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呉音

日本語における漢字の音読みの歴史的分類 ウィキペディアから

呉音
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呉音(ごおん)とは、日本漢字音(音読み)の一つ。建康(今の南京市)付近の漢字音とも言われ、7-8世紀に漢音長安付近の音韻)が伝わるより前にすでに日本に定着していた漢字音をいう。中国語中古音の特徴を伝えている。

一般に、呉音は仏教用語をはじめ「歴史の古い言葉」に使われる。慣用的に呉音ばかり使う字(未〔ミ〕、領〔リョウ〕等)、漢音ばかり使う字(健〔ケン〕、軽〔ケイ〕等)も少なくないが、基本的には両者は使用される熟語により使い分ける等の方法により混用されている。

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総説

要約
視点

特徴

呉音は雑多なものを含んでいると考えられ、漢音ほどの整った体系を備えていないが、以下のような特徴がある。

  • 頭子音の清濁の対立構造を反映し、清音濁音を区別している。
  • 頭子音(声母)の鼻音 /n/, /m/ については、漢音がダ行バ行で伝えられたものが多いのに対し、ナ行マ行のまま伝えられている。
  • 末子音(韻尾)、とくに /ŋ/ を表す規則が一定していない。呉音でも -ウ や -イ が添えられることが多いが、公(ク)のように省略されているものもある。また特定の熟語に固定化されたものではあるが、双六(スロク)のようにガ行音を充てたものもいくらか見受けられる[注 1]
  • /t/ の末子音を持つ入声には -チ が使われることが多い。漢音では -ツ が使われるところである。
  • 切韻の音韻体系のうち、等呼の違いを一等韻にはア段音を使い、二等韻にはエ段音を使うことで区別している。漢音では両者ともア段音として区別していない。

歴史

漢音を学び持ち帰る以前にすでに日本に定着していた漢字音であり、いつから導入されたものかは明確ではない[注 2]。雑多なものを含むため、様々な経路での導入が想定される。仏教用語などの呉音は建康(今の南京市)から百済経由で伝わったとされるものがあり、対馬音や百済音といった別名に表れている(「呼称について」に後述)。

呉音は仏教用語や律令用語でよく使われ、漢音導入後も駆逐されず、現在にいたるまで漢音と併用して使われている。例えば『古事記』における日本語の人名は、呉音と訓読みで当て字されており[注 3]、『古事記』の振り仮名万葉仮名には呉音が使われている。

呼称について

呉音しか漢字音がない時代には呉音という名称はなく、後に漢音が導入されて以降につけられた名称(レトロニム)である。かなり定着していたことから古くは和音(やまとごえ・わおん)と呼ばれ、平安時代中期以降、呉音と呼ばれるようになったが、これらの語は漢音の普及を推進する側からの蔑称であったらしい。中国の唐代、首都長安ではその地域の音を秦音と呼び、それ以外の地域の音、特に長江以南の南京を始めとする音を「呉音」とか「呉楚之音」と呼んでいた。帰国した留学生たちが、これにもとづいて長安の音を正統とし、日本に以前から定着していた音を呉音と呼んだものと考えられる。

また対馬音(つしまごえ・つしまおん)・百済音(くだらごえ・くだらおん)という名称もあるが、欽明天皇の時、百済の尼僧、法明対馬に来て呉音で維摩経を読んで仏教を伝えたという伝承によるものである。

音のあいまいさについて

常用字でない漢字音について、漢音はその認定が中国の韻書などの反切資料を中心に行われるのに対して、呉音は日本に古くから伝わる仏典資料や律令などの歴史的史料が中心になるため、その認定が難しい部分があり、各漢和字典ごとに異なっている場合が多い。

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漢音と呉音の異なる字のうち、ほんの一例を以下に掲載する。対応が把握しやすいように字音仮名遣いを使って表示した。 前述のとおり、呉音にはあいまいな部分もあり、以下の例も、これが絶対というものではない。

“分類”は厳密さに欠けるものではあるが、参考までに添えた。 「漢音 / 呉音」の形で示している。 * は「いろいろ」というほどの意味。

頭子音のみ異なる例

さらに見る 分類, 清音 / 濁音 ...

母音の異なる例

頭子音も同時に異なるものも含む。

さらに見る 分類, -i / -e ...
さらに見る 分類, -i- / -o- ...
さらに見る 分類, -e- / -ya- ...
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脚注

関連項目

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