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ウカイメデン天文台
モロッコの天文台 ウィキペディアから
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ウカイメデン天文台(ウカイメデンてんもんだい、Oukaïmeden Observatory)は、モロッコのオート・アトラス山脈中の高地にある共同観測施設、およびその中核をなすカディ・アヤド大学附属の天文台である[1]。天文観測に適した気象条件の立地で、カディ・アヤド大学の掃天観測用望遠鏡のほかに、リエージュ大学、韓国天文研究院、モロッコのアマチュア天文家団体が望遠鏡を設置している[1][3]。
前史
ウカイメデンに観測所ができたきっかけは、1980年代にさかのぼる[2][1]。1984年にニース大学を中心として日震学の国際共同観測、IRIS(International Research on the Interior of the Sun)ネットワークが始まり、それ以前からニース大学と共同研究を行っていたモロッコの研究チームも参加、モロッコを含む経度帯にも観測拠点を設ける必要があるということで、モロッコ国内で候補地を探した結果、マラケシュの南50キロメートル、オート・アトラス山脈の標高2750メートルに位置するウカイメデンの山上に観測局を設置することになった[2][1]。

候補地選びは、晴天率の高さと大気の透明度の高さが重視され、国中の候補地からまず地形と気象データによって絞り込み、詳しい気候データによって更に選抜、その中で現地調査と実務的な条件の検証から、最後に残ったのがウカイメデンだった[2]。ウカイメデンはシーイングが標準でも1秒を切るくらいで大気ゆらぎの悪影響は小さく、一年のうち快晴夜が7から8割に上る[4][1]。また、ウカイメデンは近くに村と、放送局の設備があり、電化や道路などの基盤整備にも有利であった[2]。
1988年12月にはIRISネットワークの観測局が完成、これはチリ(ラ・シヤ天文台)、アメリカ(ウィルコックス太陽観測所)、ウズベキスタンに次ぐ4番目の観測拠点だったが、当初は近くのラジオ放送のアンテナによる電気的干渉や、頻繁な停電により対策が必要となり、本格的に観測が始まったのは1989年の夏だった[2]。
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カディ・アヤド大学ウカイメデン天文台

IRIS観測局の運用と並行して、モロッコの天文学者たちはウカイメデンの環境調査を続けた[1]。ウカイメデンが天文観測に優れた気象条件であることは誰の目にも明らかとなり、ヨーロッパ南天天文台が100メートル望遠鏡の立地調査も行う程だった[4]。1999年にはカディ・アヤド大学理学部に高エネルギー物理学・天体物理学研究所(LPHEA)が設立され、2004年には大学当局が天文台の建設を認可、2007年にウカイメデン天文台が完成した[1][5]。早速、国際天文学連合の小惑星観測キャンペーンに参加、天文台コードJ43が付与され、2009年には正式に大学の研究センターとなった[1][5]。
2011年10月には、遠隔操作できる口径50センチメートルの自動望遠鏡による観測、モロッコ・ウカイメデン・スカイ・サーベイ(MOSS)が始まった[6][1]。補正レンズによるF/3の明るい光学系と主焦点カメラで、太陽系小天体の捜索を行うことを目的とし、彗星も発見している[6][1]。また、太陽系外惑星の捜索にも利用されている[6][1]。
ウカイメデン天文台は更に、宇宙天気分野の研究も始めている[1]。国際宇宙天気イニシアティブ(ISWI)に参加し、大気光を観測して地球の熱圏・電離圏の動態を調べるため、ファブリ・ペロー干渉計と広視野撮像装置を備えている[7][1]。
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TRAPPIST-North
→「TRAPPIST」も参照

MOSS望遠鏡の成果をみたリエージュ大学を中心とするTRAPPISTチームは、ラ・シヤ天文台に設置したTRAPPIST-Southが良績をあげていることから、その双子の望遠鏡による北半球の観測拠点をウカイメデンに設けることにした[1][8]。TRAPPIST-Southと同じ独アステルコ製口径60センチメートル、F/8のリッチー・クレチアン式望遠鏡にCCDカメラという構成で、2016年春に設置が完了し、6月には初期成果が出て、10月6日に正式にお披露目となった[8]。ちょうど、TRAPPIST-1の惑星系が発見された頃で、TRAPPIST-Northもその系外惑星の観測に参加している[8][1][9]。
OWL-Net

韓国天文研究院(KASI)は、韓国の低軌道衛星の追跡及び静止衛星の監視を主な目的として、OWL-Net(Optical Wide Field PatroL Network)の自動観測所を世界5ヶ所に整備しており、モロッコではカディ・アヤド大学と協力してウカイメデンに観測局を設置した[10][1]。OWL-Netの観測機器は、伊オフィチナ・ステラーレ製の口径0.5メートル望遠鏡とCCDカメラという構成である[10]。OWL-Netの望遠鏡も、本来の目的に加えて太陽系小天体や系外惑星の観測に使用されている[10]。
ハイ・アトラス天文台
ウカイメデンには研究機関の観測施設だけではなく、アマチュア天文家のグループが協力する枠組みで運用される天文台がある[11]。モロッコ天文・天体写真協会が設置したハイ・アトラス天文台(HAO)がそれで、米PlaneWave製の12.5インチ補正ドール・カーカム式望遠鏡などを備える[11][3]。アマチュアの用途だけでなく、ガンマ線バースト観測などの研究観測に協力もしている[11][3]。
出典
外部リンク
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