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行動障害
攻撃的他害・自己破壊的行動を表出し、それを繰り返す精神障害 ウィキペディアから
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行動障害(こうどうしょうがい、英語: Emotional and behavioral disorders, EBD)とは、主に認知症患者や知的障害者が併発させる、飛び出しを含む自傷行動、殴打や噛みつき、物壊、異食、多動、何時間もの号泣や大声、弄便など不潔行為など周囲の者の生活に危害を及ぼす行動等をする他害、特定のモノや習慣に異常な執着などを示す障害[1][2][3][4][5]。感情・行動障害とも言われる[6]。これらの行動が著しく高い頻度と強度で生じており、処方を行なっても改善が見られず、家庭での養育が困難なモノを強度行動障害と言われる[1][4]。強度行動障害は特に、中学生となった思春期の頃に自閉スペクトラム症(ASD。自閉症、アスペルガー症候群)を伴う重知的障害者が併発する傾向がある[4]。
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概要
医学的な診断名である「行動障害」とは異なり、「強度行動障害」とは行政上に特別な支援を要する深刻な行動障害者のケースを分類するために用いられる用語である。強度行動障害に該当する場合、異食、睡眠の乱れ、物品破壊、過度なこだわり、他害、自傷、多動などの行動が著しく高頻度で現れ、本人や周囲の生活に重大な支障を及ぼす。強度行動障害は、重度または最重度の知的障害や自閉スペクトラム症を有する者に多く見られ、感覚過敏やコミュニケーション困難に加え、環境との不適合や生活上の見通しの欠如により強い不安が生じ、それが行動の問題を誘発するとされる[7]。
「強度行動傷害」の概念は1988年、行動障害児(者)研究会代表の飯田雅子らによって提唱されたもので、「家庭で通常の育て方をし、かなりの養育努力があっても著しい処遇困難が持続している」者に対して、特別な配慮と支援の必要性があるとの認識に基づいている[8][9]。「強度行動障害」は医学的な診断名ではなく、その人の行動の状態を分類するための行政上の用語であり、自傷行為、他害行為、過度なこだわり、物品の破壊、睡眠障害、異食、多動など、本人や周囲の生活に著しい支障を及ぼす行動が高頻度で現れ、通常の支援では対応が困難なため、特別な配慮や支援が求められる状態を指す。[10]。
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判定基準
要約
視点
厚生労働省が定めた12の「行動関連項目」に対し、各項目を0〜2点で評価し、合計が10点以上となった場合、行動援護事業、重度訪問介護、重度障害者等包括支援の対象となる。過去半年以上にわたりその行動が継続している場合に実施され、評価は市町村や医師、支援者が行う[11]。
また、以下の「強度行動障害判定基準」の合計点が20点以上となる場合、障害児入所施設における強度行動障害児支援加算の対象となる。
このほかに、国際的に使用されている指標として、ABC(Aberrant Behavior Checklist、日本語版はABC-J)[14]やBPI(Behavior Problem Inventory)[15][16]などがある。
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軽度行動障害への対処方法
軽度の行動障害かつ年齢10歳以上の場合はポジティブ行動支援 (positve behavior support: PBS) が可能とされている。PBSでは、望ましい行動の増加を目指した支援が行われる。望ましい行動が生起した際、即座に肯定的なフィードバック(賞賛・承認など)を行い、本人にとって望ましい行動の生起頻度を増やしていく[2]。 軽度知的障害者入所更生施設において多飲の行動障害を持つ自閉症患者には、望ましくない行動をとがめるのではなく、望ましくない行動の代わりとなる行動(代替行動)の形成を支援し、本人をサポートするのが良いとされる[17]。定型児に用いる叱咤などを用いない方法の代表格であり、軽度には認知療法・認知行動療法を軸に支援計画を立てていくことが望ましい[2]。
支援
要約
視点
機能的アセスメント
強度行動障害を有する人への支援においては、「機能的アセスメント(機能分析)」の実施が不可欠である[18]。これは、問題行動の背景にある行動の機能、すなわちその行動が持つ目的や意味を明らかにするものである。機能的アセスメントにより、問題行動がなぜ生じているのかを明確にし、その結果に基づいた支援を行うことが求められる。このような支援は、応用行動分析の理論と手法に基づいて行われることが多く、観察とデータに基づいた体系的なアプローチが特徴である。
行動の機能は以下のように分類される:
- 物や活動の要求:好ましい物や活動を得るために行われる行動。
- 注目の獲得:他者からの関心や注目を得ることを目的とした行動。
- 回避・逃避:不快な状況や苦手な活動から逃れるための行動。
- 感覚刺激の追求:自己刺激や退屈の回避など、感覚的な満足を得るための行動[19]。
なお、1つの行動が複数の機能を有している場合もある。支援者は、機能的アセスメントにより行動の機能を特定し、その結果に基づいて、環境の調整や問題行動と同じ機能を持つ適切な代替行動の形成を促す支援を行う[20]。
主に用いられるアセスメント手法は以下の通り:
- MAS(Motivation Assessment Scale):行動の機能を特定するための16項目からなる質問紙。問題行動の直前・直後の状況に関する質問に、対象者をよく知る支援者が回答する形式で実施される。スコアが最も高い機能が、行動の主な動機であると推定される[21]。
- ABC分析:行動のA(Antecedent:先行条件)、B(Behavior:行動)、C(Consequence:結果)を整理する[22]。
- ストラテジーシート:ABC分析に基づいて、事前の対応の工夫、望ましい行動、適切なほめ方、問題行動が発生した際の対応策を具体的に記述する[23]。
- ABCDEF分析:ABC分析に、D(Deficit:特性のメリ・弱点や苦手なこと)、E(Excess or Extra:特性のハリ・強みや得意なこと)、F(Function:行動の機能)を加えたもの[24][25]。
- スキャッタープロット:問題行動が発生する時間帯を記録する手法。行動の発現頻度と時間帯を把握するのに用いられる[26]。
コミュニケーション支援
強度行動障害の背景には、自らの意思や感情を適切な方法で伝えられないコミュニケーションの困難が関与していることが多い。このため、表出性(自分の思いや要求を伝える力)と受容性(相手の言葉や意図を理解する力)の両側面からの支援が重視されており、強度行動障害に対する有効な支援手段として位置づけられている[27]。
特に、自閉スペクトラム症の人は、聴覚情報よりも視覚情報を優先的に処理する視覚優位の傾向があることが知られており、口頭での声かけのみでは不十分な場合が多い。この特性に基づいた受容性コミュニケーションの支援として、視覚的構造化が有効とされている。視覚的構造化とは、1日のスケジュールや活動手順を絵、写真、文字などの視覚的手段によって明示することで、行動の見通しを立てやすくし、不安や混乱の軽減を図る支援方法である。
一方、表出性コミュニケーションの支援には、PECSなどの拡大・代替コミュニケーション(AAC)が活用される。PECSは絵カードを並べて文章を作成し、意思や要求を伝えることにより、自己表現を可能にする。また、iPadなどのタブレット端末を利用した「DropTalk」や「DropTap」、「PECS Ⅳ+」などのアプリケーションも、有効なツールとして用いられている[28]。
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関連項目
- 応用行動分析 (ABA)
- TEACCHプログラム
- PECS (絵カード交換式コミュニケーションシステム)
- トラウマインフォームドケア (TIC)
- ペアレント・トレーニング
- 行動療法
- 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園
脚注
外部リンク
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