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エネルギー・運動量テンソル
質量密度、エネルギー密度、エネルギー流、運動量密度、応力を相対性理論に基づいた形式で記述したテンソル場 ウィキペディアから
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エネルギー・運動量テンソル(エネルギー・うんどうりょうテンソル、英語: energy-momentum tensor、stress-energy tensor、stress-energy-momentum tensor)とは、質量密度、エネルギー密度、エネルギー流束密度、運動量密度、応力を相対性理論に基づいた形式で記述した物理量である。 エネルギー・運動量テンソルは二階のテンソルであり、対称テンソルとして定義される。記号は Tμν で表されることが多い。 エネルギーと運動量の保存則は、共変微分をもちいて
として表される。
一般相対性理論において、エネルギー・運動量テンソルはアインシュタイン方程式で物質分布を与える項として現れ、重力を生じさせる源(source term)としての役割を担う。 真空の状況では、アインシュタイン方程式で T = 0 とすればよい。
以下では、時間座標を0成分とし、空間座標を1,2,3成分とする添字を使い、計量テンソルの符号の規約として を選ぶ。また、アインシュタインの縮約記法を用いる。
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定義
要約
視点
エネルギー・運動量テンソルはネーターの定理により、時空の並進対称性に対応するネーター・カレントとして定められる。 物質場 φ の力学系を記述する作用積分が
と書かれている場合を考える。 時空の微小な併進 x → x' = x + ξ に対して、φ'(x') = φ(x) が成り立つ。 従って、場の変換は
で表される。 この変換に対応するカレントとして、エネルギー・運動量テンソルが
で定義される[1]。この定義には任意性があり、 により
で置き換えることができる。この任意性によりエネルギー・運動量テンソルは対称テンソルとして定義される[1]。
別の定義の仕方として、時空の計量による汎関数微分として定義する方法がある。この方法では対称であることが定義により明確となる。 一般相対性理論においては時空の計量 g が力学変数となる。作用汎関数が
で書かれているとき、計量 g の変分による作用の変分が
となるように定義される[2]。 計量 g による作用の汎関数微分を具体的に計算すれば
である。従って、エネルギー運動量テンソルは
で与えられる。
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各成分の意味
要約
視点

エネルギー・運動量テンソルを3次元の超曲面で積分すれば、ネーター・チャージとして4元運動量
が得られる[1]。
- 時間-時間成分、即ち は、エネルギー密度である。
- 時間-空間成分、即ち は、の方向へのエネルギーの流れである。
- 空間-時間成分、即ち は、i-成分の運動量密度である。
- 空間成分、即ち は、の方向への i-成分の運動量の流れである。
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具体形
要約
視点
相対論的粒子
→「相対論的力学」も参照
相対論的粒子の系を記述する作用汎関数は
であり、ここからエネルギー・運動量テンソルが
と導かれる。補助変数 ei から導かれる拘束条件 を用いれば
となる。
完全流体近似
物質の平均自由行程が全体のスケールに比べて短いとき、流体近似が可能である。さらに粘性が無視できる場合は完全流体として考えることができる。完全流体のエネルギー・運動量テンソルは
と仮定することができる。この仮定は、宇宙モデルを論じるときに通常用いられる。 ここで ρ は質量密度、p は静圧、ε は比内部エネルギーであり、何れも流体の共動座標系で定義される。また、u は流体の4元速度で、共動座標系では であり、流体の速度が v となる系では となる。
非相対論的な場合、となるから、行列形式で成分を書くと
となる。この空間成分は、古典的流体力学の応力テンソル
と一致する。
電磁場
→「古典電磁気学の共変定式」も参照
電磁場を記述する系の力学変数は電磁ポテンシャル A であり、一般化速度に相当する力学変数の微分は電磁場強度 F である。時空の計量 g を露わに書いた電磁場のラグランジュ関数は
である。このラグランジュ関数から得られる電磁場のエネルギー・運動量テンソルは
となる[3]。 T00 は電磁場のエネルギー密度、T0j はポインティング・ベクトル、Tij はマクスウェルの応力テンソルである。
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脚注
参考文献
関連項目
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