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投与経路
薬剤などを体内に送り込むための経路の種類 ウィキペディアから
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投与経路(とうよけいろ)とは薬理学や毒性学において薬物、毒物その他の化合物を体内に送り込むための方法と経路を指す[注釈 1]。与えられた物質は、体内に導入された場所からその機能が発現する特定の部位へと輸送されなければならない(このことは、たとえ角質層を通した皮膚内部への単なる浸潤だったとしても言えることである)。しかしながら生体の輸送機構を用いて薬物を輸送することはそれほど単純なことではない。吸収、分布、代謝、排泄 (ADME) のプロセスに関連する薬物の薬物動態学的性質は投与経路に大きく影響をうける。
分類
投与経路はおおよそ以下のように分類される[注釈 2]。局所投与と全身投与に大別され[1]、さらに全身投与は経腸投与と非経口投与に分類される。
- 局所投与: 直接作用が期待される部位に与えられる。局所的な効果をもたらす。
- 経腸投与: 消化器系を通して与えられる。全身(非局所的)に効果をもたらす
- 非経口投与: 消化器系以外の経路で吸収される方法。全身に効果をもたらす。
局所投与
- 経鼻投与
- 薬剤を鼻から吸入する方法。例)充血除去剤の鼻スプレー(経鼻投与は粘膜吸収を経た非局所的効果を期待する場合にも用いられる)。
経腸投与
経腸投与とはこの場合、消化器系の一部から薬物を吸収させる投与法を示す。
非経口投与
注射器または注入ポンプによる非経口投与
経静脈投与 (IV)
経動脈投与 (IA)
- 例)血管痙攣の治療に用いられる血管拡張剤や血栓性塞栓症治療のための血栓溶解剤など。
筋肉内投与 (IM)
心臓内投与 (IC)
皮下投与 (SC, sub-Q)
- 皮下を意味する英語Subcutaneousを略してSC、またはその発音からsub-Qと表記されることがある。例)インスリンなど。
骨内投与 (IO)
皮内投与 (ID)
- 皮内を意味する英語Intradermalを略してIDと表記されることがある。例)アレルギーテスト、刺青など
くも膜下(腔)投与 (IT)
腹腔内投与 (IP)
膀胱内投与 (VE)
- 例)膀胱ガン治療。
その他の非経口投与
経皮投与
経粘膜投与
気管内投与
気管チューブからの投与。新生児への肺サーファクタントや心肺蘇生時のアドレナリンなど。
その他の投与経路
硬膜外投与
- 硬膜外麻酔の投与経路である。
硝子体内投与
- 眼球内の硝子体への投与。
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利点および欠点
それぞれの投与経路には利点と欠点がある。
経口
利点
- 身体を傷つけることがなく安全。
- 特別な器具を要することなく容易。
- 製剤、保存などの面で安価。
欠点
吸入
利点
- 最も素早い吸収と効果。7-10秒で薬物は脳に達する。
- 投与量の漸増が可能。
欠点
- 薬物が脳に急速に作用するため、最も中毒症状を起こし易い。
- 投与量を厳密に調節することは難しい。
- 吸入器の取り扱いに熟練を要する。または被験者の側に慣れが必要。
注射
ここでの注射とは上で挙げた経静脈投与、筋肉内投与、皮下投与を指す。
利点
欠点
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使用
状況に応じて同じ投与経路が局所投与にも非局所投与にも用いられる。例えば、吸入投与は喘息薬の投与においては気道を標的器官としている(局所投与)が、全身麻酔の投与においては脳が標的器官である(非局所的投与)。一方、同一の薬物が投与経路により異なった結果をもたらすことがある。例えば、モルヒネのようなオピオイドの拮抗薬として知られるナロキソンは、消化管からは十分に血流に吸収されないという特性から、経腸投与と非経口投与では用途が異なる。静脈投与ではナロキソンは血流に乗って中枢神経に輸送され、そこでオピオイドと反対の作用を示す。そのためのオピオイド過剰摂取治療薬として用いられる。一方、経口投与ではナロキソンは吸収されずに腸管まで達し、そこで下剤として作用する。そのため鎮痛剤の作用を何ら妨げず、鎮痛療法中の便秘治療に用いられる[3][注釈 5]。
経腸投与は穿刺や殺菌の必要がなく、一般に患者にとって最も簡便な経路である。実際医薬品の約70%(売り上げ比)が経腸投与の一部である経口投与で占められていると言われている [4]。経腸投与はその簡便さから慢性病治療薬では頻繁に用いられる。しかしながら、前述のように薬物によっては消化管吸収が悪い(または一定でない)ために経腸投与が適さない場合がある。そのような場合は経皮投与が患者にとって楽な代替経路となりうるが、製剤の方法が限られているのが経皮投与の難点である。
急性疾患においては(救急医学と集中治療医学では)ほとんどの医薬は静脈注射で与えられる。急病患者の組織や消化管からの薬物の吸収は、血流や腸管運動が通常と変化している可能性があり、しばしば予測不能であることから静脈注射が最も確実な経路とみなされる。
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脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
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