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セアカゴケグモ
クモ目ヒメグモ科の有毒の動物 ウィキペディアから
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セアカゴケグモ(背赤後家蜘蛛、Latrodectus hasseltii)は、ヒメグモ科に分類される有毒の小型のクモの一種。
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![]() | この記事はその主題が日本に置かれた記述になっており、世界的観点から説明されていない可能性があります。 (2025年8月) |
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形態
よく膨らんだ丸い腹を持つ黒いクモで背中の模様が良く目立つ
雌は体長10mm前後。体型は丸く、体表は鈍い光沢を帯びた黒色。胸腹部背面にはひし形が2つ縦に並んだような赤い模様、腹面には砂時計状の赤い模様があるので、見間違えることは少ない。この赤斑の形は雌雄で多少異なり、地色の黒が淡い個体もいる。雄は体長3-5mm。メスより小型で体型が細く、褐色がかった地色に淡色の目立たない斑紋を持つ。メスと異なり、胸腹部の背面に赤い模様は見られないが、腹面にはメス同様に赤い模様を持つ。ただし、幼体のうちはメスもオスも淡褐色の地に不明瞭な縞模様をもつのみで、成体のような明確な違い(性的二型)は見られない。
- 黒く丸い腹部と背面の赤い模様がよく目立つ雌成体
- 腹部の下面にも赤い模様がある
- クモの分類で重視される単眼の配列
- 腹部には茶色の短毛が密生する
- 雄成体。雌と比べるとだいぶ小さい
- 雌の亜成体
類似種
ゴケグモ類はよく膨らんだ丸い腹を持つものが多い。八重山諸島には在来種とされるアカオビゴケグモが分布するが、日本本土で見られるものはいずれも外来種とされる。
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生態
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造網性のクモで地面に近い所に網を張る[1]。
網は不規則網で、複雑に張られた三次元構造を持つ。その上方は糸に粘液がついていない「巣域」と呼ばれる住居で、卵嚢などもこの部分にぶら下げられる。一方、網の下方は「捕獲域」と呼ばれ、糸には捕獲用の粘液がついている。これに虫が触れて粘着すると、セアカゴケグモは粘糸を投げて獲物を絡め捕り、巣域まで引き上げて食べる。餌は主にアリ、ゴミムシ、ワラジムシ、ハサミムシ等の地上徘徊性の昆虫類であり、まれに小型のトカゲ類を捕らえることもある。網はベンチの下や側溝の蓋の裏側、ガードレールの支柱付近などといった、地面に近く直射日光が当たらない場所に造られることが多い。
他のクモと同じく肉食性で網にかかった獲物を捕食する。逆に天敵としては肉食のクモを始め、幼虫がクモを食べるヒメバチ科の寄生蜂などが確認されている。肉食性のクモや蜂の中には在来種であるが、本種を餌として利用する者があることが報告されている[2]。
交尾後には雌が雄を捕食することがしばしば見られる。
- トカゲをとらえた雌成体
- 驚くと脚を縮めて死んだふりをする
- 植木鉢に作られた卵嚢と子蜘蛛
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分布
オーストラリア原産。ニュージーランド、アジア、ヨーロッパ、アメリカなどに移入分布する[4][5]。
日本では沖縄県内の八重山諸島などでは1970年代には分布が知られていた[6]。ただ、これは後年別種扱いが妥当ということで、別種アカオビゴケグモ(L. elegans)とされている[7]。本土での本格的な発見は1995年に大阪府内での発見が最初とされる。当初は大々的に報道された結果近縁種も含め各地で生息が明らかになった。定着事例は関東地方以南を中心とするが、発見は東北や北海道も含めほぼ全国的に見つかっている[5]。
分類
人間との関わり
要約
視点
毒蜘蛛
獲物に対してばかりでなく、ヒトに対しても比較的強い毒を持つことで知らる。成分は神経毒の「α-ラトロトキシン」である[4]。ほとんどの咬傷事例はメスによるものであり、かつてはオスは無害であるとされてきたが、少数ながらオスによる咬傷により激しい痛みが生じたという記録も存在する。オスによる被害が少ないのは毒性や咬合力が低いことが原因ではなく、体格が小さくそれに比例して牙も小さいためであると考えられている[8]。大阪府では毎年本種による被害が発生しているが、重篤者は出ていない[9]。2012年9月には、福岡県でも同様の被害が発生した。
