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西夏文字

西夏王朝の初代皇帝の時代に制定され、タングート人の話す西夏語に用いる表語文字 ウィキペディアから

西夏文字
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西夏文字(せいかもじ、英語: Tangut script)は、西夏王朝1032年1227年)初代皇帝李元昊の時代に制定された、タングート人言語である西夏語を表記するための文字

概要 西夏文字, 類型: ...
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スティーヴン・ウートン・ブッシェル英語版によって書かれた、漢字と西夏文字37文字の対照表
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「人」の意味を持つ西夏文字
「水」と「土」の意味を持つ文字(左)をそれぞれ組み合わせ、「泥」の意味の文字(右)を作る。
「足の指」(左)と「手の指」(右)の西夏文字。それぞれが、同じ要素(部品)を有する。

19世紀フランスの東洋学者・ドゥベリア(Devéria, Gabriel)により、文字であることが判明する。長らく未解読であったが、20世紀に入り、 ロシアニコライ・ネフスキー日本西田龍雄[1]によって、1960年代に解読がなされた。

漢字と、それを作った漢族を強く意識して作成されており、中国人を意味する「漢人」に当たる文字は「小偏に虫」という差別的な構成で表記される。

漢字検索、表記ソフトウェアの『今昔文字鏡』およびUnicodeに登録されており、文章等の電子化が可能となっている。

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体系

6,000文字ほどの文字数を持ち[2]、冠や偏・旁等の組み合わせで表記するなど、漢字に似た構造を持つ。基本的に一字一音節である。

漢字とは異なり象形文字起源ではないため、700以上ある[3]各構成要素がどのような起源で作られたのかは未だに定かではなく、要素の表す意味が全て解明されている訳ではない。字全体での意味はわかっていても、なぜその要素を使用しているのか不明の文字も多い。西夏文字は漢字と同様部首により分類されることがあるが、部首分類には字書間で統一された体系がなくまちまちであり、Unicodeにおける配列も部首順となっているが、Unicodeにおける部首分類も一例にすぎない。

契丹文字の一部の字形と近い要素も存在するが、関連は明らかにされていない。

特徴

漢字の楷書と同じく、毛筆による筆記に適した、直線と曲げの多い筆画を用いている。毛筆で記す場合には、とめ、はらいなどの筆法も使用される。

最も画数の少ない西夏文字でも、4画あり、画像に示した「」の意味を持つもの(𗢨)はその一つである。一方画数の最も多いものでも、二十数画となっている。

単一の要素で成立している文字(前述のように象形文字ではなく、また指事文字でもない)は少なく、複数の要素の組み合わせで構成されている文字が大部分を占め、その中でも六書で言うところの「会意」、即ち複数の要素の意味を合成している文字が多く、「形声」即ち意符と音符から成っている文字は比較的少ない。以下に示すのは会意の例である。

例)「𘨝(鉄冠)」に「𗉖(細い)」で「𘖧(針)」、「𘡩(木冠)」に「𗉖(細い)」で「𗚶(とげ)」等。

また、(西夏人の思想で)近い概念の文字には近い字形が使用される。

例)「𗥦(頭)」の旁を「𗪘(先)」の旁に置き換えて「𗪟(始)」等。

漢字を翻訳したのではなく、別の思想体系で造字されているため、部首のカテゴリや総数は漢字とは異なる。また、ある意味の字が漢字とは別の部首に属す場合も多い。

例)「鐘」は漢字では金偏だが、西夏文字では音偏(𗙘)。

また、漢字にはない意味を表す部首、例えば否定を表す偏や動詞化を表す冠などもある。否定を表す構成要素には2種類あり、それぞれ「不」の偏を加える「関係否定字」と、「無」の旁を加える「存在否定字」がある。

例1) 「𘂆(小)」に「𗅋(不)」の偏(𘠐)を加え「𗄳(大)」(関係否定字)。
例2) 「𘔺(精気)」に「𗤋(無)」の旁(𘣩)を加え「𘔲(屍)」(存在否定字)。

漢字では象形文字で表されるような基本的な語や、数を表す語までもが、西夏文字では画数が多かったり複数の要素から成ったりしていることが多い。

例) 𗋽(水)、𗝠(木)、𗼱(土)、𘈩(一)、𗍫(二)、𘕕(三)

西夏文字に対する踊り字としては、「𖿠」(Unicode:16FE0、漢字の記号及び句読点のブロックに収録)が用いられたが、印刷文献には用いられず手書きの場合にのみ用いられた。

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歴史

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西夏文石幢英語版の柱に刻まれた西夏文字の文。日付は中国語で書かれており、大明弘治15年(西暦1502年)とある。西夏が滅んでから300年がたった後も、西夏語を使う人が存在した証拠とされている。
  • 1036年大慶元年)に公布されたとされる。皇帝が野利仁栄に命じて作らせたとされ、およそ6,000文字がほぼ一斉に公布されたと思われる。
  • 1227年宝義二年)に西夏王朝は滅亡するが、西夏文字はその後も一部で使用され続けた。最も新しい使用例としては、弘治十五年(1502年)の記年のある西夏文字が記された石幢(西夏文石幢英語版)があり、西夏滅亡後300年近くたってもまだ西夏文字や西夏語が使われていたことが知られる。

電子化

要約
視点

漢字検索、表記ソフトウェアの『今昔文字鏡』が独自に日本語の漢字領域で使うためのフォントを作成、提供している。

2016年6月に決定のUnicode 9.0 において、追加多言語面の U+17000 - U+187EC(6125文字) に西夏文字が、U+18800 - U+18AF2 に西夏文字の要素が追加された[4]。Unicode 11.0 では西夏文字5文字が、Unicode 12.0 では西夏文字6文字が、Unicode 13.0 では西夏文字9文字がU+187ECより後ろのコードポイントに追加され、現在Unicodeに収録されている西夏文字の総数は6145文字となっている。Unicode 13.0での追加分9文字に関しては、西夏文字の要素について、従来区別がないと考えられてきた「𘤊(ノメメ)」と「𘫽(くくノ)」の意味的な区別がある(ミニマルペア。例えば𘜶(右側は「𘫽(くくノ)」、意味は「大きい」)と𘴈(右側は「𘤊(ノメメ)」、意味は「雁」))ことが2018年頃の研究で判明した[5]などの理由で、西夏文字補助のブロックに追加されている。

Unicodeの西夏文字が表示可能なフォントは下記のフォントがある。

西夏文字の入力法も幾つか開発されており、夏漢字典の番号や四角号碼(漢字の四角号碼とは仕様が若干異なる。四角号碼#西夏文字で使用する四角号碼参照)に基づくもの[6]、発音に基づくもの[7]倉頡輸入法のように部品に分解して入力するもの[8]などがある。

Unicodeの以下の領域に次の文字(西夏文字6145文字+西夏文字構成要素774文字)が収録されている。

さらに見る U+, A ...
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画像

脚注

関連項目

外部リンク

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