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スクアレン
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スクアレン (squalene) とは、トリテルペンに属する油性物質である。鮫の肝油から発見されたが、オリーブ油にも含まれ、人体では生合成され皮脂の主な成分として分泌される。
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歴史
スクアレンは、1906年に東京工業試験所の辻本満丸によって“黒子鮫”の肝油から発見され[5][6][7]、1926年、イシドール・ヒールブロン (Isidor Morris Heilbron) によって構造が決定された[8]。
辻本は深海鮫 (学名Squalus spp.) から発見したことから、スクアレン (squalene) と命名した[9][6][7]。
1990年代にはスクアレン、スクアラン共に鮫肝油が主な原料で、1990年代は日本が主要な輸入国かつ消費国で、「鮫肝油エキス」として健康食品が販売されてきた[10]。基礎研究では抗酸化、抗がん、抗菌作用を示し、また様々な化学物質の前駆体でもあり、ワクチンを体内で輸送するアジュバントにも利用でき、様々な製造業が注目し需要が増加し、このため持続可能性のある生産方法が求められている。
2020年、自然保護団体はCOVID-19ワクチン用のスクアレンを得るためにサメを虐殺する可能性について懸念を表明した[11]。サメ狩りに対する環境問題やその他の懸念が、他の供給源からスクアレンを抽出する動機となっている[12]。生合成プロセスでは、微生物の分野で探索が続けられ遺伝子操作された酵母やバクテリアを使用している[13][14]。
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分布
スクアレンは有機化合物であり式C30H50で表されるトリテルペンである。不純物の多いサンプルは黄色に見えるが、無色のオイルである。
スクアレンはステロイド骨格の中間体でもあり、多くの動物に分布している。哺乳類では、メバロン酸経路を通じてアセチルCoAより肝臓や皮膚で800mg/日程度生合成されるが、さらにコレステロールに転化されるため、その存在量は多くない。
肝臓にて生合成され皮脂腺から分泌されており、ヒトでは手のひらと足の裏をのぞく毛穴から皮脂として分泌され、その分泌量は食事の影響や個人差があり1日に125–475mgで、一般に30歳を過ぎると分泌量が減ってくる[9]。ヒトでは、皮膚に集中的に存在しており、スクアレンは皮脂の13%を占める主な構成成分であり[15][16]、皮膚を柔軟にし、肌に水分を保つ。
市販のスクアレンはサメの肝油から抽出されたものである。サメには鰾がないので、浮力を得るために肝臓に蓄えた脂質を利用している。
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効用、有効性
ほとんどの植物、菌類、動物は、人体のコレステロールやステロイドホルモンなどのステロール生合成の生化学的前駆体としてスクアレンを生成する[18][19][20]。また、多くの細菌においてホパノイドの生合成の中間体でもある[21]。
脂溶性の物質と乳化したり、外用での利用が行われる[15]。また基礎研究からは抗酸化作用を持ち、フリーラジカルによる損傷を減らすといった可能性がある[15]。
スクアレンは、いくつかのワクチンアジュバントの重要な成分である。ノバルティス社のアジュバントはMF59、グラクソ・スミスクライン社のアジュバントはAS03と呼ばれている[22]。
サプリメントとしても注目されているが、2010年の国立健康・栄養研究所のデータベースによると、有効性を裏付ける資料は見当たらないとされている[23]。
ヒトでの試験では、経口摂取したスクアレンは血中のスクアレン濃度を増加させており、24時間後まで比較グループよりも多かった[24]。
トリテルペノイド合成における役割
スクアレンは、ステロイドとホパノイドの生化学的前駆体である[25]。ステロールの場合、スクアレンの変換は、スクアレンモノオキシゲナーゼによる末端二重結合の酸化から始まり、2,3-オキシドスクアレンが生成される。その後、酵素触媒による環化を経てラノステロールが生成され、3つのメチル基の除去、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸による二重結合の1つの還元、もう1つの二重結合の移動という多段階の過程を経て、コレステロールやエルゴステロールなどの他のステロイドに精製される[26]。多くの植物では、これはその後スティグマステロールに変換され、多くの菌類ではエルゴステロールの前駆体となる[要出典]。
生合成
→「ステロイド」を参照
まずジメチルアリル二リン酸とイソペンテニル二リン酸からゲラニル二リン酸が生成する(図で −OPP は二リン酸基 −OP(=O)(OH)−O−P(=O)(OH)2 を示す)。
次にゲラニル二リン酸と3-イソペンテニル二リン酸からファルネシル二リン酸が生成する。
最後にファルネシル二リン酸2分子からファルネシル二リン酸ファルネシルトランスフェラーゼ(スクアレン合成酵素)によりスクアレンが生成する。
出典
参考文献
関連項目
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