オーストラリアでは抗毒素の導入以前に14件の死亡例が報告されているが、セアカゴケグモの咬傷のみが死因であるとは断定されていない[10][11]。2016年には抗毒素の導入以降60年来の死亡事故が発生したが、被害男性は重度の交通事故から回復したばかりであり、直接的な死因は噛まれた後の二次的な感染症であった[12]。日本では死亡例は報告されていない[4]。オーストラリアでは古くから代表的な毒グモとして知られており、抗血清も存在する。日本でも、発生地域の医療機関で抗血清を準備しているところがある。メスに咬まれた部位は激しい痛みを感じた後に腫れ、全身症状(痛み、発汗、発熱など)が現れることがある。重症化することは少ないが、全身症状が現れた場合には119番に通報して救急車を要請し、医療機関で診察を受けることが望ましい。また、子供や高齢者の場合には重症化する危険があり、大人でもアナフィラキシーショックを起こす場合がある[13]。
特定外来生物
日本では、外来生物法によりゴケグモ属のうち本種及びクロゴケグモ・ハイイロゴケグモ・ジュウサンボシゴケグモの4種が2005年に特定外来生物の第一次指定をされている[4]。また、日本生態学会により日本の侵略的外来種ワースト100に選定されている[5]。-0.5度から46度までの低温・高温でも生息・繁殖ができ、日本でも越冬して発生を繰り返している[14]。なお、最近までクモ類では外来種は珍しく、これ以前にはクロガケジグモがあるのみであった。ただ、近年外来種は増加傾向にあり、ハイイロゴケグモ・ジュウサンボシゴケグモ・マダラヒメグモなどが確認されている。
駆除方法としては幼体・成体ともに、市販のピレスロイド系の殺虫剤によって駆除が可能である[5]。卵については、殺虫剤が効きづらいため、潰すか焼却する必要がある。
工業利用
糸が測量機器、測距儀、顕微鏡、爆撃照準器、望遠照準器などの光学機器の十字線(レティクル)に用いられる。未成熟期にある米国産クロゴケグモのそれが最適とされているが、採取に際し命を失う恐れがあるうえに、十分な量を確保するのが困難なため、遺伝子工学を駆使して、バクテリアにゴケグモの糸を生成させる研究が、アメリカ陸軍の資金により進行中である[15]。
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名前
標準和名は「セアカゴケグモ」とされ、八木沼(1970)やその改良である八木沼(1977)にその名前が確認できる[6][16]。和名は背面にある赤い模様が目立つという形態的な特徴に因むものである。「ゴケグモ」は英名のwidow spider(後家の蜘蛛)という名前の直訳である。これは交尾後に雌が雄を捕食してしまい、夫に先立たれた妻で後家のようになるという、このグループの交尾時にしばしば見られる生態的な特徴に因む命名とされる。
ゴケグモ類

ゴケグモ類は、ゴケグモ属 (Latrodectus) というグループに分類され、約31種が知られている[4]。熱帯地方を中心に世界中に分布する仲間である。ゴケグモの名前の由来に関して、「毒性が強いため噛まれた時の死亡率が高く、奥さんが後家になる」という俗説が知られている。実際には、ゴケグモ類の英名 "widow spider" そのままの和訳で、ゴケグモ類はオスの体がメスに比べて非常に小さく、交尾後にオスがメスに共食いされることに由来する[4]。ただし、共食いの頻度などは種類や条件により異なる[4]。
最も有名なゴケグモ類は、クロゴケグモ (Latrodectus mactans、black widow spider) で、北アメリカをはじめ、世界中に広く生息する毒グモ。こちらの方が死亡例なども多い。日本では2000年以降になって米軍岩国基地内での発生が確認されている。セアカゴケグモとはほぼ同じ大きさ。セアカゴケグモをクロゴケグモの亜種に分類する場合もあり、その場合には、セアカゴケグモによる死亡例が、世界中のクロゴケグモによる死亡例と統計上合計されている場合があり注意が必要である。アメリカでは『black widow(ブラック・ウィドウ)』という名で知られており、戦闘機P-61とYF-23の愛称に採用された。

またヨーロッパ南部に分布するジュウサンボシゴケグモ (Latrodectus tredecimguttatus、P. Rossi, 1790) も古来から有名で、その毒による症状はゴケグモ刺咬症 (Latrodectism) としてよく知られてきた。大利・池田(1996b)によれば、このクモに咬まれると、その時点での痛みはさほどではないが、10分ほどで全身症状が現れ、各部リンパ節が痛み、腹筋の硬直、さらに耐えられない痛みとともに多量の汗、涙、唾液が出、血圧上昇、呼吸困難、言語症などが起き、回復しない場合は2-3日後に死亡するという。しかし抗血清が作られるようになってからは、アナフィラキシー・ショック以外での死亡例はほとんどなくなったとされる。
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脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
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