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イギリスの人口統計
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イギリスの人口統計(イギリスのじんこうとうけい、英語:Demographics of the United Kingdom)では、イギリスの人口について記述する。イギリスの総人口は、2020年6月30日の時点で67,081,234人であった。これは世界21位にあたる。イギリスの人口は典型的な先進国にみられる少産少死の状態であり、平均寿命の延伸と少子高齢化が進行している。ただし20世紀末期以降は、世界でも有数の移民流入の多さによって進行は緩和されており、人口は増加を続けている。
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概要
イギリスはイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの構成国(カントリー)からなる連合王国である。人口の大部分はイングランドに住んでおり、全体の84%以上を占める。イギリスの人口は増加を続けているが、これは出生数が死亡数を上回る自然増に加え、2000年代以降特に増加している移民流入が影響している。民族としては白人イギリス人が大部分を占めるが割合は年々減少しており、代わって旧植民地であるインドやパキスタンにルーツを持つアジア系イギリス人[注釈 1]や、アフリカ系イギリス人が増加している。
国内には多数の大都市を有する。都市圏人口が50万人を超えるのは、ロンドン、バーミンガム、グラスゴー、ウェストヨークシャー、ハンプシャー、シェフィールド、リヴァプール、レスター、マンチェスター、ベルファスト、ブリストル、ニューカッスル・アポン・タイン、ノッティンガムの13都市である[2]。


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歴史
要約
視点
国勢調査以前
ローマ時代のグレートブリテン島は、2世紀末に280万人から300万人の推定人口を抱え、4世紀の終わりには360万人に増加した。首都ロンディニウム(現在のロンドン)の人口は約6万人であったと推定される[3]。
ローマ人がブリテン島から撤退した後、アングル人、サクソン人、ジュート人などのヨーロッパ大陸からのゲルマン民族は、ブリテン島南東部への移住を始めた。それにも関わらず、全体の人口は政治的混乱と疫病のために急激に減少したと考えられている。11世紀にドゥームズデイ・ブックが編纂された頃には、イングランドには125万人〜200万人が住んでいた可能性がある[4][5][6]。
1086年から1750年の間、イングランドの人口は内戦、飢饉、疫病によって大きく変動した[7]。13世紀の終わりまでに400万人〜600万人に達したのち、1315年から1322年の農業危機と1348年から1350年の黒死病によって総人口の3分の1を失った。
薔薇戦争に代表される15世紀の戦乱の時代は、非常に緩やかな人口増加であったとされる。その後人口増加は加速し、イングランドの人口は1750年に574万人に達した。スコットランドでは、17世紀後半から18世紀初頭にかけてイングランドよりも乳幼児の死亡率が高かったため、人口増加は加速せず、1691年の推計人口123万人からしばらくの間ほぼ横ばいであった。一方、19世紀以前のアイルランドは一貫して急速な人口増加を示している。これはイングランドよりも出生率が高く、結婚が早かったためである。
1800年、国勢調査法が可決され、イギリス史上初の近代国勢調査の実施が認められた。
国勢調査の開始
1801年の最初の国勢調査によると、イギリスの人口は1050万人であった。このうちイングランドの人口は830万人、ウェールズの人口は60万人、スコットランドの人口は160万人であった。アイルランド島は、450万人〜550万人で安定していたとされる。1801年以降は10年ごとに国勢調査が行われており、アイルランドでは1821年に初めて国勢調査が行われた。

19世紀になると、産業革命がもたらした工業化によって死亡率が大幅に低下し、人口増加が加速した。1841年の国勢調査では、イングランドとウェールズの人口は1590万人、アイルランドでは820万人、スコットランドでは260万人と40年間で倍増した。イングランドの人口は1851年の1680万人から1901年には3050万人に急速に増加し続けた。ウェールズでは、人口は1801年の60万人から1901年には200万人に増加し、スコットランドでは1901年に160万人から450万人に増加した。一方、アイルランドでは1840年代に始まったジャガイモ飢饉のために100万人が死亡し、さらに100万人をはるかに超える移住を引き起こした。結果、アイルランドの人口は1841年の820万人から1901年には320万人へと急速に減少した。しかし、北アイルランドの人口は20世紀初頭までに飢饉以前の人口に回復した。アイルランドの歴史におけるこの長期にわたる移民と純人口減少は、20世紀半ばにようやく逆転した[8][9]。
第二次世界大戦ののち、1960年代にはベビーブームが起こり、出生数は10年以上にわたって90万人を超えた。その後、出生率は急速に低下し、出生数が死亡数をやや上回るのに対して社会増減は若干の流出超過トレンドとなり、イギリスの人口は90年代初頭まで5,600万人前後でほぼ横ばいの状態が続いた。
21世紀
2001年の国勢調査では、イギリスの人口は59,113,000人であった。イングランドは49,497,000人、スコットランドは5,064,200人、ウェールズは2,910,200人、北アイルランドは1,689,300人だった[10]。
20世紀末には移民流入が増加したことで、総人口の増加と民族多様性をもたらした。2001年、イギリス系白人の人口は総人口の88.52%と登録されていたが、2011年までに人口のこの割合は81.88%に減少し、他の民族グループは大幅に増加した。2011年の国勢調査での人口は約6300万人で、過去最多を更新した。
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現在の人口
要約
視点
地域ごとの分布


