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尿沈渣
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尿沈渣(にょうちんさ、(英)urine sediment、urinary sediment)とは、尿を遠心し、尿中の細胞、円柱、結晶などの有形成分を顕微鏡で観察する臨床検査である。
尿沈渣
尿沈渣は、患者への侵襲なく腎・尿路の詳細な情報が得られ、「針のいらない腎生検」とも言われるが、人間の鏡検による、手間と熟練を要する検査である。また、採取後時間が経過すると円柱が崩壊し細菌が増殖する等の変化がみられるので採取後速やかに(1、2時間以内)検査する必要があるため、外部に検査を委託するのは難しく、採取した施設内でリアルタイムに検査を実施する必要がある。しかし、これらの欠点にかかわらず、古典的な検査である尿沈渣は、今日においても、腎・尿路の病変の鑑別および評価に極めて重要であり、広く用いられている。

尿沈渣の基準値
赤血球
- 尿沈渣の赤血球は、大きさ6 - 8μmで淡黄色、中央が凹んだ円盤状である。
- 健常人では男女とも4個/HPF以下である。尿沈渣で赤血球が5個/HPF以上を血尿と定義する[3]。
- 尿沈渣検査では、赤血球の形態学的特徴から、糸球体型血尿と非糸球体型血尿に分類する。
白血球・大食細胞
- 沈渣中の白血球は、通常、10 - 15μm程度で球形であることが多いが様々な変化が見られる。
- 健常人では1/HPF以下であり、1 - 4,5/HPFは境界値、5,6/HPF以上は要精検とされている。(女性での外陰部からの汚染には注意を要する。)
- 尿中白血球の大部分(95%)は好中球であるが、病態により、好酸球、リンパ球、単球、が増加する場合がある。
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上皮細胞
要約
視点

- 尿路は、上流から、下流へ、以下の上皮細胞に被覆されている。
- 腎実質の尿細管上皮細胞
- 腎盂・尿管・膀胱・尿道前立腺部の尿路上皮(移行上皮)細胞
- 尿路に発生する悪性腫瘍の大部分は尿路上皮由来である。
- 尿道の一部(および周辺臓器)の円柱上皮細胞
- 前立腺上皮細胞、精嚢上皮細胞、子宮頸部上皮細胞、子宮内膜上皮細胞、腸上皮細胞、などが円柱上皮細胞として認められることがある。
- 外尿道口(および、外陰部・膣)の扁平上皮細胞
- 健常尿では少数の扁平上皮細胞のみがみられるが、尿的状態では尿路各部位の細胞が尿中に出現する。
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円柱
- 通常、疾患に伴って尿中に出現する円柱状の構造物。腎の遠位尿細管から集合管の管腔内で形成される。
- 尿中蛋白濃度上昇、尿濃縮、pH低下、流速低下、等をきっかけに、Tamm-Horsfallムコ蛋白[※ 2]が網状の構造物を作り、そこに有形成分が付着したものが剥離して尿中に出現すると考えられている。
- 健常人でも硝子円柱が少数みられることがあるが、円柱は基本的に病的な所見である。
- 円柱の種類や量は疾患の種類や重篤度に関連する。


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結晶
要約
視点
尿路結石の成分を推定するのに尿沈渣の結晶が参考にされる[6]。ただし、結石成分と尿沈渣が一致しないこともある。
なお、尿を保存していると赤褐色の尿酸塩やリン酸塩の析出が見られることがある(特に冬季)。病的意義はないが、沈渣観察の障害となるため、加温して溶解してから沈渣を作成する必要がある。
健常人でみられる結晶
病的な結晶
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粘糸・精子
細菌・原虫・寄生虫・その他
尿沈渣の染色
尿沈渣検査は無染色での鏡検が原則ではあるが、多くの施設では、細胞や円柱の鑑別を容易にするため、染色液を使用している。代表的なものがステルンハイマー(Sternheimer)染色である。超生体染色(細胞を固定せずに染色)であり、生きた細胞は染色されず、死んだ細胞が濃染する。一般的に、細胞はピンク~赤で核は青に染まる。硝子円柱は青色、その他の円柱は封入物による。染まらないものは細胞・円柱以外の可能性がある。染色液の欠点として、赤血球が溶血することがある。
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尿中有形成分分析(尿沈渣フローサイトメトリー法)
尿沈渣は遠心を含む煩雑な操作が必要であるが、遠心操作なしにフローサイトメトリー原理[※ 5]により尿を直接検査する方法もある。保険点数表では「尿沈渣(フローサイトメトリー法)」とされているが、その検査機器は尿中有形成分分析装置と呼ぶのが一般的である[※ 6]。尿中有形成分分析は、精度的には鏡検法の代替手段とはならないが、マンパワーを節約するため、スクリーニングとして尿中有形成分分析を行い、それで異常が疑われた場合のみ、鏡検法で尿沈渣を実施する施設も多い。
報告可能な項目は機器ベンダ/装置により異なる。
基準値も全国で標準化されたものはないが、シスメックス社のUF-100の基準値(上限値)を以下の表に示す [9]。
なお、有形成分分析の定量値の単位は /μLであるが、/HPFに換算[※ 7]して報告している場合もある。
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脚注
- HPFとは、high power fieldの略で、「顕微鏡400倍で観察した一視野の中に」を意味する。「一視野」は、無遠心尿では、およそ、0.45 μLに相当する。
- Tamm-Horsfallムコ蛋白は遠位尿細管上皮細胞で産生され、尿中に分泌される糖蛋白。健常人尿の主要な蛋白
- 女児の尿沈渣で精子が認められた場合、検体取り違えの可能性、性的虐待の可能性、等を考えて、慎重に対処する必要がある。
- カテーテル留置期間が7から10日で患者の50%に細菌尿がみられる。30日以上の留置では全患者に細菌尿がみられる。
- フローサイトメトリーでは、細胞等の成分を蛍光色素で染色し、狭い通路を通過させ、蛍光や散乱光を計測して成分を同定・計数する。
- 尿中有形成分分析装置には、フローサイトメトリー法以外に、画像認識によるものも存在する。ただし、円柱の詳細な分類等は保存画像を人間が確認することによる。
- 1 HPFは0.45 μLの無遠心尿に該当するはずであるが、成分により、若干ずれが生じる場合がある。「尿沈渣の視野容量について ー理論値と実際値ー」. 一柳好江. Sysmex Journal 2007;8(2):1-7. (PDF)
出典
外部リンク
関連項目
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