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インド占星術
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インド占星術(インドせんせいじゅつ、梵: Jyotiṣa)は、インドに伝わる占星術のこと。インド本国の他、ネパールやチベットなど周辺の地域でも行われている。 もともと、白道上の月の位置に着目したナクシャトラ(中国系暦法・占星術では二十七宿という)を用いた占星術だったが、ヘレニズム時代にギリシアから太陽と月、5惑星とラーフ、ケートゥといった九曜、十二宮と十二室に基づくホロスコープ方式の占星術を取り入れて、現在のナクシャトラ(白道二十七宿)と黄道十二宮を併用した形になったと言われているが、古い時代のことなのではっきりしたことはわかっていない。 また仏教に取り入れられたものは、簡略化(月の厳密な度数で決めず、1日に1つというように割り当てる)・仏教化し 『宿曜経』 にまとめられ、密教の一部として中国に伝えられた。さらに、平安時代には日本にも伝えられて宿曜道となった。
歴史
インド土着の占星術
月の白道上の位置を基にしたナクシャトラという概念があり土着のものと推測されるが、記録に残る伝承が神話体のものしか存在しないため、はっきりとしたことはわかっていない。
中国発祥の二十七宿、二十八宿と似ているが、それぞれ発祥を異にするとされる。ただし、後の時代に相互に関連していくようになる。
ギリシア由来の占星術
紀元後2世紀までにギリシアの占星術技法がインドに伝えられ、西暦150年にはインドのサンスクリット語に散文体にまとめられた。西暦269年にはそれが韻文化され、『ヤヴァナジャータカ』(yavanajaataka 『ギリシャ式出生占術』)という文献にまとめられた[1]。
以後独自の発展を遂げて、現在の形のインド占星術となる。
特徴
要約
視点
基本的には西洋占星術に似てはいるが、インド占星術独自の技法を用いる。
まず最初に、宮についてはインド占星術はある天体座標を基準点に固定しそこから30度ずつ12分割するが、西洋占星術は春分点を基準に12分割しているため地球の歳差運動により黄道を移動するので、その結果惑星の在住する星座(サイン)が異なることが多い。そのずれの度数をアヤナムシャと呼ぶ。
基本的に室(ハウス)の意味が宮(サイン)より重視されている。西洋占星術の春分点は74年に1度、春分点が西に移動するのに伴って移動するので、西洋占星術とインド占星術では惑星が在住する宮が違うことがある。また大部分のインド占星術がハウス(室)システムにイコールハウス(室は30度固定、アセンダントがある星座を1室とし、第一室の宮の境を第一室の境とみなして扱うこと)を使う。惑星はその在住する室とその惑星が支配する室、アスペクトを形成する惑星の影響を強く受ける。たとえば支配宮の象意を在住室の象意の表す事象にもたらす、というように解釈される。 その惑星が在住する室や宮によって、影響力の強弱が変化することもある。ただし強弱と吉凶は必ずしも同じでない。
「ナバムーシャ」(9分割図)に代表される分割図は、インド占星術において多用され独自のものである。
ラグナ(アセンダント在住宮)と呼ばれる第一室の分析も重視される。第一室に在住する惑星やアスペクトする惑星、第一宮の支配惑星の在住する室やその度数とそれにアスペクトする惑星等により、健康運の良し悪しや外見や精神的特徴等を占う。また他の室の支配星とのコンジェクト、アスペクト、惑星交換等で財産運(ダーナヨガ)、成功運(ラージャヨガ)等を占う。
月の分析も重視される。ナクシャトラ(二十七宿)により大体の性格や行動をみたり、満月に向かう月(吉星と解釈)なのか新月に向かう月(凶星と解釈)なのか、高揚または減衰しているかということで、占星術的な意味をもたせている。生時がわからないときは、仮に月の在住する宮を第一室(アセンダント)として占うこともある。インド占星術では太陽よりも月をどちらかというと重視する。
アスペクトは独自のものである。室単位で扱い、第1・7室(0・180度)が各惑星共通アスペクトで、火星は第4・第8室、木星は第5・第9室、土星は第3・第10室にもアスペクトを形成する。
ヨーガという、ある特定の惑星と室、宮の配置に占星術的な意味を結びつけた概念もある。
ダシャーという、それぞれの惑星がいつ強い影響力を発揮するのかを示す技法がある。惑星・星座・両方を使うものなど多種類のダシャーがあるが、惑星を使う120年周期のヴィムショッタリ・ダシャーが最もよく使われる。
アシュタカヴァルガという宮ごとに数値で吉凶を表す手法(惑星ごとや全体に点数を算出する)も、インド占星術独自である。
