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単鎖可変領域フラグメント

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単鎖可変領域フラグメント
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単鎖可変領域フラグメント(たんさかへんりょういきフラグメント、: single-chain variable fragmentscFv)は、免疫グロブリン重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域を、10~25アミノ酸程度の短いリンカーペプチドで繋いだ融合タンパク質である[1]。したがって、実際には抗体フラグメント英語版ではない。リンカーは通常、柔軟性のためにグリシンを、また溶解性のためにセリンまたはスレオニンを多く含み、VHN末端とVLC末端をつないだり、またはその逆の場合もある[2]。このタンパク質は、定常領域の除去とリンカーの導入にもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持している[3]。右の画像は、通常、この修正によって特異性が変化しないことを示している。

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単鎖可変領域フラグメント(scFv)の回転する3D構造。相補性決定領域(CDR)が強調表示されている。
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単鎖可変領域フラグメントの2つの考えられる構造。それぞれ、抗原結合部位の左側にはN末端が、右側にはC末端が見える。リンカーペプチドは矢印で示されている。

これらの分子は、ファージディスプレイを容易にするために作成された。ファージディスプレイは、抗原結合ドメイン英語版を単一のペプチドとして発現することが非常に便利である。別の方法として、ハイブリドーマに由来するサブクローン化された重鎖および軽鎖からscFvを直接作成することもできる。scFvには、フローサイトメトリー免疫組織化学人工的T細胞受容体(キメラ抗原受容体)の抗原結合ドメインなど、多くの用途がある。

哺乳類の細胞培養で作られることが多いモノクローナル抗体とは異なり、scFvは大腸菌などの細菌の細胞培養で作られることが多い[3]

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精製

単鎖可変領域フラグメントは、完全な抗体分子に見られる定常Fc領域を持たないため、共通の結合部位(プロテインGなど)を使用して抗体を精製することはできない。プロテインLはκ軽鎖(カッパ軽鎖)の可変領域と相互作用するため、これらのフラグメントはプロテインL英語版を使用して精製または固定化することがよくある。より一般的には、scFv分子のC末端に6つのヒスチジンタグを組み込み、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)を使用してそれらを精製する。ヒトVH3ドメインを含む一部のscFvも、プロテインA英語版によって捕捉される[4]

2価および3価のscFv

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2価(上)と3価(下)のscFvの構造、タンデム型(左)と2量体/3量体化型(右)の形式

2価(divalent or bivalent)の単鎖可変領域フラグメント(di-scFv、bi-scFv)は、2つのscFvを連結することで設計できる。2つのVH領域と2つのVL領域を持つ単一のペプチド鎖を生成することで、タンデム型scFvを得ることができる[5][6]。もう一つ考えられるものは、2つの可変領域を一緒に折りたたむには短すぎるリンカーペプチド(約5アミノ酸)を持つscFvを作成し、scFvを強制的に二量体化することである。この種類は二重特異性抗体(ダイアボディ、diabody)として知られている[7]。ダイアボディは、対応するscFvよりも解離定数が最大40倍低いことが示されており、これは標的に対する親和性が非常に高いことを意味している。その結果、ダイアボディ薬は、他の治療用抗体よりもはるかに少ない投与量で、生体内の腫瘍を高い特異性で標的にすることができる[8]。さらに短いリンカー(1個または2個のアミノ酸)は、三量体、いわゆるトリアボディ(triabody)やトリボディ(tribody)の形成につながる。四量体であるテトラボディ(Tetrabody)も作られている。それらは標的に対してダイアボディよりもさらに高い親和性を示す[9]

これらの形式はすべて、2つの異なる抗原に特異性を持つ可変フラグメントから構成でき、その場合、いずれも二重特異性抗体の一種である[10][11]。その中でも最も開発が進んでいるのが、二重特異性T細胞エンゲージャー英語版(BiTE抗体構築物)として知られている二重特異性タンデムdi-scFvである。

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事例

脚注

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