人口密度の全体的な傾向としては南高北低であり、総人口の3分の1が首都であり最大都市のロンドンとその周辺地域に住んでいる。スコットランド北部(ハイランド)は西ヨーロッパでも有数の人口希薄地帯である。
人口動態統計
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人口密度
イギリスの人口密度は、2020年の時点で274人/km2である。これは人口100万人以上のヨーロッパ諸国の中ではオランダ、ベルギーに次いで高い。
イギリスでは21世紀以降、人口過密が社会問題化しており、特にイングランドの人口密度は434人/km2と高い。中でも首都ロンドンを中心とする南東部は、水供給能力において世界180地域中161位とされた。また人口増加に伴い、年間20万〜30万の新築が必要とされているが不足がちであり、イギリスのホームレス人口は数十万人に達する。人口増加の原因が自然増ではなく移民流入によるものであるため、国内で移民への反発が強まっている原因のひとつともなっている。
人口過密は環境にも影響を及ぼしている。イギリスは国土に占める森林割合が1割強と世界各国の中でも低位であり、元々生態系に乏しいが、近年の人口増加が相まって「世界で最も自然が枯渇した国」のひとつに数えられた[16][17]。
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出生数と死亡数
合計特殊出生率
イギリスの合計特殊出生率は、1970年代以降一貫して人口置換水準(理論上、人口を横ばいで維持できる水準。イギリスのように、新生児の男女比が極端に偏っておらず乳幼児死亡率も低い国の場合は、おおよそ2.06~2.10)を下回っているものの、1.5を割った年は過去一度もなく、先進国としては比較的高出生率である。
出生数は1960年代のベビーブーム以降、年間65万人~80万人程度で安定している。しかし、新生児に占める非移民系の白人イギリス人の割合は年々低下しており、出生数の維持に貢献しているのは移民の子である。2020年、イングランドとウェールズ全体で613,905人の出生があったが、そのうち29.3%にあたる179,881人は英国外にルーツを持つ移民系の母親の子であり、2007年の23%と比較して大きく上昇している。さらに両親のどちらかが移民系である子の割合は34.8%に達する[18]。また合計特殊出生率も、イングランドとウェールズ全体の1.58に対し、非移民系が1.50、移民系が1.98と大きな開きがあり、21世紀以降の移民流入数の増加によってこの傾向は年々顕著になっている。
英国出身以外の母親の出身国の上位は、パキスタン、ルーマニア、ポーランド、インド、バングラデシュの順となっている。#移民・人種の欄も参照。
死亡数
死亡数は20世紀以降、55万人〜70万人程度で安定している。前年比1割以上の死亡数増加を記録したのは、第一次世界大戦(1918年)、世界恐慌(1929年)、第二次世界大戦(1940年)、新型コロナウイルス感染症の世界的流行(2020年)である。
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移民・人種
要約
視点
イギリスは1950年代まで国民の99%以上を白人イギリス人が占めており、民族的に非常に均質な社会だった。しかし20世紀後半以降、人種的マイノリティの人口が急速に増えている。特に1997年、労働党政権によって移民制限が解除されたことで、この傾向はより顕著になっている。
人種別の人口割合の推移
出身国別の外国生まれの人口
将来予測
オックスフォード大学の人口学者デイビッド・コールマンは、既に白人イギリス人の割合が5割未満となっているロンドンに続いて、バーミンガムが2020年代には同様の人口構成になると予測した。また2056年から2066年頃には、白人イギリス人の割合が国民の半数を下回ると予測した[20]。
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健康
平均寿命

イギリスは先進国としては平均寿命が短い。2020年の統計では、アメリカ合衆国、スロベニアに次いで下から3番目であった。
さらに2010年代以降、イギリスの平均寿命予測は下方修正が繰り返されている。2020年には新型コロナウイルス感染症の世界的流行も相まって、男女共に8年前の予測よりも約2歳低い水準まで下落した[21]。これは世界各国の中でも大きな下落幅である。これに加え、出生率も従来より低下していることを受け、ONS(国家統計局)は将来の総人口予測を大きく下方修正した[22]。
地域格差

地域によって、健康の度合いには格差がある。平均寿命は大別すると南高北低の傾向があり、ロンドンやイングランド南東部などの平均寿命が長い一方、スコットランドやイングランド北部は比較的短い[23]。これは一人当たりの豊かさと密接に関係している。特にグラスゴーは西欧でもワーストクラスに短命な都市であり、「グラスゴー効果」として知られているほどである。
肥満
イギリスは肥満率が高い。2020年11月の調査によると、イングランドの成人の62.8%がBMI25以上の「太り気味」であった[24]。また、子どもの肥満が近年深刻化しており、2016年のWHOの調査によると、イギリスの5歳〜19歳の肥満率は31%に達しており、日本の14%などと比較して非常に高かった。低所得家庭の子どもたちは、脂肪や糖分、添加物が多く、高カロリー低栄養の安価なジャンクフードに頼らざるを得ないことが肥満増加の大きな原因となっている[25]。
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脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
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