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エリトリトール

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エリトリトール
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エリトリトール(Erythritol)またはエリスリトールとは、化合物および糖アルコールの一種である。食品添加物砂糖の代わりに使われる。トウモロコシを原料に、酵素を用いて発酵させて製造する。化学式C4H10O4、 またはHO(CH2)(CHOH)2(CH2)OHである。

概要 エリトリトール, 識別情報 ...

ショ糖の60~70%の甘みを持ち、砂糖と違いカロリーはほとんど無く[1]血糖値には影響を与えず[2]虫歯の原因になることも無い[3]。また、インスリンの分泌を促進しない[4]

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歴史

1848年スコットランドの化学者、ジョン・ステンハウス(John Stenhouse)がエリトリトールを発見した[5]1852年に初めて単離に成功した。1950年に酵母で発酵させた廃糖蜜(Blackstrap Molasses)として作られ、日本においては「糖アルコール」として商品化された[6]

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エリトリトールの結晶

自然発生

エリトリトールは、一部の果物や発酵食品に自然に含まれる[7]

服用と安全性

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エリトリトールを使って甘くしたお菓子

1990年以降、エリトリトールは食べ物や飲み物において調味料や甘味料として安全に使用可能であるとし、60を超える国の政府機関で承認されている[8]。コーヒー、紅茶、液体栄養補助食品、混合ジュース、酒を除く飲み物、香料、ビスケット、クッキー、卓上甘味料、無糖のチューインガム、風味付け飲料水にも用いられる[8]。エリトリトールを摂取すると血中に急速に吸収されるが、経口投与の大部分(80~90%)は24時間以内に尿中に排泄される[8]

エリトリトールの安全性について、科学者は、吐き気、過剰な放屁、腹部の膨張や痛み、便の頻度、・・・エリトリトールをどの程度摂取するとこれらの胃腸の不調が発生するのかについて査定した。含有量が1.6%であれば、下剤効果は発生しなかった[8]。許容範囲内の摂取量の上限は、成人と子供とでそれぞれ0.78g/kg標準体重、0.71g/kg標準体重であった[8]欧州食品安全機関(European Food Safety Authority)の科学委員会は、食べ物および飲み物におけるエリトリトールの摂取上限量について、0.6g/kg標準体重と推奨した[8]

危険性

2023年、糖尿病など心疾患の危険を伴う基礎疾患がある人は、血中のエリトリトール濃度が高い場合、心臓発作や脳卒中のリスクが2倍になると示唆する研究が発表された[9]

食事と代謝

カロリーと標識化

エリトリトールの栄養表示については国によって異なる。日本や一部の欧州連合加盟国では、「ゼロカロリー」と表記されている[10]アメリカ食品医薬品局(The Food and Drug Administration, FDA)による表示要件は、カロリー数値は0.2kcal/gである。FDAは、一般に認められているエリトリトールの安全性については独自の判定を下してはいないが、複数の食品製造会社から提出されたエリトリトールに対して「GRAS」(「Generally Recognized As Safe」, 「おおむね安全である、と認められる」)と認定している[11]

消化

エリトリトールは小腸内の血流に概ね吸収され、その後、代謝されずに尿として排泄され、10%ほどの残りは大腸で腸内微生物による発酵を受けて短鎖脂肪酸に転換される[12][13]。少量であれば、他の糖アルコール(マルチトール、ソルビトール、キシリトール、ラクチトール)を摂取した時と同じく、ガス、膨満感、下剤効果が起こることはない[14]。摂取したエリトリトールの90%は大腸到達前に吸収されるが、残りの10%は、腸内細菌には消化されずに排泄される[12]

大量に摂取した場合の可能性として、悪心腸蠕動音、水様便がある[15]。男性では0.66g/kg標準体重以上、女性では0.8g/kg標準体重以上を摂取すると、共に便通反応[16]、50g以上を摂取すると下痢を促し[15]、稀にアレルギー性の膨疹を引き起こす[17]。また、特定の果物との合併症例も報告されている[18]

血糖値とインスリン

エリトリトールは、血糖値にも血中インスリン濃度にも影響を与えない[19][20]。それゆえに糖尿病患者にとって、有用な砂糖の代替となる可能性がある[6]。ブドウ糖を100とした場合のGI値II値insulinaemic index)はそれぞれ、0と2である。

口腔内細菌

エリトリトールは歯に優しい甘味料である。口腔内の細菌はエリトリトールを代謝できず、う蝕の原因にもならない[3][20]。それだけでなく、キシリトールと同じく、連鎖球菌に対して抗菌作用を持ち、歯垢を減らし、虫歯を防ぐ可能性がある[20]

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製造

工業生産においてエリトリトールは、トウモロコシデンプンから加水分解を触媒にしブドウ糖を生成するために酵素を用い[21]、ブドウ糖をモニリエラ・トメントサ・バール・ポリニス、オーレオバシディウム、カンジダ・マグノリアエ等の菌株で発酵させて製造する。他には電気化学合成による製造も開発中である[22][11][23]ヤロウイア・リポリティカ変異株は、発酵によるエリトリトール生産の際に特化されており、炭素源にグリセロールを使用し、その高い浸透圧により生成率が62%まで増加する[24]

冷却作用

エリトリトールには強力な冷却作用がある(溶解により熱を吸収する、すなわち正の溶解熱による物理的作用)[25]。これはハッカの風味による冷却作用(専ら生理的作用である:メントール#生理作用を参照)としばしば対比される。この冷却作用は、水に溶け切っていない状態でのみ存在し、糖衣、チョコレート・バー、チューインガム、ハード・キャンディをエリトリトールで甘くすると発生する可能性が出てくる。エリトリトールが持つ冷却作用は、キシリトールによるそれとよく似ており、すべての糖アルコールの中でも最も強力な冷却作用を示す[26]。エリトリトールの酸解離定数(Acid dissociation constant)は18°Cで13.903である[27]

生物学的特性

エリトリトールはキイロショウジョウバエにとっては有効な糖質が存在するにもかかわらず、有毒性を表し、寿命が縮むことが証明された。エリトリトールは人体に安全な害虫駆除剤としても使用できる可能性があることを示唆している[28]

エリトリトールはブルセラ属菌が優先的に消費する。山羊、牛、豚の胎盤の内部にエリトリトールが存在することについて、ここにブルセラ属菌が蓄積していることへの説明として提示されている[29]

呼び名

19世紀から20世紀初頭にかけて、エリトリトールには、「erythrol」「erythrite」「erythoglucin」「eryglucin」「erythromanniteaphycite」・・・これらの同義語が用いられてきた[30]

Zerose」は、エリトリトールの商標名である[31]

参考

関連項目

外部リンク

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