AR(p) という表記は次数 p の自己回帰モデルを表す。AR(p)モデルは次の式で表される。

ここで
はモデルのパラメータ、
は定数項、
は誤差項(後述)である。定数項は単純化するために省かれることが多い。
自己回帰モデルは基本的に無限インパルス応答フィルタに一種の変形を加えたものである。
モデルとして定常的であるために、パラメータの値には何らかの制約が必要である。例えば、|φ1| > 1 となる AR(1)モデルは定常的ではない。
例: AR(1)過程
AR(1)過程は次の式で表される。

ここで、
は、
の分散に従うホワイトノイズである(
のような添え字は省いてある)。この過程は
であれば、共分散定常性を有する。
であれば、
は単位根を表し、ランダムウォークと見なされ、共分散定常性を有しない。そうでない場合、
の期待値の計算は単純である。ここで共分散定常性を以下のように定式化する。

従って、次のようになる。

ここで
は平均である。c = 0 なら、平均も 0 になり、分散は次のようになる。

自己共分散は次の式で表される。

この自己共分散関数は減衰時間
で減衰する(これを確かめるには、
で
が
に独立な場合を考えればよい。
であり、指数関数的減衰の法則
に適合することに注意されたい)。スペクトル密度関数は自己共分散関数の逆フーリエ変換である。離散系では、離散時間逆フーリエ変換が適用される。

が離散的であるため、この式の分母にあるコサインの項が折り返し雑音(エイリアス)を表している。標本化間隔(
)が減衰時間(
)より十分に小さいと仮定すると、
に連続体近似を適用できる。

この場合、スペクトル密度はローレンツ分布に従う。

ここで
は減衰時間
に関する角周波数である。
の別の表現方法として、最初の式で
を
に置き換える方法がある。これを再帰的に N回繰り返すと次の式になる。

N が無限大に近づくと、
はゼロに近づき、最終的に次の式が得られる。

ARパラメータの計算
AR(p)モデルは次の方程式で与えられる。

これはパラメータ
(i = 1, ..., p)に基づいている。これらパラメータは以下の Yule-Walker方程式で計算できる可能性がある。

ここで m = 0, ... , p であり、p + 1 個の方程式となる。
は X の自己共分散関数、
は入力ノイズ過程の標準偏差、δm はクロネッカーのデルタである。
この式の最後の部分は m = 0 のときだけ 0 でない値となるので、この方程式は一般に m > 0 のときの行列式で表すことで解ける。

これにより
が全て求められる。また、m = 0 のときは次のようになる。

これにより
が求められる。
導出
AR過程を定義する方程式は次の通りである。

両辺に Xt-m をかけて、期待値を求めるとしたとき、次のようになる。
![{\displaystyle E[X_{t}X_{t-m}]=E\left[\sum _{i=1}^{p}\varphi _{i}\,X_{t-i}X_{t-m}\right]+E[\varepsilon _{t}X_{t-m}].}](//wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/d0824e2d072b36aae0431637988b5efdb598d42d)
自己共分散関数の定義から、
である。ノイズ関数の値は互いに独立であり、ゼロより大きい m について Xt − m は εt に独立である。m ≠ 0 の場合、
となる。m = 0 の場合、次のようになる。
![{\displaystyle E[\varepsilon _{t}X_{t}]=E\left[\varepsilon _{t}(\sum _{i=1}^{p}\varphi _{i}\,X_{t-i}+\varepsilon _{t})\right]=\sum _{i=1}^{p}\varphi _{i}\,E[\varepsilon _{t}\,X_{t-i}]+E[\varepsilon _{t}^{2}]=0+\sigma _{\varepsilon }^{2},}](//wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/395aab62bda98aad7198afda1e1f47b407e87325)
従って、次が得られる。
![{\displaystyle \gamma _{m}=E\left[\sum _{i=1}^{p}\varphi _{i}\,X_{t-i}X_{t-m}\right]+\sigma _{\varepsilon }^{2}\delta _{m}.}](//wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/6bbd0638b2d0cf352d9aa0f73bd755f4967f71ad)
さらに
![{\displaystyle E\left[\sum _{i=1}^{p}\varphi _{i}\,X_{t-i}X_{t-m}\right]=\sum _{i=1}^{p}\varphi _{i}\,E[X_{t}X_{t-m+i}]=\sum _{i=1}^{p}\varphi _{i}\,\gamma _{m-i},}](//wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/ee3e9767b458cf0551a71c2996f5adbfcd9f9cde)
これにより次の Yule-Walker方程式が導かれる。
