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古代ギリシア語の格変化

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古代ギリシア語の格変化古代ギリシア語において各種の文法的関係性の表現を担う格変化のこと。古代ギリシア語は屈折言語で、名詞形容詞代名詞指示詞などは格変化の語尾により文法的な関係性を表現する。古代ギリシア語には主格属格与格対格呼格の5つのがある。

要約
視点

主格

主格主語述語の表現に用いられる。

  • 主語ὁ παῖς παίζει、「子供が遊んでいる」。
  • 述語Κῦρος βασιλεὺς ἐγένετο、「キュロスは王になった」。
  • 感嘆Νήπιος、「ああ、ネーピオス!」。
  • 呼びかけὁ παῖς ἀκολούθει、「子供よ、私に付いてきなさい」。Ζεῦ πάτερ, ᾿Ηέλιός τε、「父ゼウスとヘリオスよ!」。φίλ' Αἴας, φίλοςΜενέλαε、「おお、愛しいアイアスよ愛しいメネラオスよ!」。

属格

属格の基本的な意味は「所有」だが、古代ギリシア語から消滅した奪格(ablative)の機能も併せもっている。

  • 名詞とともに
    • 血縁:Σωκράτης ὁ Σωφρονίσκου、「ソクラテス。ソフロニスコスの息子」。
    • 所有:ἡ οἰκία τοῦ πατρός、「父の家」。
    • 物質・材質:τεῖχος λίθου、「石の壁」。
    • 内容・中身:δέπας οἴνου、「ぶどう酒の盃」。
    • 値段:δοῦλος πέντε μνῶν、「5ムナー(古代ギリシアの通貨)の値段の付いた奴隷」。
    • 著者:Δημοσθένους λόγος、「デモステネスの議論」。
    • 原因:γραφὴ κλοπῆς、「窃盗による告発」。
    • 性質:πολίτου ἀρετή、「市民の美徳」。
    • 名称:᾿Ιλίου πτολίεθρον、「イリオン(トロイ)の町」。
  • 部分πότερος τῶν ἀδελφῶν;、「兄弟のうちの誰が?」。
  • 主語的表現ὁ φόβος τῶν πολεμίων、「敵が抱く恐怖心」。
  • 目的語的表現ὁ φόβος τῶν πολεμίων、「敵に対する恐怖心」。
  • 形容詞とともに
    • 所属・帰属:νεὼς τοῦ ᾿Απόλλωνος ἱερός、「アポロンに捧げられた神殿」。
    • 参加:μέτοχος τοῦ πόνου、「仕事に参加して」。
    • 能力:ἐγκρατὴς ἑαυτοῦ、「自分自身への制御力」。
    • 充足:πλέος εὐφροσύνης、「喜びに満ちて」。
    • 知識・記憶:ἔμπειρος τῶν ὁδῶν、「道をよく知っている(道の識者である)」。
    • 価値・値段:πλείστου ἄξιος、「多大な価値のある」。
  • 副詞とともにπέραν τοῦ ποταμοῦ、「川の対岸に」。πῶς ἔχεις δόξης;、「君はどんな意見を持っているか?」。
  • 動詞とともに
    • 参加:μετεῖχον τῆς ἑορτῆς、「彼らは祭りに参加していた」。πίνειν τοῦ οἴνου、「ぶどう酒を飲む」。
    • 利益:ἀπολαύειν τοῦ βίου、「生を享受する」。
    • 記憶・配慮:ἐπιλανθάνεσθαι τῶν φίλων、「友人たちのことを忘れる」。κήδεται ἑαυτοῦ、「自分自身に気を付ける」。
    • 接触・開始:λαμβάνειν τῆς χειρός、「手でつかむ」。ἄρχεσθαι τῆς παιδείας、「教育を始める」。
    • 願望・意図:ἐραν τῶν ἀδυνάτων、「不可能なことを要求する」。τυγχάνειν τοῦ σκοποῦ、「目標に達する」。
    • 支配・権力:ἐβασίλευε τῶν Περσῶν、「彼はペルシャ人たちを支配していた」。
    • 豊富:εὐπορεῖν χρημάτων、「多額のお金を所持する」。
    • 判断・告発:ἀσεβείας κρίνειν、「不信心から判断する」。
    • 売買:πρίασθαι 'ταλάντου、「1タラント単位で買う」(タラントは古代ギリシアの重量単位)。
    • 知覚:ἀκούω τῶν λόγων、「私は言葉を聞いている」。
    • κατά-の複合動詞:καταγελᾶν τίνος、「人をあざ笑う」。
    • その他の前置詞との複合動詞:ὑπεραλγῶ τῆς πατρίδος、「祖国に苦痛を感じる」。
  • 分離παύεσθαι μάχης、「戦闘を停止する」。
  • 欠如・欠落πόλις κενὴ ἀνδρῶν、「人がいない町」。
  • 比較νεώτερος σοῦ、「君よりも若い」。
  • 原因θαυμάζω σε τῆς σωφροσύνης、「私は君の節制を称賛する(私は節制により君を称賛する)」。
  • 感嘆φεῦ τοῦ ἀνδρός、「ああ、男よ!」。
  • 時間ἑκάστου ἔτους、「毎年」。
  • 空間: θέουσαι πεδίοιο、「平原を走って」。
  • 行為者: πρὸς πάντων ἐπονομαζόμενος、「世界中に呼ばれている」。
  • 絶対的属格: οὐδενὸς κωλύοντος、「誰もそれを妨げることなく」。