ダーシャ、ゴチャラ(トランジット)、アシュタカヴァルガなどを組み合わせて、バースチャート上に表された人生の出来事がいつ起こるのかを読み取る。
インド占星術には大きく2つの流派あり、現在では『ブリハット・パラーシャラ・ホーラー・シャーストラ』という古典を基にしたパラーシャラ方式が主流だが、以前はもう一派のジャイミニ方式が広く使われていた。現在は占いたいテーマにより使い分けられている。精神的・霊的な内容を占う時はジャイミニ[2]を使う傾向がある。
インド占星術にとどまらず、相談者の情報を知らずに占う場合、ホロスコープだけでは熟達しないと正確な判断は難しい。それゆえ、インド占星術家は曜日占い、顔・手相、指紋の相など他の要素も併用して占断することもある。
以下、西洋占星術との相違点を中心に、インド占星術の特徴をいくつか例示する。専門用語などに関しては西洋占星術の項目も参照されたい。
ニル・アヤナ(サイデリアル式ハウスシステム)
最も重要な西洋占星術との相違点として、インド占星術では、十二宮などの占星座標は、天球上の恒星に対して固定されたいわゆるサイデリアル方式に基づくのが主流である。 このような方式をインドではニル・アヤナ (nirayana 『固定式惑星路』)という。インド政府公認の座標(ラヒリ アヤナムシャ)があり、国内外の占術家の多くはそれに従っている。
ちなみに西洋占星術では春分点を白羊宮0度とするトロピカル方式を用いる占術家が圧倒的に多数派である。インドではこの方式をサ・アヤナ (saayana 『移動式惑星路』)と言う。 ヒッパルコスによって発見された地球の歳差運動により、春分点は72年に1度程度移動する。 当然この方式では距星となる星座と占星座標とは歳差運動により年々ずれていく。 ニル・アヤナとサ・アヤナは、インドに西洋占星術がもたらされた紀元後300年ごろは一致していたがその後差が拡大していき、21世紀初頭現在ではニル・アヤナのほうがサ・アヤナより24度ほど東にずれている。
パンチャーンガ
インド占星術で特に重視されている要素としてパンチャーンガ (pancaaGga)がある。 これは五つ(パンチャ)の要素(アンガ)と言う意味。
- ナクシャトラ (nakSatra 『二十七宿』)
- ティティ (tithi 『朔望日』)
- ヴァーラ (vaara 『曜日』)
- ヨーガ (yoga 『和』 月と太陽の黄経を足した数値を13度1/3で割ったもの)
- カラナ (karaNa ティティを前半と後半に二等分した時間単位)
インドでは具注暦には必ずこの五要素が記されており、これの事もパンチャーンガと呼ぶ。 このうち、個人の運命を見るときに主に使われるのはナクシャトラである。詳しくはそれぞれのリンクを参照されたい。
使用する占星惑星
インド占星術では、古典西洋占星術と同じく実在惑星として7惑星(太陽、月、水星、金星、火星、木星、土星(漢訳七曜))をさらに月の軌道要素から導きだされる点を架空天体としてラーフ、ケートゥも用いる。これらの9つの占星惑星をナヴァ・グラハ(nava graha、漢訳(九執、九曜))と総称する。
木星、金星、月、水星が生来的に吉星とし、ラーフ、ケートゥ、土星、火星、太陽が生来的に凶星とされる。水星は中立に扱う場合もある。
また機能的に吉星や凶星をわける評価法もあって、支配する室や在住する室等の惑星の状態、他の惑星のアスペクトの影響などにより、機能的に吉星になったり凶星になったりする。
ラーフは月の交点(黄道と白道の交わる点)のうち昇交点であり、降交点はケートゥである。日食と月食の食と関係が深い為重視された。後に西洋占星術に輸出され、ラーフ(羅睺)にはドラゴン・ヘッドもしくはノース・ノードという名が、ケートゥ(計都)にはドラゴン・テールもしくはサウス・ノードという名がつけられた[3]。
伝統を重んじる立場から、もしくは影響力が小さいと判断されているのか、西洋占星術と違い近世に発見された天王星、海王星、冥王星のいわゆるトランス・サタニアン(土星以遠惑星、trans-Saturnian)は、一般には用いない。同様に小惑星も無視する。 しかし、古典西洋占星術と同様に占断の際に特に障害になっていない模様である。
(英語版同項目より)[出典無効]
Planets in maximum exaltation, mooltrikona (own sign), and debilitation, are(惑星の高揚、ムーラトリコーナ、減衰は下記のとおりである):[4]
Rahu and Ketu are exalted in Taurus/Scorpio and debilitated in Scorpio/Taurus respectively. They are also exalted in Gemini and Virgo.
