第82回ヴェネツィア国際映画祭

第82回ヴェネツィア国際映画祭（だい82かいヴェネツィアこくさいえいがさい、2025 Venice International Film Festival）は、2025年8月27日から9月6日まで開催された^[1] 。コンペティション部門の審査委員長はアメリカの映画監督アレクサンダー・ペインが務めた^[2]。金獅子賞はジム・ジャームッシュ監督のアメリカ・アイルランド・フランス合作映画『Father Mother Sister Brother』が受賞した^[3][4][5]。

第82回ヴェネツィア国際映画祭

金獅子賞を受賞した『Father Mother Sister Brother』監督のジム・ジャームッシュ
オープニング	『La grazia』
クロージング	『Chien 51』
会場	イタリア ヴェネツィア
創設	1932年
受賞	金獅子賞 -『Father Mother Sister Brother』
賞名	金獅子賞
上映作品数	21 (コンペティション) 19 (オリゾンティ)
期間	2025年8月27日 - 9月6日
ウェブサイト	labiennale.org/en/cinema
ヴェネツィア国際映画祭開催史

概要

今回のオープニング作品はパオロ・ソレンティーノ監督の『La grazia』^[6]、クロージング作品はセドリック・ヒメネス（英語版）監督の『Chien 51』が上映される。

また、栄誉金獅子賞にはドイツの映画監督ヴェルナー・ヘルツォークとアメリカの女優キム・ノヴァクが受賞した^[7][8]。

映画祭の開催前および開催期間中に数多くの親パレスチナ（英語版）デモが行われ、映画祭組織や参加スターらによって支持された^{[9][10][11][12][13][14]}。特にガザ地区を舞台にし、映画祭においては審査員大賞を受賞したカウテール・ベン・ハニア監督のチュニジア・フランス合作映画『The Voice of Hind Rajab』の世界初上映時には23分間に及ぶスタンディングオベーションの最中にも「パレスチナ解放」の掛け声を響かせるデモが発生し、ガザにおける継続的な暴力の終結を要求した^{[15][16][17][18]}。映画祭の芸術監督アルベルト・バルベラ（英語版）はあらゆるデモを支持しつつも、抗議活動が映画祭のスケジュールを妨げてはならないと述べた^[19][20]。

日本からはアウト・オブ・コンペティション部門に細田守監督の『果てしなきスカーレット』^[21][22][23]、オリゾンティ部門に藤元明緒監督の『LOST LAND/ロストランド』^[24]、ヴェネツィア・クラシック部門に市川崑監督の『鍵』^[25]、小林正樹監督の『怪談』^[26]、ヴェネツィア・イマーシブ部門に和田淳監督の『猫が見えたら』^[27][28]、ゆはらかずき監督の『First Virtual Suit』^[29][30]がそれぞれ出品され、『LOST LAND/ロストランド』がオリゾンティ部門の審査員特別賞を受賞した^[5]。

公式選出

ラインナップは7月22日に発表された。

コンペティション

コンペティションとして以下の作品が選ばれた^[31][32]。

日本語題	原題	監督	製作国
	Le mage du Kremlin	オリヴィエ・アサヤス	フランス
ジェイ・ケリー	Jay Kelly	ノア・バームバック	アメリカ合衆国 イギリス イタリア
ヒンド・ラジャブの声	The Voice of Hind Rajab	カウテール・ベン・ハニア	チュニジア フランス
ハウス・オブ・ダイナマイト	A House of Dynamite	キャスリン・ビグロー	アメリカ合衆国
	Rì guà zhōng tiān 日掛中天	ツァイ・シャンジュン（英語版）	ちゅうごく 中国
フランケンシュタイン	Frankenstein	ギレルモ・デル・トロ	アメリカ合衆国
	Elisa	レオナルド・ディ・コスタンツォ（英語版）	イタリア スイス
	À pied d'œuvre	ヴァレリー・ドンゼッリ	フランス
	Stille Freundin	エニェディ・イルディコー	ドイツ フランス  ハンガリー
	The Testament of Ann Lee	モナ・ファストヴォルド（英語版）	イギリス
	Father Mother Sister Brother	ジム・ジャームッシュ	アメリカ合衆国 アイルランド フランス
	Bugonia	ヨルゴス・ランティモス	イギリス
	Duse	ピエトロ・マルチェッロ	イタリア
	Un Film Fatto per Bene	フランコ・マレスコ（英語版）	イタリア
	Orphan	ネメシュ・ラースロー	ハンガリー イギリス ドイツ フランス
	L'Étranger	フランソワ・オゾン	フランス
	Eojjeolsugaeopda 어쩔수가없다	パク・チャヌク	かんこく 韓国
	Sotto le nuvole	ジャンフランコ・ロージ	イタリア
	The Smashing Machine	ベニー・サフディ	アメリカ合衆国
	Nǚhái 女孩	スー・チー	たいわん 台湾
	La grazia (オープニング作品)	パオロ・ソレンティーノ	イタリア

