トップQs
タイムライン
チャット
視点

国家行政評議会

ミャンマー国家最高機関 ウィキペディアから

国家行政評議会
Remove ads

国家行政評議会(こっかぎょうせいひょうぎかい、英語: State Administration Councilビルマ語: နိုင်ငံတော်စီမံအုပ်ချုပ်ရေးကောင်စီ、略称: SACあるいはနစက)は、2021年ミャンマークーデター以降、非常事態宣言が解除された2025年7月31日まで継続したミャンマーにおける国家最高指導機関。日本語における名称は確定しておらず、行政評議会[1]連邦行政評議会[2]国家統治評議会[3]とも呼ばれる。

概要 国家行政評議会 နိုင်ငံတော်စီမံအုပ်ချုပ်ရေးကောင်စီState Administration Council, 役職 ...
Remove ads

概要

要約
視点

設立

Thumb
ミンアウンフライン

2021年2月1日に実行されたクーデターによりミャンマー軍(国軍)が事実上の立法、行政、司法の三権を掌握した翌日の2月2日に設立。3月30日までに19人のメンバーで構成され、その内訳は国軍から9人、連邦団結発展党(USDP)から2人、その他民族政党関係者、政党関係者、文民から構成されていた。USDPの2人はシャン族パラウン族、政党関係者は国民民主連盟(NLD)を離党した国民民主勢力(NDF)関係者2人で、反スーチー・NLD的でありながらも、多様性に配慮している姿勢が見られた[4][5][6][7]

同年8月1日、SACは「命令・第152/2021号」を発令し、SAC管理運営委員会を再編してミャンマー連邦共和国暫定政府(内閣)が発足し[8]、国軍総司令官、SAC議長のミンアウンフラインが首相に、国軍副司令官、SAC副議長のソーウィン英語版が副首相に就任した。メンバーはテインセイン政権時代の閣僚やNLD政権時代の事務次官が多く、省庁は22から29に拡大された[4]

正当化根拠

国軍は、ミャンマー連邦共和国憲法[9]第417条および第418条に規定されている国家緊急事態宣言を権力の正当化根拠として主張している[注釈 1]。すなわち、(1)国軍の独自調査によれば、2020年総選挙の有権者名簿には、1000万票分以上もの不備・不正がある[10]、(2)国軍はこの問題の解決に向けて関係各所にさまざまな働きかけをし、新議会の招集の延期を求めてきた、(3)それにもかかわらず、スーチーらが新たな議会を招集して新政府を発足させようとしたことは、非常事態の要件となる「国家主権を不当な手段によって奪取しようとすること」(憲法第417条)に当たる、(4)したがって、やむをえず憲法にもとづいて非常事態を宣言し、国家運営の責務を担うにいたった、というものである[11]。この国家緊急事態宣言の有効期間は1年で、最長6か月の延長を2回まで行えると規定されており(417条、421条)、実際、2022年の1月末と7月末に延長された[12]。憲法の規定ではこれ以上の延長はできないはずだったが、その後もなし崩し的に延長が繰り返され、結局、国家緊急事態宣言が完全に解除されたのは、2025年7月31日だった[13]

閉鎖的な意思決定

2021年には全員参加のSAC会議が18回開催され、特にクーデター直後は毎週開催されていたが、6月下旬からの2か月間コロナ禍のせいでまったく開催されず、代わりにSACの軍人メンバーだけから構成される「COVID-19予防・抑制・治療調整会議」が頻繁に開催されるようになった[4]。結局、SAC会議は、2022年に9回、2023年には4回しか開催されなかった。同様に、内閣閣議も2021年は4回(5か月間)、2022年は9回、2023年に4回と次第に低調になっていった。これは、タンシュエの外遊時を除いて、評議会および内閣の閣議が定期的に開催されていた国家法秩序回復評議会(SLORC)/国家平和発展評議会(SPDC)時代とは対照的だった[注釈 2][14][15]。また、SACの指導者が軍内の確立された標準作戦手順(SOP)を遵守しない、命令や指示を頻繁に出しているとも指摘されている[16]