与格

与格間接目的語や、空間・時間の表現に用いられる。古代ギリシア語から消滅した奪格と地格(locative)の機能も併せもっている。

  • 間接目的語δώσω σοι τὰς πόλεις、「私は君に町を与えるだろう」。
  • 動詞とともに
    • 接近・近接:πλησιάζειν αὐτῷ、「彼に近づく」。
    • 怒り・いらだち・敵対心:πολεμεῖν τοῖς ᾿Αθηναίοις、「アテネ人たちと戦う」。
    • 同伴・追随:ἀκολουθεῖν τῷ βασιλεῖ、「王に追随する」。
    • 助力・手助け:βοηθεῖν τοῖς φίλοις、「友人たちを助ける」。
    • 統合・混合・関係:ὁμιλεῖν μοι、「私と交際する」。
    • 非人称表現:πρέπει μοι οὐκ εἴκειν、「降伏しないのが私には好都合だ」。
  • 形容詞とともに
    • 対等:τὰ αὐτὰ Κύρῳ ὅπλα、「キュロス王と同等の軍勢」。
    • 親切・敵対:ἐναντίος τῇ γνώμῃ、「その意見に反対して」。
    • 関連・共通:πράξεις κοιναὶ πᾶσιν、「全ての人々に共通とされた」。
  • 副詞とともにὁμοίως ἐκείνῳ、「あれと同じ」。
  • 前置詞表現ἐπιβουλεύειν τῷ δήμῳ、「民衆に対して陰謀をたくらむ」。
  • 名詞とともにτοῖς φίλοις βοήθεια、「友人たちへの助力」。
  • 利害関係πᾶς ἀνὴρ αὑτῷ πονεῖ、「全ての人は自分自身のために働く」。
  • 所有表現πολλοί μοι φίλοι εἰσίν、「私にはたくさんの友人がいる」。
  • 倫理βέβηκεν ἡμῖν ὁ ξένος、「もしその客が私たちの元へ行ったのならば」。
  • 行為者πάνθ' ἡμῖν πεποίηται、「全てが私たちの手によって作られている」。
  • 関係性τέθνηχ' ἡμῖν πάλαι、「私たちにとっては、彼の死後、長い年月が経った」。
  • 道具・手段ὁρῶμεν τοῖς ὀφθαλμοῖς、「彼らは両目で見ていた」。
  • 原因τελευτᾶν νόσῳ、「病気で死ぬ」。
  • 動機ἁμαρτάνομεν ἀγνοίᾳ、「私たちは無知から思い違いをしていた」。
  • 様態σιγῇ、「静かに」。
  • 視点・観点ὕστερος τῇ τάξει、「位置取りが最後の者(最後尾の者)」。
  • 程度πολλῷ ὕστερον、「かなり後になって」。
  • 場所(静止)Μαραθῶνι、「マラトンで」。
  • 場所(方角)πεδίῳ ἔπεσε、「彼は地面に倒れた」。
  • 時間τῇδε τῇ νυχτί、「今夜」。

