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プロトレプティコス (アリストテレス)

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プロトレプティコス』(古希: Προτρεπτικός, : Protrepticus)邦題『哲学のすすめ[1][2](てつがくのすすめ)は、アリストテレスの著作。古代に複数書かれた「プロトレプティコス」の代表例。断片のみ現存する。

背景

本書はアリストテレスの初期著作にして「公開的著作[3]」、すなわち『形而上学』『ニコマコス倫理学』といった本来非公開の著作と異なり、公開目的で書かれた著作である。

本書の成立経緯としては、イソクラテスプラトンのライバル)の著作『アンティドシス英語版』のアカデメイア批判への反論として書かれた、あるいはキュプロステミソン英語版に向けて書かれた、と伝えられる[4]。テミソンに向けて書かれた場合も、実際の想定読者は若者全般だったと推測される[5]

本書は古代ギリシア・ローマ世界において、アリストテレスの代表作の一つとして読まれた[6]ストア派ゼノンキュニコス派クラテスは本書を批判的に受容した[7]キケロは本書に倣い『ホルテンシウス』を書いた[6]

本書の断片は、主にイアンブリコス同題の著作に抜粋されて伝わる[4]。イアンブリコスの抜粋は、おそらく対話体または書簡体・演説体だった原著を講義体に改めたり、前書きなどを挿入したりしているが、原著に比較的忠実と推測される[4]。またイアンブリコス以外の主な断片として、アウグスティヌス三位一体論英語版』所引(キケロ『ホルテンシウス』の孫引き)の「至福者の島」に関する記述がある[8]

近現代のアリストテレス全集では『断片集』に含まれる。

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内容

「我々は哲学すべきである」(philosophēteon)をキーフレーズに、「哲学する」「よく生きる」こと、それにより真の幸福に至ることを、論証形式で読者に勧める[9]

イソクラテスが『アンティドシス英語版』で説いたような実践を重んじる哲学観、すなわち「哲学は実生活に有用・有益でなければならない」[10]「役に立たない哲学は哲学ではない」[7]という哲学観を否定し、観想(観照、テオーリアー)を重んじる哲学観、すなわち哲学すること自体に意義があるとする哲学観を説く[5][11]。そこで、「至福者の島」すなわち島民が観想だけして生きる理想郷、という思考実験を持ち出す[11]

形而上学』冒頭の「人間は生まれつき知ることを欲する」と似た部分もある[12]

日本語訳

出版年順

  • 藤井義夫「哲学のすすめ」 河盛好蔵等編『世界人生論全集 1』筑摩書房、1963年、NDLJP:2932379
  • 川田殖「哲学のすすめ(プロトレプティコス)」 田中美知太郎編『世界古典文学全集 16 アリストテレス』筑摩書房、1966年。ISBN 9784480203168
  • 松本厚・宮内璋「哲学の勧め(プロトレプティコス)」 『アリストテレス全集 17 詩学・アテナイ人の国制・断片集』岩波書店、1972年。ISBN 9784000912976
  • 廣川洋一『アリストテレス「哲学のすすめ」』講談社〈講談社学術文庫〉、2011年。ISBN 9784062920353
  • 國方栄二「哲学のすすめ(プロトレプティコス)」『新版アリストテレス全集 20 著作断片集 2』岩波書店、2018年。ISBN 9784000927901

脚注

参考文献

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