アウト・オブ・コンペティション

アウト・オブ・コンペティションとして以下の作品が選ばれた^[31][33]。

フィクション

日本語題	原題	監督	製作国
	Boşluğa xütbə	ヒラル・ベイダロフ	アゼルバイジャン メキシコ トルコ
	L'Isola di Andrea	アントニオ・カプアーノ（英語版）	イタリア
	Il Maestro	アンドレア・ディ・ステファノ（英語版）	イタリア
	After the Hunt	ルカ・グァダニーノ	アメリカ合衆国
はてしなきすかあれっと 果てしなきスカーレット	Hateshinaki Scarlet 果てしなきスカーレット	ほそだまもる 細田守	にほん 日本
	Den Sidste Viking	アナス・トーマス・イェンセン（英語版）	デンマーク  スウェーデン
	Chien 51 (クロージング作品)	セドリック・ヒメネス（英語版）	フランス
	In the Hand of Dante	ジュリアン・シュナーベル	アメリカ合衆国 イタリア
	La Valle dei Sorrisi	パオロ・ストリッポリ	イタリア スロベニア
	Dead Man's Wire	ガス・ヴァン・サント	アメリカ合衆国
	Orfeo	ヴィルジリオ・ヴィロレッジ	イタリア

ノンフィクション

日本語題	原題	監督	製作国
	Kabul, Between Prayers	アブーザール・アミニ	オランダ ベルギー
	Ferdinando Scianna - Il Fotografo dell'Ombra	ロベルト・アンド（英語版）	イタリア
	Marc by Sofia	ソフィア・コッポラ	アメリカ合衆国
	Il Diari di Angela - Noi due Cineasti. Capitolo Terzo	イェルヴァント・ジャニキアン アンジェラ・リッチ・ルッキ	イタリア
	Dai nostri inviati.: La Rai racconta la Mostra del Cinema di Venezia 1990-2000	ジュゼッペ・ジャンノッティ エンリコ・サルヴァトーリ	イタリア
	Ghost Elephants	ヴェルナー・ヘルツォーク	アメリカ合衆国
	My Father and Qaddafi	ジハン・K	アメリカ合衆国 リビア
	The Tale of Silyan	タマラ・コテフスカ（英語版）	北マケドニア
	Nuestra tierra	ルクレシア・マルテル	アルゼンチン アメリカ合衆国 メキシコ フランス オランダ  デンマーク
	Remake	ロス・マケルウィー	アメリカ合衆国
	Kim Novak's Vertigo	アレクサンドル・O・フィリップ（英語版）	アメリカ合衆国
	Cover-Up	ローラ・ポイトラス マーク・オベンハウス	アメリカ合衆国
	Broken English	イアン・フォーサイス（英語版） ジェーン・ポラード（英語版）	イギリス
	Zapiski Nastoyashego Prestupnika	アレクサンデル・ロジニャンスキー（英語版） アンドリー・アルフェロフ	アメリカ合衆国  ウクライナ
	Zapisnaya knizhka rezhissera	アレクサンドル・ソクーロフ	イタリア ロシア
	hui jia 回家	ツァイ・ミンリャン	たいわん 台湾

フィルム & ミュージック

日本語題	原題	監督	製作国
	Nino. 18 Giorni	トニ・ダンジェロ	イタリア
	Piero Pelù Rumore Dentro	フランチェスコ・フェイ	イタリア
	Newport and the Great Folk Dream	ロバート・ゴードン	アメリカ合衆国
	Francesco de Gregori Nevergreen	ステファノ・ピストリーニ	イタリア

