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感染捜査

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感染捜査』(かんせんそうさ)は、光文社より2021年5月に刊行された吉川英梨による警察小説。海上の豪華客船で発生した新種のウイルス感染症によりゾンビと化した感染者と、それを巡る海上保安庁警察の死闘を描いた「ゾンビ×海保×警察」小説。続編となる『感染捜査 黄血島決戦』(かんせんそうさ おうけつじまけっせん)が2022年11月に刊行された。

概要 感染捜査, 著者 ...
概要 感染捜査 黄血島決戦, 著者 ...
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書誌情報

『感染捜査』
『感染捜査 黄血島決戦』

あらすじ

感染捜査

東京オリンピック開催を目前に控えた2020年6月、お台場バルのレストランで複数の惨殺遺体が発見される。生存者によると貸し切りパーティ中に家族が突然お互いを襲い、次々と食い合ったという。ちょうど同じ頃、お台場に寄港した豪華客船クイーン・マム号(QM号)」でも同様の事案が発生。その原因は狂犬病の亜種と思われる新種のウイルスだと判明するが、感染者の発症率は100%。しかも感染者はゾンビ化し、人間を襲い食らう。

ゾンビ化する感染者を撃ち、生存者を守るべきか、感染者の人権を守るべきか。議論が割れる中、オリンピックを開催するためQM号の海上隔離が決定。警察官海上保安官の選抜者からなる「第一次感染捜査隊」が結成され、乗客、民間乗組員、医療チーム、そして感染捜査隊を乗せた同船は、硫黄島近海に隔離されることとなる。

警視庁東京湾岸警察署の女性刑事天城由羽巡査長は、海上保安庁特殊部隊・SST(特殊警備隊)の切れ者・来栖光とタッグを組んで立ち向かうが――[1][2][3][4][5][6]

感染捜査 黄血島決戦

ウイルスを殲滅するため、QM号が太平洋上の孤島「黄血島おうけつじま」の近海に感染者ごと沈められてから約1年半[注釈 1]。多数のゾンビの死骸を乗せたままのQM号が極秘で引き揚げられることになるが、船内調査で1体のゾンビがいまだに生息していることが判明する。

警視庁刑事部天城由羽巡査長は、共に船を沈めた海上保安庁・SST(特殊警備隊)の来栖光と極秘のサルベージ・プロジェクトに参加。二人は再びウイルスと相まみえる。現場で由羽は長年交流を断ってきた潜水士の父親と再会し――[7][8]

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登場人物

天城由羽
警視庁東京湾岸警察署刑事巡査長。違法薬物の瀬取り事案とお台場バルでの惨殺事件を追う中、経歴が謎だらけの海上保安官来栖光の存在に辿り着いたことで、彼が居るという寄港中の豪華客船「クイーン・マム号」へと乗り込んだ。同船の海上隔離に合わせて第一次感染捜査隊に配属され、来栖とタッグを組むこととなる。同作でQM号を来栖とともに沈めた後、続編『黄血島決戦』では警視庁刑事部に所属していたが、サルベージ技師が都内で襲撃された事件を追う中で来栖と再会。QM号のサルベージ計画に参加することとなる[1][6][7]
来栖光
海保側の主人公。経歴が謎だらけの海上保安官だが、その正体は海上保安庁特殊部隊・SST(特殊警備隊)出身者。第一次感染捜査隊では天城由羽とタッグを組むこととなる。天城由羽とともにQM号を沈めた後、続編『黄血島決戦』で再会し、ともにQM号のサルベージ計画に参加することとなる[1][2][6][7]

用語

クイーン・マム号(QM号)
架空の14階建て豪華客船。船内で新種のウイルス感染症が発生したことでゾンビ船と化し、オリンピック開催のために硫黄島(黄血島)近海へと海上隔離された[注釈 1]。隔離に際し、感染した乗客、民間乗組員、医療チーム、第一次感染捜査隊を乗せて隔離されたが、ウイルス殲滅のために沈められた。続編『黄血島決戦』では沈没から一年半が経ち、引き揚げのために極秘でサルベージ・プロジェクトが立ち上げられる[1][5][7][9][10]
第一次感染捜査隊
QM号の海上隔離に際して結成された、警察官海上保安官の選抜者からなる合同部隊。警視庁機動隊特殊捜査係(SIT)・特殊急襲部隊(SAT)や、海上保安庁特別警備隊(特警隊)・特殊警備隊(SST)などの所属者で構成されている[1][11]
HSCC
新種のウイルス感染症狂犬病の亜種とされるが、感染者の発症率は100%であり、しかも発症するとゾンビ化し、人間を襲い食らうようになる。感染者は「灰人」と通称される[1][7]。ちなみに作者の吉川はもともと自力で別の病名を考えていたが、感染症を専門とする教授に話をしたところ、より適切な病名を付けてもらえたとして発刊までに変更している[12][13]


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制作背景

著者の吉川英梨は、テレビドラマウォーキング・デッド』を見てから本作の構想を練っていたという。元々スプラッター映画が苦手だったため、ゾンビ映画も敬遠していたが、『ウォーキング・デッド』劇中のゾンビに支配された終末世界が現代社会の不条理とリンクする展開、極限状態に置かれた人々をリアルに描いた深い人間ドラマに魅了され、もし自身が同様の作品を作るとすれば「警察組織がリアルにゾンビと戦う姿」と構想していた。ちょうど海上保安庁を題材とした『海蝶』シリーズも書き始めた頃であり、某編集者から「ゾンビモノは密室が盛り上がる」という真髄を聞き、それなら舞台は船の上だと、海上保安庁も巻き込む形で本作の執筆に至った[5]

執筆にあたって海上保安庁第三管区の東京海上保安部や横浜海上保安部[14]、同管区の警備実施等強化巡視船(特警船)ぶこう」などを取材している。「ぶこう」に訪れた際は、海保の機動隊にあたる特別警備隊(特警隊)の隊員にも取材しており、実際の装備などを見せてもらいつつ、「特警隊がどうやってゾンビと戦うか」をアイデアも出してもらいながら真剣に話し合ったという[15][16]。また、海保の特殊部隊にあたる特殊警備隊(SST)元隊員のOB[17][18][注釈 2]や、ダイヤモンド・プリンセス号の集団感染の対応に当たった海保関係者にも取材をしている[19]

また、作者は『感染捜査』執筆にあたり、以下のようにも述べている[5]

現場でゾンビと対峙せねばならない隊員たちの姿は、コロナ禍で疲弊する医療関係者の姿を投影しています。「自衛隊がいるのに彼らを頼れない」現実の縛りは、尖閣諸島中国海警局の船とにらみ合いを続ける海上保安官の姿とも重なります。議論や決断を先送りにして未来の世代に「ゾンビの後始末」を押し付ける政府や社会の姿は、福島第一原発の現状と似ています。実際に書いてみると、現在の日本社会の歪みと重なる部分が多く、ゾンビモノというコンテンツが持つ底力を改めて実感しました。吉川英梨[5]

続編『黄血島決戦』では、日本サルヴェージ株式会社を取材している。作者は海上保安庁の外郭団体「海上保安友の会」の理事となった際、その縁で知り合った同社の大谷弘之社長から「なにかあればいつでも取材協力します」とのメールをもらっており、前作執筆後にゾンビ船の引き揚げを構想したことで、大谷社長に連絡。2022年4月中旬に担当編集者を伴って日本サルヴェージ本社を訪れ、夏ごろには門司支店にも訪れており、技術者らに取材を行っている[20][10]

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脚注

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