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ヒストン

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ヒストン
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ヒストン: histone)は、真核生物クロマチン染色体)を構成する主要なタンパク質である。

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コアヒストンの種類とヌクレオソーム構造 (右上の図でH2A, H2B のH3,H4に対する位置が反対になっている気がします)

概要

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H2AH2BH3H4のヒストン八量体とDNAから構成されるヌクレオソーム構造

ヒストンは、長い DNA分子を折り畳んで核内に収納する役割をもつ。ヒストンはDNAに結合するタンパク質の大部分を占め、ヒストンとDNAの重量比はほぼ1:1である。

コアヒストンH2AH2BH3H4の4種類に分類される。それぞれ2分子ずつ集まり、ヒストン八量体(ヒストンオクタマー)を形成する(図1)。1つのヒストン八量体は、約 146 bp の DNA を左巻きに約1.65回巻き付け、ヌクレオソームを構築する。ヌクレオソームはクロマチン構造の最小単位である。一方、ヌクレオソーム間のDNA(リンカーDNA)に結合するヒストンはリンカーヒストンと総称され、その代表的なものはヒストンH1と呼ばれる。有核赤血球では H1 の代わりに H5 が用いられる。コアヒストン(特にH3とH4)は進化的によく保存されているのに対し、リンカーヒストンの一次構造はより多様性が大きい。

ヒストンは強い塩基性のタンパク質であり、酸性の DNA との高い親和性を示す。各ヒストンを構成するアミノ酸のうち、20%以上が塩基性の残基(リシンまたはアルギニン)である(表)。コアヒストンは球形のカルボキシル末端と、直鎖状のアミノ末端(ヒストンテール)からなっている。

さらに見る ヒストンの種類, 分子量(Mr) ...

ヌクレオソームの形成は一般に転写に対して阻害的に働く。転写が活性な遺伝子座の染色体では、ヌクレオソームが緩んだりヒストンが解離していることが知られている。それらの部位はヌクレアーゼ(DNA分解酵素)に対する感受性が高くなっている。

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ヒストンの化学修飾

要約
視点

種類と表記

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リシン残基とそのモノ・ジ・トリメチル化

ヒストンは、アセチル化(acetylation [ac])・リン酸化(phosphorylation [ph])・メチル化(methylation [me])・ユビキチン化(ubiquitination [ub])といった化学修飾を受けることが知られている。アセチル化とユビキチン化はリシン(lysine [K])残基、メチル化はリシンとアルギニン(Arginine [R])残基、リン酸化セリン(serine [S])とスレオニン(threonine [T])残基を対象とする。これらの化学修飾は、遺伝子発現等、数々のクロマチン機能の制御に関わっていることが証明されつつある。複数の修飾の組み合わせがそれぞれ特異的な機能を引き出すという仮説は、ヒストンコード仮説と呼ばれている[1]

代表的な化学修飾を下の表に示す。例えば、H2Aの5番目のリシン残基にはいるアセチル化はH2AK5acと表記される。メチル化は導入されるメチル基の数によって、モノメチル化(monomethylation [me1])・ジメチル化(dimethylation [me2])・トリメチル化(trimethylation [me3])に分類される。H3の9番目のリシン残基にはいるトリメチル化はH3K9me3と表記される。

修飾酵素と修飾認識ドメイン

これら多数の化学修飾のうち、いくつかについては修飾酵素と脱修飾酵素が同定されている。例えば、ヒストンのアセチル化・脱アセチル化を担う酵素は、それぞれヒストンアセチルトランスフェラーゼ(histone acetyltransferases [HAT])・ヒストン脱アセチル化酵素(histone deacetylases [HDAC])と総称される。また、特定のアミノ酸配列とその化学修飾を認識して結合するタンパク質が知られており、例えば、HP1(heterochromatin protein 1)はそのクロモドメイン(chromodomain)を介してH3K9me3に結合する。その他にも、アセチル化リシンを認識するブロモドメイン(bromodomain)や、メチル化ヒストンテールを認識するTUDORドメイン、PHDドメインが知られている。多くのヒストン修飾酵素・脱修飾酵素(複合体)にもこれらのヒストン修飾認識ドメインが存在する。これらの複合体は、特異的なヒストン修飾を認識してリクルートされ、その修飾の維持やさらなる広がりを触媒する。修飾酵素・認識タンパク質・脱修飾酵素の組み合わせは、writer・reader・eraserと通称されることもある。

さらに見る ヒストン, アセチル化 ...
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ヒストン・バリアント

ヒストンにはバリアントhistone variants)と総称されるサブタイプが存在する。例えばヒトでは、H2AとH3において多数のバリアントの存在が顕著である。H4のバリアントはこれまでに報告されていない。バリアントの中には、転写DNA修復に特異的な機能をもつもの(H2A.ZやH2A.X等)、組織特異的に発現しているもの、さらに機能的にユニークな存在としてセントロメア形成に関わるもの(CENP-A)がある。

さらに見る H2A, H2B ...

ヒストン・シャペロン

ヒストンに結合してヌクレオソーム形成を促進するシャペロンの総称(histone chaperones[6]。酸性アミノ酸に富み、塩基性のヒストンと結合してその凝集を抑制する。それぞれのコアヒストンあるいはバリアントに特異的に働くシャペロンが存在する。

さらに見る シャペロン, カーゴ ...

この他にも、アフリカツメガエル卵母細胞から同定されたヌクレオプラスミン(nucleoplasmin)がある。1977年、ヌクレオプラスミンの発見を通してヒストン・シャペロンという概念が初めて提唱された[9]

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クロマチン・リモデリング複合体

ATPの加水分解に依存してヌクレオソーム構造の崩壊や再構築を促進するタンパク質複合体の総称(chromatin remodeling complexes)。ヌクレオソーム・リモデリング複合体(nucleosome remodeling complexes)とも呼ばれる。遺伝子発現DNA修復、組換えなど様々なクロマチン機能の制御に関わる。

クロマチン・リモデリング複合体は、コアとなるATPaseサブユニットを指標にして、4つのサブファミリーに分類される(表:括弧内はそれぞれの複合体のATPaseサブユニットを表す)。ISWI サブファミリー複合体は2-4個のサブユニットから構成される。それ以外のサブファミリーに分類される複合体はすべて10個程度のサブユニットから成る巨大な複合体である。多くのクロマチン・リモデリング複合体は、クロモドメインやブロモドメインなどのヒストン修飾結合モチーフをもつサブユニットを有する。すなわち、これらの複合体は特異的なヒストン化学修飾を介してクロマチンにリクルートされ、周囲のヌクレオソーム構造を変化させる能力をもつ。

さらに見る SWI/SNF, ISWI ...
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ヒストンの進化的起源

古細菌がヒストンに似たタンパク質が有することから、ヒストン様タンパク質真核生物と古細菌の分岐以前から存在したと考えられている[14][15]。例えば、ある種の古細菌のヒストン様タンパク質は、真核細胞のH3+H4テトラマーに対応する構造をとり、~60 bp 周期のヌクレオソーム様構造[16]あるいはより伸長したポリマー構造(ハイパーヌクレオソーム [hypernucleosomes])[17]を形成することが報告されている。一方、ヒストン様タンパク質の元来の機能はゲノムの折り畳みにあったのではなく、遺伝子発現の制御[18]あるいはウイルスやトランスポゾンの攻撃からのゲノムの保護[19]にあったのではないかという議論もある。

引用文献

参考図書

関連項目

外部リンク

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