シリーズ

日本語題	原題	監督	製作国
	Un Prophète（8 episodes）	エンリコ・マリア・アルターレ（イタリア語版）	フランス
	Portobello（episode 1 - 2）	マルコ・ベロッキオ	イタリア フランス
	Etty（6 episodes）	ハガイ・レヴィ（英語版）	フランス ドイツ オランダ
	Il Mostro（4 episodes）	ステファノ・ソッリマ	イタリア

短編作品

日本語題	原題	監督	製作国
	Origin	ヤン・アルテュス＝ベルトラン（英語版）	フランス
	Boomerang Atomic	ラシッド・ブシャール	フランス
	How to Shoot a Ghost	チャーリー・カウフマン	アメリカ合衆国 ギリシャ
	Goffredo Felicissimo?	フランコ・マレスコ（英語版）	イタリア
	Rukeli	アレッサンドロ・ラック（英語版）	イタリア  スウェーデン

オリゾンティ

ヴェネツィア・スポットライト

ヴェネツィア・クラシックス

ヴェネツィア・クラシックス部門には以下の作品が選ばれた^{[34][35][36][37]}。

修復作品

日本語題	原題	監督	製作国	製作年
マタドール<闘牛士>・炎のレクイエム	Matador	ペドロ・アルモドバル	スペイン	1986
	BASHU, GHARIBEYE KOOCHAK باشو غریبه کوچک	バハラーム・ベイザー	イラン	1989
きりのはとば 霧の波止場	Le Quai des brumes	マルセル・カルネ	フランス	1938
けつだんのさんじじゅっぷん 決断の3時10分	3:10 to Yuma	デルマー・デイヴィス	アメリカ合衆国	1957
アニキ・ボボ	Aniki-Bóbó	マノエル・ド・オリヴェイラ	ポルトガル	1942
ローマ11時	Roma, ore 11	ジュゼッペ・デ・サンティス	イタリア	1952
	Lo Spettro	リッカルド・フレーダ	イタリア	1963
	Mark of the Renegade	ヒューゴー・フレゴネーズ（英語版）	アメリカ合衆国	1951
かぎ 鍵	kagi 鍵	いちかわこん 市川崑	にほん 日本	1959
ぐうぜん 偶然	Przypadek	クシシュトフ・キェシロフスキ	ポーランド	1981
かいだん 怪談	kaidan 怪談	こばやしまさき 小林正樹	にほん 日本	1965
ロリータ	Lolita	スタンリー・キューブリック	アメリカ合衆国	1962
	House of Strangers	ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ	アメリカ合衆国	1949
	The Delicate Delinquent	ドン・マグワイア（英語版）	アメリカ合衆国	1957
	Il magnifico cornuto	アントニオ・ピエトランジェリ	イタリア フランス	1964
にええかあのとち 2エーカーの土地	Do Bigha Zamin दो बीघा ज़मीन	ビマル・ロイ	インド	1953
ゆかいなけっこん ゆかいな結婚	Ti ho sposato per allegria	ルチアーノ・サルチェ	イタリア	1967
あいじょうばんざい 愛情萬歳	Aiqing Wansui 愛情萬歲	ツァイ・ミンリャン	たいわん 台湾	1994
クィーン・ケリー	Queen Kelly	エリッヒ・フォン・シュトロハイム	アメリカ合衆国	1929

ドキュメンタリー

ヴェネツィア・イマーシブ

独自選出

国際批評家週間

ヴェニス・デイズ

審査員

メインコンペティション^[2][38]

• アレクサンダー・ペイン ( アメリカ合衆国/映画監督・脚本家・映画プロデューサー) 審査員長
• ステファヌ・ブリゼ ( フランス/映画監督・脚本家)
• マウラ・デルペロ（英語版） ( イタリア/映画監督・脚本家)
• クリスティアン・ムンジウ ( ルーマニア/作家・映画監督・映画プロデューサー)
• モハマド・ラスロフ ( イラン/映画監督・作家・映画プロデューサー)
• フェルナンダ・トーレス ( ブラジル/女優・作家・脚本家)
• チャオ・タオ ( 中国/女優)

オリゾンティ^[38]