地方行政の支配強化

SACは連邦政府はもとより、地方行政に対する支配も強化した。クーデター直後の2月3日、地方域/州、件、郡区および自治区、自治管区に、主に文民から構成されるSACの下部組織・行政評議会を設置し、8月1日には地方域/州の行政評議会は地方域/州政府と名称を変更し、首長の名称も議長から首相へ変更された。同年5月5日には、地方行政を担う重要部局で、NLD政権時代に連邦内閣府省に移管された内務省総務局(General Administration Department: GAD)が、再び内務省管轄下に戻された[注釈 3][4]

また2022年4月30日には、全国の行政区画の大幅な再編を実施し、これにより県の総数が75から121へ大幅に増加した[17]。これは、県・郡区の長や職員はGADからの派遣官僚である一方(288条)、小区、村レベルの行政はコミュニティの直接選挙によって選出される長に委ねられるところ(289条)[注釈 4]、県の数を増やしてその支配強化を企図したものと解される[18]

頻繁な人事異動

Thumb
ソーウィン

2023年2月1日、8月2日、9月25日に大規模な人事異動を実施している[19]

2月1日の人事異動では、新しい政党登録法に異論を述べた文民メンバーの多くが解任された。また内閣改造も同時に行われ、ソーウィンだけに限られていた副首相職が大幅に拡張され、国防相、内務相、運輸・通信相、計画・財務相がそれぞれ副首相を兼任することになった。特にティンアウンサン英語版国防相、ミャトゥンウー英語版運輸・通信相はSACのメンバーでもあり、この人事はソーウィンの権力を削ぐものと解された[20]

しかし8月2日の人事異動の後、SACのメンバーだったソートゥッ英語版モーミントゥン英語版が汚職の容疑で逮捕・解任され、それぞれ懲役5年、終身刑の刑を受けた。代わりにSAC入りしたのは、国軍序列ナンバー3のマウンマウンエイ英語版と、ミャンマー経済公社(MEC)英語版会長のニョーソー英語版だった[20]

なお、2024年4月にはヘンリーヴァンティウ副大統領が罷免、7月には大統領臨時代理のミンスエが病気療養に入り(2025年8月7日死去)、既に国軍総司令官、SAC議長、首相を兼任していたミンアウンフラインが大統領臨時代理も兼任することになった[21]

解散

2025年7月31日に国軍が非常事態宣言を解除し、SACは新たに発足した国家安全保障・平和委員会英語版(State Security and Peace Commission:SSPC)に置き換わった。議長は引き続きミンアウンフラインが務めている[13]

Remove ads

補助機関

  • 国家行政評議会議長諮問委員会(The Advisory Board to the State Administration Council’s Chairman)- 2021年2月18日設立。タントゥンウー(Than Tun Oo)が委員長を務め、民間人が7人含まれていた。委員会の役割は、SACに上程する諮問書を事前に審査することで、タントゥンウーが承認しなければ、その諮問書はSACに上程されなかった[16]
  • 国家行政評議会中央諮問委員会(The Central Advisory Board to the State Administration Council) - 2023年2月1日設立。元海軍将校のトゥンアウンミン(Tun Aung Myint)が委員長を務め、新政党登録法に反対して解任された元SACメンバーが含まれていた。ただし、役職は与えられず、実質、内容無実な組織だったと推測される[16]
  • 国軍総司令官諮問委員会(The Advisory Board for the MAF’s Commander in Chief)[16]
  • 国家連帯和平交渉委員会(National Solidarity and Peace-Making Negotiation Committee:NSPNC) - 和平問題に関する諮問機関および執行機関。2023年9月までミンアウンフライン自ら議長を務めていた。しかし、この組織も内容無実で、1027作戦の敗北の後に三兄弟同盟との交渉役を担ったのは、ミンアウンフラインの側近モーミンスウェ(Moe Myint Swe)だった[16][22]
Remove ads

メンバー

メンバー

さらに見る No., 名前 ...

元メンバー

さらに見る 名前, 所属 ...
Remove ads

脚注

関連項目

Loading related searches...

Wikiwand - on

Seamless Wikipedia browsing. On steroids.

Remove ads