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ミルキーウェイ・プロジェクト

ズーニバース上の市民科学プロジェクト ウィキペディアから

ミルキーウェイ・プロジェクト
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ミルキーウェイ・プロジェクト:The Milky Way Project)は、天の川銀河における恒星風バブルを見つけるためのオンライン上の市民科学プロジェクトである。 市民科学プロジェクトのウェブプラットフォーム、ズーニバース上で運営されている。現在はプロジェクトが完了し、"Finished"のステータスにある。ボランティアユーザーは、スピッツァー宇宙望遠鏡広視野赤外線探査機(WISE)が撮影した赤外線画像のデータを分類し、泡構造(バブル構造)を探す[1]

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プロジェクトのロゴマーク

プロジェクトの最初の結果である第1期データリリースにて、銀河系中の赤外線泡構造をそれまで発見されていた数から1桁増加させた[2]

仕様

ミルキーウェイ・プロジェクトでは、スピッツァー望遠鏡で行われたスピッツァー銀河面多波長撮像サーベイ(Multiband Imaging Photometer for Spitzer Galactic Plane Survey :MIPSGAL)と銀河系レガシー中間銀河面赤外サーベイ(Galactic Legacy Infrared Mid-Plane Survey Extraordinaire :GLIMPSE)で得られたアーカイブ画像と、一部WISEの画像を使用している。 このプロジェクトでは、主に星形成の痕跡である泡構造を探し、副産物としてノット構造、星団、若い星や超新星残骸、未発見の銀河を探す[3][4]

科学者たちは、その画像中で見つかった泡構造が若い大質量星が放った光が星間物質と衝突して生じた衝撃波であると考えている。 他のズーニバースプロジェクト同様、1つの画像を複数のボランティアがチェックし、統計的に得られた結果が最終的なボランティアによるその画像の分類となる。

また、ボランティアによる分類結果は、同様の分類を行うための機械学習ツール用の学習データとしても活用された[5]

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沿革と成果

要約
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階層的泡構造と呼ばれる構造の一例。1つの巨大な泡が大質量星によりダストに刻まれると、それを引き金に小さな泡が形成される。

ミルキーウェイ・プロジェクトは、2010年12月に、9番目のズーニバースプロジェクトとして立ち上げられた[6][7]

プロジェクトのフェーズ1として、赤外線画像のうち波長4.5 μm で撮影された画像をRGBの青、8.0 μm で撮影された画像を緑、24 μm で撮影された画像を赤チャンネルに割り振った疑似カラー画像が使用された。 フェーズ1で発見された5106個ものバブル構造は、ミルキーウェイ・プロジェクトの第1期データリリース(DR1)として2012年に公開され、これは天文学における最大のデータベースであるSIMBADでも使用できるようになった[8]。このカタログを作るためにボランティアが行った描画数は50万件を超えた。

ミルキーウェイ・プロジェクトで使用される、画像中で見つけたバブルを囲むための描画ツールは、フェーズ1では円形を描くものだったので、バブルの多様な形状に対応しにくいとして改良を求める声がユーザーから上がっていた。その結果、DR1公開後にリニューアルされて立ち上げられたフェーズ2では楕円形ツールとして改良され、バブルの実際の形状によく適合したマークアップが可能となった。 フェーズ2で用いられる画像で使用される波長帯はより短い波長側に少し変化しており、波長3.6 μm で撮影された画像をRGBの青、4.5 μm で撮影された画像を緑、8.0 μm で撮影された画像を赤チャンネルに割り振った疑似カラー画像が使用された。これは天体画像ソフトウェアAladin Liteでの表示に合わせたものである[9]

フェーズ2のデータ分類が完了後、1年間のオフライン期間を経て「フェニックスシーズン」と呼ばれるフェーズ3が立ち上げられた[10]。 フェニックスシーズンでは、画像はフェーズ1と同じ色構成のものを使用し、ツールはフェーズ2で導入された改良楕円ツールを使用し、それぞれの期間の長所を組み合わせている。

ミルキーウェイ・プロジェクトでは星団や銀河も探している。さらにフェーズ2では緑色超過天体(Extended Green Objects:EGO)と呼ばれる、若い大質量星からのアウトフローに起因する波長4.5 μmで強い放射を持つ天体も探した[11]。 このほかにミルキーウェイ・プロジェクトに参加したボランティアユーザーは、画像中に黄色い球状の天体がときおり写っていることに気付いた。 これはイエローボールという名称で呼ばれるようになり、コンパクトに密集した複数の星形成領域がバブル構造に遷移しつつある過程にある天体とされている[12]。 イエローボールのカタログでの発見数は6000個を超えている[13]

フェーズ3ではボランティアユーザーたちはイエローボールに加え、創造の柱のようなピラー構造やバウショックも探せるようになった。 フェーズ3が実施される目的は、フェーズ2と3のデータから信頼できるバブル構造データの第2期データリリース(DR2)を作ることで、またイエローボールのカタログや、これまで作られた中で最大のバウショックカタログ作りも目指している。この目的のためにはフェーズ2では含まれない24 μm 波長での画像も重要となる。この波長ではバブル構造はより見つけやすくなり、バウショックが最も見えやすくなる波長にも相当するからである。

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高速度星の1つ、へびつかい座ゼータ星が形成する赤外線バウショック

ミルキーウェイ・プロジェクトでの分類集約パイプラインは、DR1で見られたいくつかの不具合を避けるために常にテスト・修正が行われている。

そして2019年にDR2を含む論文が出版され、この中には赤外線での2600個のバブル構造と、599個の赤外線バウショック候補が掲載されている。 また、サブセットとしてその中から特に信頼度の高い候補だけを抽出したカタログも作成され、1394個のバブルと453個のバウショックが含まれている。

新しいカタログには、有名な星形成領域NGC 3603英語版RCW 49英語版の近くで発見されたバウショックも含まれている。 カタログ内のバブル構造の大きさは専門家が分類した結果とほぼ同等であり、従来の研究よりも優れている。 また、見つかった天体の中には「コーヒーリング」と名付けられた奇妙な天体もあり、この完璧な形状の吸収リングの性質はグリーンバンク望遠鏡での追加観測でも明らかにならなかった[14]

このほかにも発見された天体は、電波望遠鏡でのサーベイ画像と比較した研究が行われている[15]

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関連項目

出典

外部リンク

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