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リーマンゼータ関数の特殊値

解析的整数論において重要な複素関数の特殊値 ウィキペディアから

リーマンゼータ関数の特殊値
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リーマンゼータ関数の特殊値(リーマンゼータかんすうのとくしゅち、: Particular values of the Riemann zeta function)とは、数学におけるリーマンゼータ関数(英: Riemann zeta function)に整数を代入した際の値のことをいう。これはリーマンゼータ値(英: Riemann zeta value)とも呼ばれる[注釈 1]

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複素平面上のリーマンゼータ関数。点 s における色が ζ(s) の値を表しており、濃いほど 0 に近い。色調はその値の偏角を表しており、例えば正の実数は赤である。s = 1 における白い点はであり、実軸の負の部分および臨界線 Re s = 1/2 上の黒い点は零点である。
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ベルンハルト・リーマン

解説

要約
視点

ゼータ関数は複素解析に頻繁に登場する特殊関数であるが、解析的整数論においても重要な関数である。ゼータ関数は、実部が 1 より真に大きい複素数 s自然数 n に対して、

で定義される関数 ζ のことをいい[1]、例えば s = 2 とすると、

のような級数が提供される。特に、整数引数に対してゼータ関数がとる値についてはこの例も含めすべて実数値をもち、さらに数値計算に効率のよい公式が存在する。この記事では、これらの公式を値の表とともに列挙し、その微分と整数引数でのゼータ関数からなる級数も記述する。

ゼータ関数は、s = 1 における一位のを除き解析接続によって複素平面全体に拡張される。しかしながら、上の定義式は解析接続された s に対しては無効であり、直に計算を試みると対応する和が発散する。例えば、ゼータ関数において s = 1 のとき、

となるが、これを上の定義式で計算すると、

となって発散級数となる。以下に列挙するゼータ関数の特殊値は負の偶数に対する特殊値も含み、これは恒等的に ζ(s) = 0 であり、いわゆる自明な零点となる。

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自然数に対する特殊値

要約
視点

正の偶数に対する特殊値

1644年イタリアピエトロ・メンゴリイタリア語版ドイツ語版によって以下の問題が提起された。この問題は、解決に挑んだ数学者の多くがバーゼルの生まれであったことから、バーゼル問題と呼ばれる。

バーゼル問題  以下の級数:

は収束するか。収束するならばその値はいくつか。

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レオンハルト・オイラー

バーゼル問題は、スイスレオンハルト・オイラーによって初めて解決された。オイラーは、三角関数テイラー級数およびその無限乗積x2 の項の展開係数を比較することで、

となることから、

が成り立つことを示した。さらにオイラーの研究はバーゼル問題にとどまることはなく、より一般の場合の研究に努め、任意の自然数 n に対して、

が成り立つことも示した[2][3]。ただし、ここで B2n2n 番目のベルヌーイ数である。

この公式により、正の偶数に対する特殊値を容易く計算することができる。しかるに n = 1 から小さい順に n = 10 まで計算してみると、

となる。またその近似値は、以下の表に示す通りである。

さらに見る ζ (2n), 近似値 ...

この表からもわかるように、ゼータ関数は s の極限で ζ(s) 1 である。すなわち、

である。また、自然数 n に対して、

を満たすように anbn を定める。ただし、ここで anbn は任意の自然数 n に対して常に自然数をとるものとする。すると、このとき anbnn = 1 から n = 20 までの挙動は以下の表に示す通りである。

さらに見る n, an ...

さらに cn = bn/an と定めると、偶数に対する特殊値はより簡単に、

とかくことができる。するとこのとき、

なる漸化式が存在することがわかる。この漸化式は、ベルヌーイ数を効率的に求める漸化式に基づいている。また、特殊値の係数ではなく、ゼータ関数についての漸化式も存在する。余接関数の微分:

およびその部分分数分解による表現:

を用いれば、

が容易に導かれる[4]。ただし、ここで n > 1 である。

正の奇数に対する特殊値

ゼータ関数は Re s > 1 なる複素数 s に対して定義される関数であるが、その定義式に s = 1 を代入すると、

となって調和級数に一致する。調和級数は、古くにおいては収束すると考えられていたが、今日においては発散することが知られている。しかしこれはコーシーの主値は存在し、

である。ただし、ここで γオイラーの定数である[5]

また、正の偶数に対する特殊値はベルヌーイ数を用いる形で一般化されたが、正の奇数に対する特殊値は簡潔な形で表すことができないことが知られている。例えば、ゼータ関数に s = 3 を代入した実数 ζ(3)アペリーの定数として知られ、様々な積分表示や級数表示が発見されているものの、簡単な形で表すことができない。また ζ(3)無理数であることがわかっている。この主張をアペリーの定理という。また、正の偶数に対する特殊値が常に無理数となることはその一般化された公式を見れば一目瞭然である一方、正の奇数に対する特殊値がすべて無理数であるかどうかは現在もまだわかっていないが、すべて無理数ではないかと予想されている[6]。以下の表にその近似値を示す。

さらに見る ζ (2n + 1), 近似値 ...

アペリーの定数をはじめとした正の奇数に対する特殊値には様々な積分表示や級数表示が与えられており、それらを計算する場合はゼータ関数の定義式を利用するのではなく、別の収束速度の速い公式を利用することが多い。

ζ(3)

ζ(5)

ζ(2n + 1)

正の奇数 n に対して、

なる級数を定めるとき、ζ(3)ζ(5) で見られたような一連の級数は次の形で定式化される。

ただし、ここで AnBnCn および Dn は、任意の正の奇数 n に対して常に自然数をとるものとする。ここでの Bn はベルヌーイ数とは異なる。すると、このとき AnBnCn および Dnn = 3 から n = 19 までの挙動は以下の表に示す通りである。

さらに見る n, An ...

これらの整数はベルヌーイ数の和として表現することができる。任意の整数引数に対するゼータ関数の高速計算アルゴリズムは、アナトリー・カラツバ英語版によって与えられている[7][8][9]

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負の整数に対する特殊値

要約
視点

ゼータ関数の定義式は、

であったが、このままでは負の整数に対する特殊値の計算を実行することができない。しかしながらゼータ関数には、

なる複素平面全体で定義された関数が存在する。この積分を利用することで、任意の自然数 n に対して、

が成り立つことがわかる。

この公式を利用することで、負の整数に対する特殊値を計算することができる。一般に負の偶数に対しては、

が恒等的に成り立つ。これを自明な零点という。また負の奇数については n = 1 から小さい順に n = 29 まで計算してみると、

となる。特に ζ(1)ラマヌジャン総和法英語版に関連する[11]

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微分の特殊値

要約
視点

ゼータ関数の負の偶数での微分係数は、

である。これはゼータ関数の一様収束性から項別に微分すれば簡単に示すことができる。この公式を用いて特殊値を計算すると、

となる。またこれ以外にも、

なる特殊値が存在する。ただし、ここで Aグレイシャー・キンケリンの定数γ はオイラーの定数である。また、これらの特殊値の近似値は以下の表に示す通りである。

さらに見る ζ' (n), 近似値 ...
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脚注

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