• ジュリア・デュクルノー ( フランス/映画監督・脚本家) 審査員長
• ユーリ・アンカラニ（英語版） ( イタリア/映画監督・ビデオアーティスト)
• フェルナンド・エンリケ・フアン・リマ ( アルゼンチン/映画評論家)
• シャノン・マーフィ（英語版） ( オーストラリア/映画監督)
• ラメル・ロス（英語版） ( アメリカ合衆国/芸術家・映画監督・作家・ドキュメンタリー作家)

ルイジ・デ・ラウレンティス賞^[38]

• シャーロット・ウェルズ（英語版） ( スコットランド/映画監督) 審査員長
• エリジェ・セヒリ（英語版） ( フランス・ チュニジア/映画監督・映画プロデューサー・元ジャーナリスト)
• シルヴィオ・ソルディーニ（英語版） ( ブラジル/映画監督・脚本家)

ヴェネツィア・クラシックス^[34]

• トンマーゾ・サンタンブロージョ ( イタリア/映画監督) 審査員長

ヴェネツィア・イマーシブ^[39]

• エリザ・マクニット ( オランダ/映画監督・作家) 審査員長
• グウェナエル・フランソワ ( フランス・ チュニジア/映画監督・映画プロデューサー)
• ボリス・ラベ ( オランダ/ヴィジュアルアーティスト)

受賞結果

公式部門

コンペティション^[5][3]

• 金獅子賞 – 『Father Mother Sister Brother』 - ジム・ジャームッシュ
• 審査員大賞 – 『The Voice of Hind Rajab』- カウテール・ベン・ハニア
• 銀獅子賞 - ベニー・サフディ - 『The Smashing Machine』
• ヴォルピ杯:
  • 女優賞 – シン・ジーレイ - 『女孩』
  • 男優賞 – トニ・セルヴィッロ - 『La grazia』
• 脚本賞 - ヴァレリー・ドンゼッリ、ギルス・マルシャン（英語版） - 『À pied d'œuvre』
• 審査員特別賞 – 『Sotto le nuvole』 - ジャンフランコ・ロージ
• マルチェロ・マストロヤンニ賞 – ルナ・ウェドラー（英語版） - 『Stille Freundin』

オリゾンティ^[5][3][40]

• 作品賞 - 『En el Camino』 - ダビ・パブロス（英語版）
• 監督賞 - アヌパルナ・ロイ（英語版） -『Songs of Forgotten Trees』
• 審査員特別賞 – 『LOST LAND/ロストランド』 - 藤元明緒
• 女優賞 - ベネデッタ・ポルカローリ（英語版） - 『Il Rapimento di Arabella』
• 男優賞 - ジャコモ・コヴィ - 『Un Anno di Scuola』
• 脚本賞 - アナ・クリスティーナ・バラガン（英語版） - 『Hiedra』
• 短編映画作品賞 - 『Without Kelly』 - ロヴィーサ・シレン

ライオン・オブ・ザ・フューチャー^[3]

• ルイジ・デ・ラウレンティス賞 - 『Short Summer』 - ナスティア・コルキア

ヴェネツィア・スポットライト^[3]

• アルマーニ・ビューティ・オーディエンス賞 - 『Calle Málaga』 - マリヤム・トゥザニ

ヴェネツィア・クラシックス^[3]

• 最優秀ドキュメンタリー映画賞 - 『Mata Hari』 - ジョー・ベシェンコフスキー、ジェームズ・A・スミス
• 最優秀復元映画賞 - 『باشو غریبه کوچک (Bashu, Gharibeye Koochak)』 - バハラーム・ベイザー

ヴェネツィア・イマーシブ^[3]

• グランプリ - 『雲在兩千米』 - シンギング・チェン（英語版）
• 審査員特別賞 - 『Less Than 5GR or Saffron』 - ネガー・モテヴァリメダンシャー
• ベスト・アチーブメント - 『A Long Goodbye』 - ケイト・フート、ヴィクター・マエス

独立部門

特別賞

• 栄誉金獅子賞^[7][8][41] – ヴェルナー・ヘルツォーク、キム・ノヴァク
• カルティエ・グローリー・トゥ・ザ・フィルムメーカー・アワード^[42] – ジュリアン・シュナーベル