対格

対格の主な用法は直接目的語、述語、空間・時間の表現などである。

  • 不定詞構文において不定詞の主語λέγει σε ἐλθεῖν、「彼は、君が来たと言っている」。
  • 直接目的語τύπτω τὸν δοῦλον、「私は奴隷を叩く」。γάμους ἑστιᾶν、「結婚式の祝宴を開催する」。
    • 現代の欧米語では自動詞を用いるケース:
      • 直接目的語を要求する動詞:πόλεμον ἐστράτευσαν、「彼らは戦争に参加した」。
      • 恩恵・損害:ὁ Σωκράτης οὐδένα ἠδίκησεν、「ソクラテスは誰に対しても不公平な態度をとらなかった」。
      • 逃げる・隠れる:φεύγειν τὸν πατέρα'、「父親から逃げる」。
      • 感情(恐れ、恥):εὐλαβοῦ ψόγο、「非難に気を付けなさい」。
  • 直接目的語(その他)
    • 語源的な関連性:μάχην ἐμάχοντο、「彼らは戦闘を戦っていた」。
    • 副詞的表現:μέγα ψεύδεται、「大きく嘘をついて」。
    • 動詞の行為の結果:ἕλκος οὐτάσαι、「傷を生じる」。
  • 直接目的語(対格が2つ)διδάσκω τοὺς παῖδας τὴν γραμματικήν、「私は子供たちに 文法を教えている」。
  • 直接目的語(述語的表現)ἔλαβε τοῦτο δῶρον、「彼はそれを 贈り物として受け取った」。
  • 関係性κεφαλὴν ἴκελος Διί、「頭がゼウスに似ている」。
  • 広がり
    • 空間的:πλεῖν θάλασσαν、「海を航海する」。
    • 時間的:ἔμεινεν ἡμέρας πέντε、「彼は5日間、滞在した」。
  • 副詞的表現τὴν ταχίστην最短のルートで」。τέλος、「ついに」。
  • 方角・方向ἧλθες ῎Αργος、「君はアルゴスにやって来た」。
  • 絶対的表現προσταχθὲν ἀναχωρῆσαι、「命令を却下されて」。

呼格

呼格は相手への呼びかけに用いられる。

  • 呼びかけὦ ἄνδρες ᾿Αθηναῖοι、「おお、アテネの人々よ!」。
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冠詞

さらに見る 格, 単数 ...

形容詞

形容詞の格変化は、男性・女性・中性の性ごとに、語尾が一致する名詞の格変化と同じになる。

規則変化

さらに見る タイプ, 性 ...

形容詞の比較級-τερος /α /ονと動形容詞-τέος /α /ονの格変化は規則変化・タイプIと同じ。

不規則変化

μέγας(「大きい」)とπολύς(「多い」)は不規則変化となり、格変化は次の通り。

さらに見る 数, 格 ...

名詞

要約
視点

第1格変化

さらに見る 格, タイプI・女性 ...
  • タイプIに含まれるのは、女性名詞のうちで、語尾-αの直前に子音ριεが来る名詞である(例:λύρα)。語尾-αが格変化全体に現れることから「純正アルファタイプ」と呼ばれる。
  • タイプIIに含まれるのは、女性の名詞のうちで、語尾-αの直前にσ, σσ, ττ, λλ, ξ, ψ, αιν, ειν, οινが来る名詞である(例:γλῶσσα)。単数の属格と与格で語尾-αが-ηに変わることから「非純正アルファタイプ」と呼ばれる。
  • それ以外の女性名詞はタイプIIIとなる(例:τιμή)。
  • タイプIVに含まれるのは、男性名詞のうちで、タイプIと同様の語幹をとる名詞である(例:νεανίας)。
  • それ以外の男性名詞はタイプVとなる(例:πολίτης)。タイプIVと同様に、主格で語尾が-ςとなり、属格は-ουとなる。
  • 複数は5タイプ全てで共通の格変化となる。
  • 5タイプ全てで、アクセントの位置は複数属格を除いて主格と同じ位置になる。複数属格はアクセントが最終音節(ultima)になり、この点が第2格変化の複数属格(例:λόγος、複数属格λόγων)との違いである。
  • 最後から2番目の音節(penult)が曲アクセントのケースでは、最終音節が長母音の格では鋭アクセントに変わる。同様に、最終音節が短母音の格では曲アクセントに変わる。
  • ホメロス文体、並びに、イオニア方言では、タイプIとタイプIVの単数で-ηが現れる(例:σοφίη)。複数属格では-άων, -έωνが、複数与格では-ῃσι, -ῃςが現れる。タイプVでは、主格に-α(例:ἱππότα)。タイプIVとタイプVでは単数属格に-αο, εω, -ωが現れる。
  • タイプIの単数属格と複数対格は同形となるため混乱しやすく、定冠詞で区別する。タイプIVとタイプVの単数属格は第2格変化の単数属格と同じになる。
  • タイプVでは呼格が-ηとなるものもある(例:ἀτρείδης)。
  • 母音の-α-を全ての格で保持する名詞もある(例:μνᾶ, -ᾶςχρόα, -ας)。母音の-η-を単数の全ての格で保持する名詞もある(例:χόρη, -ηςδέρη, -ηςἔρση, -ης)。
  • τόλμαἔρευναδίαιταはタイプIIとなる。

