紗綾形

紗綾形（さやがた）とは、中国を起源とする伝統模様の1つで、東アジアや漢字圏の日本列島、朝鮮半島、ベトナム、モンゴル国などにも広く存在している。

別称

• 中国語や漢文では、「卍字不到頭」が最も正式な漢字表記とされる。ただし、この模様は非常に広く使われているため、別称や表記が多く、一般的には卍字紋や卍字錦、卍字拐、卍不断、卍曲水などと呼ばれる。
• 日本語では、主に「紗綾形」という呼称が知られているが、「紗綾型」とも漢字表記される。また、「卍崩し文様（まんくずしもんよう）」という呼称もよく使われている。

中国

漢名の「卍字不到頭」は、その名の通り、「複数の卍字」を組み合わせて構成された模様である。1つの模様の四方には、もう1つの同じ模様が自然に接続できるため、このように無限に広がることが出来る。この現象を中国語では「不到頭」と呼ぶため、漢名は「卍字不到頭」となった。「卍」とい文字は、ナチスドイツのシンボルでは無く、「仏様から授かった祝福や長寿・家の繁栄が途切れなく、永続すること」を意味する。古代の中国人は、「卍字不到頭」を漢式建築の彩画や漢服の生地に多く用いることで、吉運を引き寄せる事ができると信じていた。この理論は、現代の中国人にも受け継がれている。

この模様は、彩画や漢服のほか、刺繍、青銅器、陶器、磁器、瓦彫、木彫、石彫、窓枠など、さまざまな芸術形式で見ることができ、既に中国全土で広く見られている。また、多くは底模様や縁飾りとして用いられている。底模様として使用する際は、正立または45度角で配置されることがあり、中国のもう1つの伝統模様「団寿紋」と組み合わせることで、さらに複雑で美しくなる。一方、瓦彫や石彫・木彫において、「卍字不到頭」は主に陽刻で表現され、門の鉄製品などには主に陰刻で表現される。

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  45度角の卍字紋
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  木彫
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  石彫1
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  石彫2
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  石彫3
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  門の上部に施された石彫
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  扉の下部に施された装飾の中で
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  紫禁城の桁の中で
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  北京地下鉄西苑駅の柱の外装

日本

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  模様1
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  模様2
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  現代のカーテンに用いられる。
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  19世紀の紗綾形模様が施された鉄板、用途不明（メトロポリタン美術館所蔵）
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  紫馬麒麟卍紗綾形紋瓶（メトロポリタン美術館所蔵）
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  紅緑段紗綾形桜花模様唐織（メトロポリタン美術館所蔵）
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  綸子という絹織物（アメリカ合衆国議会図書館所蔵）
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  18世紀末期の江戸時代の生地（ロサンゼルス郡美術館所蔵）
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  18世紀中期の江戸時代の生地（ロサンゼルス郡美術館所蔵）

ベトナム

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  明命二年（1821年）の勅命（ハナム省）。縁飾りとして用いられる。
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  維新五年（1911年）の勅命（ニンビン省）。縁飾りとして用いられる。
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  順化皇城。壁の模様として用いられる。

タイ王国

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  仏像の周りの「光背」に用いられる。

関連項目

• 卍字
• 十字
• 模様
• 綾
• 紗

外部リンク

• 紗綾形（英文）アーカイブ 2005年4月4日 - ウェイバックマシン