地を住宅地に割かなくてすむようにするなどの理由であったと考えられている[8]。杭上住居は湖などに立てた何本もの丸太の上に横木を渡し、その上に板などを敷き、さらにその上を土などで固めた上で住居を建てた[8]。屋内は寝室と居間を兼ねた部屋と台所に分かれ、それぞれ炉や暖炉を備えていた[8]

出土した有機物から、彼らが小麦や大麦の栽培や、牛や豚の牧畜を行なっていたこともわかっているが、それらの技術や土器の特色は、ドナウ文化との類似性が指摘されており、頭蓋に穿孔して護符とするような一部の文化には南フランスの先史時代の文化の影響があるという[9]

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登録

要約
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経緯

2004年12月28日にスイスの構成資産がまず暫定リストに登録された。2009年にはオーストリア・イタリア(ともに1月28日)、ドイツ(10月6日)、フランス(11月5日)の構成資産が加わり、2010年1月12日にスロベニアの構成資産も加わった。そして、その年の1月26日に世界遺産センターへの推薦が行われた[10]

2010年9月28日から10月4日および10月12日から18日に、文化遺産の諮問機関であるICOMOSが調査を行った[10]。その結果、推薦時点で156件あった構成資産が2011年2月には111件に絞られた[11]。ICOMOSはこの調整も考慮に入れて同年3月に勧告書を作成し、世界遺産委員会に「登録」を勧告した[12]

2011年6月にパリで開催された第35回世界遺産委員会では、ICOMOSの勧告通り、正式に登録された。

登録基準

この世界遺産は世界遺産登録基準のうち、以下の条件を満たし、登録された(以下の基準は世界遺産センター公表の登録基準からの翻訳、引用である)。

  • (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
  • (5) ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。

具体的には、基準 (4) については、その保存状態の良い遺跡群が、アルプス周辺地域における新石器時代青銅器時代、初期鉄器時代における農耕生活の様子を理解するうえで非常に重要な貢献をしたことなどについて適用された[13]。また、基準 (5) については、紀元前5000年から前500年までという非常に長期間にわたる生活の様子や環境変化への対応をうかがい知る上で傑出した例証であることなどに適用された[13]

推薦国は当初、基準 (3) と (5) の適用を求めていた。

  • (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。

推薦国は、その遺跡群の保存状態の良さがヨーロッパ初期の農耕生活の様子を復元する上で重要なものであり、存在が知られるようになってから150年ほど続けられてきた研究の成果が与えた影響の大きさという点などに基準 (3) を適用できると主張していたが、ICOMOSはそれは基準 (4) の方が適切という理由で否定した[13]。推薦国は当初、基準 (4) では推薦していなかったが、ICOMOSの勧告どおり、実際の登録でも基準 (4) と (5) での登録となった。

登録名

世界遺産としての正式名はPrehistoric pile dwellings around the Alps(英語)、Sites palafittiques préhistoriques autour des Alpes(フランス語)である。その日本語訳は、文献によって揺れがある。

  • アルプス山系の先史時代杭上住居跡群(日本ユネスコ協会連盟[14]
  • アルプス山脈周辺の先史時代の掘立柱住居群(世界遺産アカデミー[7]
  • アルプス山脈周辺の先史時代の杭上住居群(古田陽久[15]
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構成資産一覧

要約
視点

アルプス周辺の杭上住居の遺跡は937か所が確認されているが[6]、世界遺産の構成資産は以下の6か国111件である[16][17]

さらに見る 国名, 世界遺産ID ...
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脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

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