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アンドリューサルクス
かつて始新世に存在したセタンコドンタモルファ科の種のひとつ ウィキペディアから
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アンドリューサルクス(学名:Andrewsarchus)は、約4,500万- 約3,600万年前(新生代古第三紀始新世中期- 後期半ば)のユーラシア大陸東部地域(現在の内モンゴル自治区)に生息していた、原始的な大型肉食性哺乳類の一属。下位分類は現在、頭蓋骨から知られるA. mongoliensis (A・モンゴリエンシス)の1種の他、顎の一部からのみ知られるA. crassumが記載されている[1]。
蹄(ひづめ)を持つ有蹄動物であり、80cmを超える頭蓋骨を有すため、ときに「史上最大の陸生肉食獣」と称される。実際、肉食性の偶蹄類で最大、史上でも最大級の陸生肉食哺乳類であると言える[2][3]。
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呼称
属名Andrewsarchus は、統治者(archos ruler、master)を意味するギリシア語: άρχός- archus(ラテン語形)に、英語姓 英語: Andrews を冠して造られた名称。その意味合いは「アンドリュース(にゆかり)の統治者」である。Andrews は本属の化石を発見した調査隊を率いていたアメリカ自然史博物館研究員ロイ・チャップマン・アンドリュース[4]のことであり、すなわち、献名である。学名であるラテン語音は「アンドレウサルクス」。 種小名mongoliensis (モンゴリエンシス)は「モンゴル産」「モンゴル由来のもの」との意。
発見と分類
化石は1923年6月、中国・ゴビ砂漠・内モンゴルのイルディン・マンハ(Irdin Mahna)にて、前述の調査隊の一員であったカン・チュウエン・パオ(Kan Chuen Pao)によって発見された[5]。そこで見出されたのは下顎(したあご)の無い頭蓋骨(とうがいこつ)と、わずかに2、3個の骨片のみで、これに続く発見例はわずかである。しかし、歯と頭蓋骨の形態学的分析により、メソニクス類との類縁性が指摘され、当時はその下位分類に書き加えられることとなった[6]。
本種は翌1924年、古生物学者ヘンリー・フェアフィールド・オズボーンによって記載(学術上の正式命名)された。メソニクス類は、かつては歯の類似などからクジラ目(鯨目)の祖先系統と考えるのが主流であった。しかし、分子系統学による知見、および、他の化石の発見などに基づく形態学的知見によって、(比較的近いとは言えるものの)直接的な祖先系統や最も近縁と言えるような系統ではなかったことが判明した [7]。
しかし、1966年の時点で、頭蓋骨の形態や歯のエンテロドン類との類似性から、メソニクス類を元に復元したオズボーンによる復元像は間違っているという指摘があった[8]。
この指摘を裏付けるように、2009年の系統分析では、この属はメソニクス類とは遠縁で、むしろエンテロドン科や鯨河馬形類に近縁であるという結果が出された。 以下は2009年の研究におけるクラドグラムである[9]。
有蹄類 |
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2023年のエンテロドン類に関する研究でもアンドリューサルクスをエンテロドン類の近縁として位置付けてている[10]。2022年の見解でもアンドリューサルクスがエンテロドン類とメソニクス目のどちらに属するのかは意見が分かれており、分類の混乱はしばらく続く可能性がある[5]。
なお2011年にトリイソドン科(triisodontids)とメソニクス科を対象に行われた研究では、アンドリューサルクスが比較材料の1つとして挙げられている[11]。
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古生物学
形態

アンドリューサルクスは、現在知られている限りの全ての陸生肉食哺乳類のなかで最大級の顎の持ち主である。長い吻部によく発達した顎を持ち、そこに生える歯はどれも大きかった。切歯、湾曲した鋭い犬歯、そして、頑丈な臼歯を具えている。
サイズ
頭蓋骨は長さ83.4cm[12]、最大幅56cmと巨大。頭蓋骨の形態が似ている前述のメソニクス・オブトゥシデンスを参考に頭骨長から単純計算されたアンドリューサルクスの大きさは、体長約382cm、肩高約189cmほどとされた。ただし、胴体の化石は未発見であるうえ、実際にはメソニクスとの類縁性は支持されなくなったため、実際の全長は未だ不明である。体形の比率はエンテロドン類に近いのではないかという推測は1966年に行われているものの、具体的な値は示されていない[8]。
古典的解釈

「発見と分類」の通り、アンドリューサルクスはかつてメソニクス目と分類されており、その外見も漠然とイヌやオオカミに似たものと推測されていた[13]。BBC制作のドキュメンタリー「ウォーキングwithビースト」でもこの推論を元に、蹄を持つ巨大なハイエナのような風貌へと復元された。同作ではパケット模型とCGを用いつつ、アンドリューサルクスが砂浜でウミガメを襲ったり、大型獣の死骸を巡って争ったりする姿が映像化された[14]。これは本種が巨体のためにあまり敏捷ではないため、動きの鈍い獲物や死骸を主食にしていたとの推測に基づいている[13]。
脚注
関連項目
外部リンク
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