The natural planetary relationships are:[4]
ナクシャトラ
月の白道上の位置を基にした二十七宿のこと。内容は二十七宿のところに少し記載してある。
分割図(ハーモニクス)の重視
インド占星術独自の技法であり、分割図ごとに占うテーマが決まっている。 分割図とは占星惑星の黄径や離角などの数値に一定の数式を当てはめて、新たなチャートを引き出す技法である。ナヴァグラハと呼ばれる9分割図が有名である。 これを取り入れた西洋占星術では、ハーモニクス(調波)と呼ばれている。
(英語版同項目より)詳細は英語版を参照。
Varga (分割図)(Sanskrit: varga, 'part, division'.) There are sixteen varga, or divisional, charts used in Jyotisha(インド占星術を行うものに使われる分割図は16ある):[5]
Four other vargas are attributed to Jaimini:(ジャイミニ式分割図)
Besides Rāshi (D-1), Navamsha (D-9), Dreshkana (D-3), Dasamsa (D-10) and Trimsamsa (D-30) are considered significant divisional charts.
ハウス・システム
ハウス・システムは、アセンダント・ホール・サイン・ハウス(東の地平線と交わっている宮を全て第一室と見なし、順次、宮を室に当てはめていく方式)やイコールハウス(室を東の地平線と黄道の交点から30度ずつ機械的に区切っていく方式)など、簡便なものが主流。古くは西洋古典占星術でもこのような方式が主流だったが、インドでは伝統を重んじる立場から主流である。
(英語版同項目より)
The zodiac signs in Jyotisha correspond to parts of the body:[6]
ホロスコープ表記
ホロスコープのチャートは、17世紀までのヨーロッパの西洋占星術と同じく方形に描かれる。 また、第1室を左側に描く方式の他に上に描く方式などもある。(インドの各地方により東・西・南・北で4方式ある模様) 個々のハウスは、正方形で描く南インド式(中国の一部の占星術と同様)と、三角形と菱形とで描く北インド式の二種類が主流。
(英語版同項目より) There are two chart styles used in Jyotisha:代表的なもの2つ
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象意の相違
また、占星惑星の解釈にもかなりの相違点がある。
例えば、月が心の状態を示す点は共通だが、インドでは「心の安定」、西洋では「心の不安定」を主に表す。(在住場所・星座やアスペクトする惑星により安定か不安定かは異なる。)
また土星が「制限」「支配」などの意味を持つのは共通だが、インドでは自分が支配・制限するもの(部下、奴隷など)を示すのに対し、西洋では自分を支配・制限するもの(かなり年上の上司、妻にとっての夫など)を示す。(これも月の場合と同じく状態による)
また、ラーフとケートゥは、西洋占星術では、少なくともラーフ(ドラゴン・ヘッド)に関しては悪い意味を持たないが、インド占星術ではともに凶星とされる。(ラーフは自己執着と躁状態・一時的な繁栄とその反動、ケートゥは自己否定と鬱状態・一時的な没落とその反動)
開運法
基本的にヒンドゥー教の因果業法論、宿命論に基づいており、開運法の実行によりある一定の効果があると信じられている。 ブリハット・パラーシャラ・ホーラー・シャーストラによれば、惑星には各々真言(マントラ)が決められており、巡ってきたダシャーの惑星の真言を決められた数、詠唱することのみ記載されている。 インドでは民間信仰として、チャート上で悪い影響を及ぼすと判断された惑星を支配する神々を祀ったお寺に参拝し、加持祈祷を行ってもらったり、善業を積む意味での寄付または喜捨を行う風習がある。 なお商業主義により現在開運法として行われている、惑星を表す宝石等を身に着けることは『ブリハット・パラーシャラ・ホーラー・シャーストラ』には記載されていない。
ウパーヤ(運命改善方法)としてではないが、ジョーティッシュと関連する古典医学書スシュルタサンヒター、チャラカサンヒターにおいて、鉱物と金属は病気を予防し健康維持に役立つアウシャダ(薬)であると規定される。そのため、本来はアーユルヴェーダとジョーティッシュ両方の知識を補完した上で、ホロスコープから個人に必要な鉱石や金属を調べた。古代より過去のカルマとして心身に現れる否定的な影響を退けると同時に、良い影響を微細身に吸収する方法として宝石療法は伝承されている。
ウパーヤ(加持祈祷、寄付、瞑想、真言を唱える、断食、沈黙行など)の本質は、神に自分を明け渡すことである。ジョーティッシュはじめ古代ヴェーダ聖典の教えを現代に引き継ぐ聖者アマチ(マーター・アムリターナンダマイー)らは、悲惨な運命を回避・軽減するには自らの意志で行う修行によって霊的に成長するのが望ましいとしている。
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関連項目
- ヴァーストゥ・シャーストラ - インド風水
脚注
Bibliography
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