第2格変化

さらに見る 格, 男性・女性 ...
  • アクセントの位置は、最後から3番目の音節にアクセントがある場合(antepenult)を除き、全ての格で不変である。最後から3番目の音節にアクセントがある場合(antepenult)は、最終音節が長母音の場合に限り、最後から2番目の音節(penult)にアクセントが移る(例:ἄγγελος, ἀγγέλου)。
  • ホメロス文体、並びに、イオニア方言では複数与格に-οισιが現れる。

第3格変化

次の語尾となる。

さらに見る 単数, 複数 ...

シグマ(ς)タイプ

このタイプには男性名詞と女性名詞が含まれる。

さらに見る 数, 格 ...
  • 閉鎖音のタイプでは、閉鎖音子音と-ςの結びつき(単数の主格と呼格、複数の与格)が次のように融合する。
    • γ/κ/χ ς → -ξ
    • β/π/φ ς → -ψ
    • δ/τ/θ ς → -ς
具体例は次のようになる。φυλακ-ςφύλαξμαστιγ-ςμάστιξβηχ-ςβήξγυπ-ςγύψφλεβ-ςφλέψκατηλιφ-ςκατῆλιψἐσθητ-ςἐσθήςλαμπαδ-ςλαμπάςκορυθ-ςκόρυς
  • ντ語幹では、単数の主格・呼格と複数の与格では、-ςの前でντが脱落し、その代償延長として直前の母音が長母音化する。例:λυθεντ-ςλυθείςδιδοντ-ςδιδούςἱσταντ-ςἱστάςδεικνυντ-ςδεικνύς
  • 鼻音語幹では、-ςの前で鼻音が脱落する。例:ριν-ςρίς。その代償延長として、母音が長母音化する。例:ἑν-ςεἷς
  • 歯音語幹では、呼格でςが脱落する場合がある。例:παῖς、呼格παῖ
  • 1音節語幹のケースでは、単数の属格・与格でアクセントが最終音節(ultima)に置かれ、その他の格では第1音節になる。例:φλέψ、属格φλεβός、対格φλέβα。ただし、βάςでは属格がβάντοςὤνではὄντοςπᾶςでは複数属格がπάντωνπαῖςではπαίδωνとなる。
  • 歯音語幹のποδ-では、アッティカ方言で主格が変則的なποῦςとなる。複数与格はホメロス文体ではπόδεσσι、または、ποσσίとなる。
  • κτ語幹のνυκτ-とἀνακτ-ではτが脱落する。ρτ語幹のδαμαρτ-では主格でδάμαρとなる。
  • 中性名詞では、単数主格で語尾-ςが付かず、複数の主格・対格・呼格で語尾-αが付く。例えば、σῶμα, -ατοςは複数でσώματαとなる(単数主格では語尾-τが脱落する)。同様に、λυθέν, -έντοςは複数でλυθένταとなる。その他、γάλα, -ακτος(主格で語尾-κτが脱落)、ἓν, -ἑνόςεἷςの中性形。複数は無し)、πᾶν, παντός(主格で語尾-τが脱落)など。Φῶς, φωτόςπέρας, -ατοςκέρας, -ατοςなどもσῶμαと同じ格変化になる。


非シグマタイプ

このタイプには男性名詞と女性名詞が含まれる。

さらに見る 数, 格 ...
  • 語幹が母音交代するケースでは、主格の長母音(ρήτωρἡγεμών)が他の格では短母音化する(属格ρήτοροςἡγεμόνος)。ただし、アクセントが最終音節に置かれるケース(ἡγεμών)と分詞(λύων)では、呼格が主格と同形になる。
  • ντ語幹では、単数の主格・呼格でτが脱落する。
  • ντ語幹では、複数与格でντ子音を脱落する代わりにその代償延長として語幹が長母音化する(例:γεροντσιγέρουσι)。鼻音語幹では語幹のνが脱落する(例:ἀγωνσιἀγῶσι)。
  • 中性名詞では、単数の主格・呼格、複数の主格・対格・呼格で語幹が短母音となる(例:εὒδαιμον, -ονοςνέκταρ, -αρος)。
  • σωτήρは語幹が長母音のケースで、例外的に呼格がσῶτερとなる。

