トップQs
タイムライン
チャット
視点
手に魂を込め、歩いてみれば
ウィキペディアから
Remove ads
『手に魂を込め、歩いてみれば』(てにたましいをこめ あるいてみれば、アラビア語:لماء ضع على يدك وامشي、英語:Put Your Soul on Your Hand and Walk)は、セピデ・ファルシ監督による2025年のドキュメンタリー映画である。2023年10月からのイスラエルの軍事作戦下におけるガザでの生活を、現地に住む若い女性とファルシとのビデオ通話を通じて描いている[5]。
フランス、パレスチナ、イランの共同製作であるこのドキュメンタリーは、2025年5月15日に開催された第78回カンヌ国際映画祭のACID部門にて世界初上映された[6]。フランスでは、New Storyの配給で9月24日に劇場公開された。
本作でファルシのインタビューを受けたパレスチナ人フォトジャーナリストのファトマ・ハッスーナは、映画がACID部門に選出された翌日の2025年4月16日、イスラエル軍の空爆により親族9人と共に殺害された[7][8][9]。映画祭は公式声明を発表し、哀悼の意を表するとともに、ガザで続く暴力を批判した[10]。
Remove ads
あらすじ
2024年初頭、パリに亡命中のイラン人映画監督セピデ・ファルシは、エジプト・パレスチナ国境を越えてガザ地区で続く戦争を記録しようとカイロへ向かうが、イスラエルによるガザ地区封鎖のためラファへの入域を阻まれる。
ファルシは代わりに、壊滅状態にあるガザ北部で家族と共に小さなアパートに暮らすフォトジャーナリストのファトマ・ハッスーナへのビデオ通話インタビューを通じて戦争を記録する。ガザの人々に課された過酷な生活状況や、自身の親族の殺害を含む民間人の犠牲について語るハッスーナの話は、不安定なインターネット接続によって絶えず中断される。ビデオ通話は、主に子供たちの苦しみに焦点を当てたハッスーナのフォトジャーナリズム作品や、進行中のジェノサイドに対する国際的な反応の文脈を伝えるニュース報道と織り交ぜられる。
2024年後半に戦争が激化するなか、ハッスーナは自宅のあるガザ市近郊での相次ぐ空爆や軍事活動を記録し続ける。その結果、友人たちが死亡し、彼女自身も近くの避難所へ身を寄せることになる。
2025年4月15日、ファルシがハッスーナに映画が2025年のカンヌ国際映画祭に選出されたと知らせると、彼女はそのワールドプレミアに出席したいと希望する。ファルシはハッスーナのパスポートを求めて通話を終える。その翌朝、2025年4月16日、ハッスーナと9人の親族は自宅へのイスラエル軍の空爆により睡眠中に殺害された。
2025年5月までに、OHCHR(国連人権高等弁務官事務所)は10月7日以降にガザで211人のジャーナリストが殺害されたことを確認しており、その中には28人の女性が含まれている。
Remove ads
製作
この映画は、Reves dʻEau Productionsのジャヴァド・ジャヴァエリーによって製作され、24images Productionのアニー・オハヨン・デケルが共同製作を務めた[11]。

ガザに入ることができなかった製作者たちは、イスラエルの包囲下での生活を記録するため、同地区北部にいる若い写真家ファトマ・ハッスーナに協力を求めた[12]。2024年4月、監督のセピデ・ファルシがカイロを訪れ、エジプトの首都にいるパレスチナ難民を撮影していたところ、ガザを離れたばかりの男性が彼女に、「若く、素晴らしく才能のある写真家」としてハッスーナのことを話した。ファルシはハッスーナに連絡を取り、わずか2回の会話の後、定期的に爆撃される沿岸地帯に閉じ込められた彼女やその他の人々の生活について、彼女の視点から映画を作るというアイデアが生まれた。この映画は、2人の女性によるほぼ1年間にわたる映像でのやり取りに基づいている[13][14]。
Remove ads
公開
本作は第78回カンヌ国際映画祭のACID部門での上映作品に選出され、2025年5月15日に世界初上映された[15]。フランスでは、New Storyの配給により2025年9月24日に公開され[16]、日本ではユナイテッドピープルの配給により同年12月5日に公開される[17]。
評価
カンヌの開会式に先立って発表された公開書簡は[18]、ハッスーナの殺害を非難し、ガザでの出来事に対する業界の「無為」と「沈黙」を弾劾するもので、リチャード・ギア、スーザン・サランドン、ホアキン・フェニックス、ギレルモ・デル・トロ、ガイ・ピアース、レイフ・ファインズ、デヴィッド・クローネンバーグ、ヴィゴ・モーテンセン、ハビエル・バルデムら350人以上の俳優、監督、プロデューサーが署名した[19][20][21][22]。映画祭の審査員長を務めたジュリエット・ビノシュは、映画祭のオープニングでハッスーナを「今夜、彼女は私たちと共にここにいるべきでした。(中略)芸術は残ります。それは私たちの人生と夢の強力な証であり、私たち観客はそれを受け止めるのです。」と称えた[23]。
『ハリウッド・リポーター』誌のジョーダン・ミンツァーによるレビューは、この映画を「地獄を生き抜く才能ある若い女性の親密なポートレート」と評し、「最終的にはドキュメンタリーによる暴露というよりも、このレビューが書かれている今も展開し続けている悲劇を証言する、生のままのフィルタリングされていない証拠の断片である。この映画と、ハッスーナの目を見開かせるような写真は、ガザで何が起きたか、それはより広い意味で、私たちの文明に何が起きたかということを詳述する歴史的記録として、いつの日か加えられることになるだろう。」と述べた[14]。
『スクリーン・インターナショナル』のアラン・ハンターは、「友人の死や、胴体とは別の通りで頭部が発見された叔母の死について語るハッスーナの言葉には、自己憐憫の気配すら無い。彼女は絶えず他者のことを考え、飢えた子供たちに利用可能なあらゆる支援を配る手助けをしている。恐ろしい状況に直面してなお明るい彼女の楽観主義は、人々にインスピレーションを与えるものである。(中略)ハッスーナの楽観主義は、自分たちの映画がカンヌに受理されたというニュースを受け取った2025年4月15日の最後の通話においてさえ持続している。ハッスーナとその家族は翌日殺害された。ファルシの映画は今、平凡でありながら非凡でもあったある人物への強力な追悼碑として存在している。」とコメントした[24]。
France 24は、2025年のカンヌ国際映画祭において、本作ほど注目を集めた映画はなかったと報じ、その「感情的な初上映は涙と長いスタンディングオベーションを呼んだ」と伝えた[25]。
受賞歴
- 第61回シカゴ国際映画祭 - ゴールド・ヒューゴ賞(最優秀ドキュメンタリー)[26]
- 第19回シネマ・アイ・オナーズ - The Unforgettables(ファトマ・ハッスーナ)[27]
Remove ads
出典
外部リンク
Wikiwand - on
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Remove ads