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標的えい航装置 RM-30A

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標的えい航装置 RM-30A
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標的えい航装置 RM-30A(ひょうてきえいこうそうち RM-30A)は、アメリカ合衆国のメギット・ディフェンス・システムズ[注 1]が開発した曳航式の対空射撃訓練装置である。アメリカ及び世界各国で使用され、日本海上自衛隊でもU-36A訓練支援機及びUP-3D電子戦訓練支援機で使用されている。日本での定期修理等のメンテナンスは日本飛行機が契約している。また、兄弟機の機関砲標的装置(A/A37U-36)航空自衛隊で空対空射撃訓練用として運用されている。

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標的えい航装置RM-30Aを主翼下に搭載したU-36A訓練支援機。写真の9202号機は2003年に事故で失われている。

概要

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標的えい航装置RM-30Aを装備しているUP-3D電子戦訓練支援機。航続距離が長く、エンジン出力が大きくて標的えい航時の速度も速いUP-3Dでの訓練支援は、運用側から非常に高く評価されている。

標的えい航装置 RM-30Aはえい航標的の揚収が可能な標的えい航装置で、様々なえい航標的を運用可能である。使用国はアメリカ、イギリス、日本、韓国など世界中の多くの軍事組織及び民間軍事会社によって使用されており、また多種多様な航空機に適合し、搭載母機はガルフストリーム G100リアジェット 35/36ファルコン 20アルファジェットL-59ハンターなど非常に多岐に渡っている[1]

主な機能

標的えい航装置 RM-30Aの主な機能は以下のとおり[2]

  • 2ウェイのリーリングシステムにより回収と再使用可能な曳航標的
  • 搭載母機への導入は大幅な改修が不要
  • NATO標準のエジェクターラックのラグへの互換性を有する
  • 光学ビデオによる標的回収モニターを搭載可能
  • 全世界で使用可能とするために米国軍用規格へ準拠し認定を取得済

構成

標的えい航装置 RM-30Aは以下の主要なサブシステムから構成される。

さらに見る システム名, 内容 ...

運用性能

標的えい航装置 RM-30Aの運用性能は以下のとおり[3]

  • 搭載母機運用範囲(max):500 KCASまたはマッハ0.95 機動6.0G
  • 標的展張可能範囲:速度250 KCAS

搭載可能なえい航標的

要約
視点
GT-400 Glide target[4]
GPSを装備し、えい航の後に切り離して発進する滑空型標的。最大約40NMの飛翔が可能で、射撃評価装置を内蔵することによりリアルタイムで射撃評価が可能。
TDK-39A Aerial gunnery tow target[5]
機関砲による空対空射撃訓練に用いられるえい航標的。射撃評価装置を内蔵することによりリアルタイムで射撃評価が可能。
TGX Augmented radar tow target[6]
レーダー反射材と発光による視認性拡大装置を備え、CIWSミサイルの標的に用いられるえい航標的。
TGX-IR All aspect realistic infrared signature tow target[7]
ジェット燃料による赤外線発生装置を備え、全方位から使用可能な赤外線誘導ミサイル用えい航標的。
TIX Infrared-augmented tow target[8]
バーナーによる赤外線発生装置を備えた赤外線誘導ミサイル用えい航標的。
TLX-1 Low-level height-keeping tow target[9]
飛翔高度を20-500ftで設定可能なえい航標的。RM-30A1と共に海上自衛隊への導入が始まっている。
TPT Plume augmented target[10]
ジェット燃料による赤外線発生装置を備えた赤外線誘導ミサイル用えい航標的。
TRX radar augmented tow target[11]
内部にレーダー反射面積を可変出来る電波反射体を備え、音響やドップラーによるスコアリング装置を搭載可能なえい航標的。RM-30A1と共に海上自衛隊への導入が始まっている。
現在、海上自衛隊で運用されているえい航標的及びえい航索
さらに見る 名称(契約品名), 画像 ...
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派生及び発展型

RM-30B

RM-30AをA-4A-7F-4F-5F-16F-18AF-CK-1などの戦闘機へ適合させたタイプ[12]。台湾のAIDCではRADOPS(Doppler Radar Scoring)によるリアルタイムスコアリングシステムを搭載し、TDK-39A Aerial gunnery tow targetにより空対空機関砲射撃訓練に用いている[13]

RM-30A1

RM-30Aから空気圧及び油圧システムを排除してフル電動化されたタイプ。電動化によりメンテナンスの簡略化と空気圧容量による運用制限から解放されている。なお、元の RM-30Aシステムが認定されている全ての航空機と互換性がある[14]。また、えい航索切断用のカッターも二重化された。現在、UP-3D用に海上自衛隊への導入が始まっている。

RMK-35

RADOPS(Doppler Radar Scoring)によるリアルタイムスコアリングシステムを搭載したもの。機関砲標的装置(A/A37U-36)の構成品として航空自衛隊で戦闘機の機関砲の空対空射撃訓練用として運用されている。

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海上自衛隊での運用

海上自衛隊ではU-36A訓練支援機及びUP-3D電子戦訓練支援機で艦砲及びCIWSの対空射撃訓練用として使用されており、定期修理等のメンテナンスは日本飛行機が契約している。なお、U-36Aは運用側からパワーが弱くて訓練支援時に速度が遅い、小型のため機内が狭く、また天候の影響を受けやすくて航続距離が短いなど数々の不満があり、UP-3Dの訓練支援はそれらを補うものとして歓迎されている。ただ、元々UP-3Dは電子戦訓練支援機として要求され、標的えい航母機として要求されたものではない。海上自衛隊は本来は訓練支援機として大型の3発ビジネスジェット機であるダッソー ファルコン 50を希望していたが、当時の日米貿易摩擦を配慮してリアジェット社製の機体が選定されたとの話がある[要出典]

なお、U-36Aは2022年(令和4年)12月16日に閣議決定された「防衛力整備計画[15]より用途廃止の方針となっており、今後は民間会社への訓練支援の委託によって順次廃止することとされている[16]が、えい航標的による訓練支援は当分UP-3Dによって行われる。ただ、近年は任務の多様化や各種ミサイルの導入により、艦砲による対空射撃訓練の機会は次第に減少する傾向にある。

海上自衛隊で使用されるえい航標的は主に国産の高速えい航標的JAQ-5(射撃評価装置付の標準型とレーダー反射型の2種類)及び超低高度えい航標的JAQ-50で、えい航索は鋼索ではなく砲弾の近接信管を誤作動させないように電波を反射し難いケブラー製材料を使用している。現在、RM-30A1の導入と共にえい航標的及びえい航索(ハイブリッド索)もMeggitt社製品の輸入による導入が始まっている。

不具合

RM-30Aはえい航索を切断するカッターが一系統しかなく、RM-30Aに何らかの不具合があって動作不能となった場合はカッターが使用出来ない。その際にえい航標的を展張している場合は、えい航標的や曳航索を引っ張ったまま帰投できないため、RM-30Aごと機体から投棄しなくてはならない。海上自衛隊では1990年代にそのような事例が発生して実際に投棄している。なお、エジェクターラックとしてU-36AはMAU-12C[17]を、UP-3DはBRU-15[18]を使用している。

この事案に対する海上自衛隊の対応は、コスト的な問題からカッターを二重化するなどの対策ではなく、定期修理の導入など点検整備を充実化させることで凌いでいる。なお、航空自衛隊が運用している兄弟機の機関砲標的装置(A/A37U-36)の標的えい航装置RMK-35及び最近導入が始まったRM-30A1ではカッターが二重化されている[注 3]

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脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

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