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ホザキマスクサ
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ホザキマスクサ(学名:Carex angustealata)は、カヤツリグサ科スゲ属の植物の1つ。タカネマスクサによく似ており、同物異名ないしその変種として扱われてきたが、近年になって独立種とされている。タカネマスクサに比べて小穂の数が多い。平地の河川敷の木立の中に出現する。
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特徴
多年生の草本[1]。匍匐枝等は出さず、密集した株を作る。草丈は花茎が30~60cmで葉はそれより長くなる。全体に質は柔らかい。葉は幅が2~3mm。基部の鞘は淡褐色から淡い栗色になる。
花期は5~6月。花序はほぼ同型の小穂を7~10個ほど、それぞれに間を置いて穂状に着ける。小穂の基部から出る苞には鞘はなく、葉身部は最上部の小穂では発達せず、上から4~8個目以下の小穂では葉状に発達する。小穂はいずれも雌雄性、つまり基部に雄小花、先端側に雌小花が着く。形は球形から卵形で長さは0.6~1cm、柄はない。雄花鱗片は先端が尖るかあるいは僅かに芒状に突き出す。雌花鱗片は卵形で緑白色をしており、果胞より多少短く、先端は鋭く尖るか短い芒状になっている。果胞は長卵形をしており、長さは3~3.5mm。毛はなく、稜の間には小数の脈があり、両側側面には基部から先端まで続く狭い翼があり、その縁は揃っていない細かい鋸歯がある。先端のくちばしは短く、口部には2つの歯状突起がある。痩果は果胞に密着して包まれており、長さは0.9~2.1mm、柱頭の先端部は2つに分かれている。
- 生育環境
- 柳の根元の大株
- 花序の全体像
- 花序の先端付近
- 花序の下方
- 最下の小穂
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分布と生育環境
日本の固有種で、本州の愛知県以西に分布している[2]。ただし四国と九州の南部からは発見されていない[3]。
河原に生える[4]。実際にはより限られた環境に生育するもので、平坦地を流れる河川の広い河川敷では、ヤナギ属を中心とする樹木とそれを取り巻く茂みが見られることが多いが、本種はこのような木立の中の林床に出現するものである[5]。ただし時として同様な場所の開けた草地にも見られることがある。
分類、類似種など
同型で無柄の小穂をまばらな穂状に着け、苞は葉身が発達し、小穂は雌雄性で果胞に翼があり、柱頭は2裂、匍匐茎は出さない、といった特徴から勝山(2015)では本種はヤブスゲ節に含められている[6]。この節にはヤブスゲ C. rochebrunii など日本に5種ほどが知られるが、本種とタカネマスクサ C. planata 以外のものは果胞が卵状披針形で細長く、小穂も幅が狭い。節は異なるがマスクサ C. gibba なども似ている。それらとの違いについてはタカネマスクサの節を参照されたい。
タカネマスクサとの関係
タカネマスクサは1878年に記載されたものだが、Akiyamaは1955年にこの種に2つの変種を認めた[7]。1つは var. angstealata で、基本変種より多くの小穂をつけること、果胞が被針状卵形と基本変種より幅が狭いこと、果胞の縁の翼の幅が狭いことを特徴とし、これはホザキマスクサの和名が与えられた。もう1つは var. remotiuscula で、雄小花からなる頂小穂が突き出ているのが特徴とされ、こちらの和名はカンサイタカネマスクサとなった[8]。これらの2変種は、その後の主要な図鑑等で言及されることが少なく、例えば大井(1983)でもこれらについては名前すら触れていない[9]。その後カンサイタカネマスクサについては基本変種の同物異名と見なされている。他方でホザキマスクサについてはその存在を認め、あるいは別種とするのが妥当ではないかとの判断が近年になって言われるようになっていた。例えば星野他(2011)ではこれを変種として取り上げ、図と記載を示してあり、ただし変種としての地位については何も触れておらず、それでも基本変種と区別できるものとして記述してある[10]。勝山(2015)では変種の地位に置いてあるものの違いがはっきりとあることから『独立種と考えられる』と記してある[11]。
なお、この2種の違いとしては上記のような形態的な差異の他に生態的な違いも明確に見られる[12]。本種は上記のように河原に特有のヤナギ類を中心とした茂みを主たる生育地とし、時にその周囲の開けた場所に出現するにせよ、いずれにしても河原にのみ見られる。これに対してタカネマスクサはやや木陰の湿った環境であれば様々な場所に見られ、特に林縁で見られることが多い。
保護の状況
環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧II類に指定されており、府県別では愛知県と三重県で絶滅危惧I類、京都府で絶滅危惧II類、岡山県で準絶滅危惧の指定があり、また兵庫県では絶滅したものとされている[13]。福岡県でも絶滅危惧I類の指定がある[14]。京都府ではもともと全国的に希なものであり、府内にはある程度の個体数が見られる場所もあるものの、その生育環境から氾濫や河川改修によって個体数は減少傾向にあるという[15]。
出典
参考文献
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