-υ語幹・-ευ語幹

このタイプには男性名詞・女性名詞・中性名詞が含まれる。

さらに見る 数, 格 ...
  • タイプIでは、εが脱落する格もある。
  • これ以外では、属格が-οςと-ωςのどちらかになる。これはアッティカ方言の特徴となっている。
  • タイプIIIでは、単数対格に語尾-αが現れる。
  • タイプIIとタイプIVの複数主格は、ε+εの母音融合を経たものである(例:γλυκέεςγλυκεῖς)。
  • タイプIIとタイプIVの複数では、対格が主格と同じになる。
  • 中性名詞は複数形の語尾-αが共通している。タイプIIではε+αが母音融合してηとなる。
  • 方言では、タイプIIIで語幹にηが現れるケースがある(例:属格βασιλῆος)。
  • δόρυ(中性)とγόνυσῶμαと同じ格変化となる(複数δόρατα。イオニア方言でδούρατα)。
  • Ζεύςは特殊な格変化となる(属格Διός、与格Διί、対格Δία、呼格Ζεῦ)。属格がΖηνός、与格がΖηνί、対格がΖῆναΖῆνとなるケースもある。

-ι語幹・-ει語幹

このタイプには男性名詞と女性名詞が含まれる。

さらに見る 単数, 複数 ...
  • タイプIIに属する中性名詞も若干ある。例:σίναπι, -εως
  • 方言では、タイプIIで、εを用いずにιを保持するケース(これはタイプIに似ており、πόλιςの例で、属格πόλιος、与格πόλι、複数主格πόλιες、属格πολίων、与格πόλισι、対格πόλιας)と、語幹のηを維持するケース (属格πόληος、与格πόληι、複数主格πόληες、対格πόληας)がある。後者では、単数対格の語尾は-απόληα)となる。
  • 方言では、οἶςὄϊς(属格ὄϊος、複数与格ὀΐεσσι, ὄεσσι)となるケースがある。

二重母音語幹

このタイプには男性名詞と女性名詞が含まれる。

さらに見る 単数, 複数 ...
  • 語幹の二重母音αυουが特徴となっている。
  • ホメロス文体では、長母音ηが現れてγραῦςγρηῦςとなる。
  • ホメロス文体では、βοῦςで複数与格がβόεσσι、対格がβόαςとなる。
  • ναῦς(格変化表の右端)には2種類の格変化があり、スラッシュ記号(/)の右側はイオニア方言、並びに、ホメロス文体である。

-ω語幹

このタイプには男性名詞と女性名詞が含まれる。

さらに見る 格, 男性 ...
  • *または、ἥρω
  • **または、ἥρῴ
  • ***または、ἥρως
  • ****または、ἥρῴν
  • このように、アッティカ方言の格変化をする場合もある。
  • εἰκώνἀηδών(語幹が-ν)もこれと同じ格変化になる(属格εἰκοῦς、対格εἰκώ;属格ἀηδοῦς、呼格ἀηδοῖ)。

-ς語幹

このタイプには男性名詞・女性名詞・中性名詞が含まれる。

さらに見る 数, 格 ...
  • 方言では、母音融合が起きないケースもある。表ではスラッシュ記号(/)の右側に記している。
  • ςは母音と母音の間で脱落するため、全ての格に現れるわけではなく、格が限られる。
  • 中性名詞では語幹母音にεγένεσι)とo(γένος)の交代が起きるケースがある。
  • 中性名詞の複数では主格・対格・呼格に語尾-αが現れ、母音融合を起こしてηとなる。
  • 複数対格のτριέρειςは複数主格の影響による。
  • 単数属格のγένουςは第2格変化の複数対格と同形で混乱しやすい。
  • 中性名詞のκέραςにはσῶμαと同じ格変化もある(単数属格κέρατος、複数主格κέρατα)。中性名詞には、語幹のαεに変わり、γένοςと同じ格変化となるものもある(例:οὗδας、-εος)。αが母音融合せずに残るものもある(例:γῆρας、-αος)。母音交代タイプの中性では、ホメロス文体で属格が-ευςとなるケース (イオニア方言の母音融合ε+ο)(例:θάρσευς)と、複数与格が-εσσιとなるケース(例:βέλεσσι)がある。
  • 男性名詞・女性名詞では、語幹が母音の場合、単数対格が-αとなる(ε+αの母音融合)。例として、ἐνδεής(対格ἐνδεᾶ)、ὑγιής(対格ὑγιᾶ)。同様に、中性のχρέοςκλέοςでは、複数主格と対格がχρέακλέαとなる。
  • 固有名詞では、語幹のεの後で二重の母音融合が起きるケースがある。以下はΠερικλεεσ-の例で、
    • 主格Περικλῆς、属格Περικλέους、与格Περικλεῖ、対格Περικλέα、呼格Περίκλεις
  • 男性の固有名詞では第1格変化の語尾となるケースがある。例:Σωκράτης、対格Σωκράτην、または、Σωκράτη
  • 叙事詩文体では、固有名詞の長母音ηが格変化全体で維持されるケースがある。例:῾Ηρακλῆς、属格῾Ηρακλῆος
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代名詞

