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経済地理学

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経済地理学
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経済地理学(けいざいちりがく、: economic geography)は、経済諸活動の分布や空間的差異、空間的相互作用を対象とする学問分野である[1]経済学地理学の両方に関連し、両方からのアプローチがある[2]農業製造業商業金融業観光業など諸産業の立地や集積の形成、財の流通・分配における空間的流動、消費局面における空間的差異などが、おもな研究課題となるが、これに対するアプローチには多様なものがある。

地理学的視点

従来の経済学の理論は、生産地と消費地を同一と仮定した単一地点での経済現象を扱うが、経済地理学では生産地と消費地の距離を考慮して考察する[3]。生産地と消費地が離れていることにより輸送費が発生することで市場圏が形成され、空間的な差異が発生する[4]

山本 (2018)では、経済地理学における地理学的視点を以下5点に整理している[5]

  1. 経済現象の地域差の要因の解明
  2. 経済現象の分布や拡散の空間パターンの解明
  3. 産業地域の地域間関係の考察
  4. 産業地域の形成における自然環境の影響の解明
  5. 経済地域システムを構成する要素間の関係性の解明

研究動向

要約
視点

経済地理学の起源については、複数の主張がある[6]。イギリスの植民地主義のための商業地理学研究、ドイツの立地論研究、アルフレッド・マーシャルの産業集積論、北アメリカの人間環境学的な地理学研究などが挙げられる[6]

ドイツ

「経済地理学」の名称を設定し、学問として成立させたのは、ヴィルヘルム・ゲッツドイツ語版である[7]。ゲッツは経済地理学の目標を、財の生産および流通における自然の影響の解明とした[7]。1920年代頃までは、経済地誌の研究が主であった[8]

ドイツでは古典的な立地論が発表され、世界各国に広がっていった[1]

英語圏

第二次世界大戦後、経済地理学の研究の中心がドイツから英語圏に移った[8]。経済学では新古典派経済学によりドイツ立地論から地域経済学都市経済学地域科学英語版に発展した[9]。他方、地理学では1950年代後半以降、計量革命による理論化がすすめられたが、1960年代後半以降は理論化への批判から、具体化した研究として行動論的な立地論あるいは企業の地理学の研究がすすめられた[9]。1980年代には政治経済学的アプローチを重視する、マルクス主義経済地理学の研究が盛んになった[8]

1990年代以降は、地理学では研究方法の多様化が進行し[10]文化論的転回英語版および関係論的転回などの影響を受けた[8]。2000年代半ば以降は進化経済学との接近により進化経済地理学が発展した[8]。他方、経済学や経営学では経済地理学への関心が高まった[10]。この背景には新経済地理学や空間経済学クラスター論英語版の影響のほか、デヴィッド・ハーヴェイの影響が挙げられる[10]

日本

日本の経済地理学の源流は、商業系の中等教育・高等教育の科目としての商業地理学のほか、大学の地理学講座から生まれた経済地理学が挙げられる[11]。日本では1930年代頃に始められた[12]。当時は、ドイツ地理学から立地論、ソ連地理学から生産配置論、他にドイツおよびフランスの近代地理学が紹介されたほか、日本独自の理論として地域編成論が形成された[13]

第二次世界大戦後にも、日本では立地論の研究が続けられた[14]。他方、マルクス主義の影響を受けた研究が行われるようになった[14]。日本におけるマルクス主義経済地理学は、大きく経済地誌的アプローチ、地域的不均衡論、独自理論の追究の3つに分けられた[14]。学会については、1954年に経済地理学会が設立された[14]

1970年代以降は、地域構造論の提唱とともに地域構造論をめぐる論争が盛んであった[15]

一方、1990年代以降は近代経済学的経済地理学、マルクス主義経済地理学とも勢力が減衰し、方法論なき実証研究の勢力が拡大している[10]

欧米の経済地理学界とは異なる日本の特徴として、近代経済学的経済地理学およびマルクス主義経済地理学が共存する点[10]、立地論を批判的に導入し発展させてきた点が挙げられる[16]

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関係する分野

脚注

参考文献

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