要約
視点

人称代名詞

強勢形と非強勢形をスラッシュ記号(/)で区別する。カッコ内は方言形。

さらに見る 数, 格 ...
  • 強勢形と非強勢形の区別があるのは、単数、及び、3人称複数与格である。

再帰代名詞

  • 1人称は単数でἐμαυτοῦβίοςτιμήと同じ)、複数でἡμῶν αὐτῶναὐτόςの変化形を付ける)の形もある。
  • 2人称単数にはσεαυτοῦ、または、σαυτοῦの形もある。格変化は上記の1人称単数と同じ。
  • 直前の「人称代名詞」節の3人称はアッティカ方言では再帰の間接目的語(主文の主語を受ける)として用いられる。非再帰の用法には、主格でοὖτος、または、ἐκεῖνος(単数・複数とも)、その他の格ではαὐτοῦを用いる。
  • 3人称単数の直接目的語にはἑαυτοῦ、または、αὑτοῦの形もあり、格変化は1人称のἐμαυτοῦと同じだが、中性形はἑαυτό、または、αὑτόとなる。3人称複数には以下の3つがある。1:ἑαυτῶν, ἑαυτοῖς、2:αυτῶν, αυτοῖς、3:σφῶν αυτῶν
さらに見る 格, 単数 ...

所有代名詞

  • 非再帰・非強勢形:1人称と2人称は人称代名詞の属格と同じ。3人称はαὐτόςの属格と同じ。
  • 非再帰・強勢形は次の通り。1人称単数:ἐμός /ή /όν、2人称単数:σός /ή /όν、1人称複数:ἡμέτερος /α /ον、2人称複数:ὑμέτερος /α /ον。3人称(単数・複数)はοὗτος、または、ἐκεῖνοςの属格を用いる。
  • 再帰・非強勢形:1人称と2人称は人称代名詞の属格と同じ。3人称は、単数ではἑαυτοῦ、複数ではἑαυτῶν、または、σφέτερος /α /ονを用いる。
  • 再帰・強勢形は次の通り。1人称単数:ἐμαυτοῦ、2人称単数:σεαυτοῦ、3人称単数:ἑαυτοῦ、1人称複数:ἡμῶν αὐτῶν、または、ἡμέτερος αὐτῶν、2人称複数:ὑμῶν αὐτῶν、または、ὑμέτερος αὐτῶν、3人称複数:ἑαυτῶνσφῶν αὐτῶν、または、σφέτερος αὐτῶν

疑問代名詞・不定代名詞

  • 疑問代名詞τίς, τί(「何、誰」)、並びに、これと同形の不定代名詞(ただし、前接辞として)の格変化は、男性形ではρίς, ρινόςと、中性形ではἕν, ἑνόςと、それぞれ同じになる。不定代名詞・中性形の主格と対格はἄτταの形もある。

指示代名詞

  • 指示代名詞ὅδε, ἥδε, τόδε(「これ、この」)の格変化は定冠詞の格変化形に-δεを付ける。
  • 指示代名詞οὗτος, αὕτη, τοῦτο(「それ、その」)の格変化は次の表の通り[3]
さらに見る 数, 格 ...

関係代名詞

関係代名詞ὅς, ἥ, ὅの格変化は形容詞の規則変化・タイプIIδῆλος /η /ονと同じとなり、必ず有気記号を付ける。

相互代名詞

相互代名詞ἀλλήλωνの格変化は形容詞の規則変化・タイプIIδῆλος /η /ονの複数形と同じ。中性の複数対格はἄλληλαとなる。

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脚注

参考文献

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