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金属指示薬
錯滴定において金属イオンを検出する指示薬 ウィキペディアから
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金属指示薬(きんぞくしじやく、英語: complexometric indicator)は特定の金属イオンの溶液中濃度に依存して色調の変化を起こす色素であり、キレート滴定といった錯滴定の呈色指示薬として用いられる試薬の総称である[1]。錯滴定指示薬とも呼ばれる。
原理

金属指示薬は適当なpH条件で溶液中の金属イオン濃度に応じて色調が変化するため、キレート滴定における当量点の観測に用いられる[1]。金属指示薬は金属イオンとキレートを生成することで金属-金属指示薬複合体の呈色を示し、金属イオンがキレート試薬(EDTAなど)とより安定なキレートを形成し金属指示薬との配位結合を解消すると遊離型の呈色を示す。つまり、金属指示薬の色調の変化は、金属指示薬が金属-金属指示薬複合体と遊離型とで吸収波長が異なることにより生じる。[1]。キレート滴定の際、金属-キレート試薬間のキレート生成反応は金属-金属指示薬間のキレート生成反応より優先されなければならず、金属指示薬として用いるには一般に金属-金属指示薬複合体のほうが10から100倍不安定である必要がある[2]。以上のことから、金属指示薬は一般に以下の条件を満たす[2][3]。
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開発

初期に開発された金属指示薬としてエリオクロムブラックTやムレキシドが挙げられる[2]。これらはカルシウム、マグネシウムといった金属イオンを定量する際に多用されたが、低い選択性と狭いpH範囲しか使用できず、より高い選択性をもった金属指示薬の開発が期待されていた[2]。
錯滴定における利用
被滴定溶液中に緩衝液を加えてpHを金属指示薬の適正範囲にそろえてから、金属指示薬を数滴混ぜて、滴定溶液の滴下による被滴定溶液の色調の変化を観測することで当量点を観測できる[4][5]。和田によればキレート滴定において、指示薬の濃度が滴定する金属イオン濃度の100分の1以下でないと当量点で鋭敏な変色が得られないとされている[6]。2種類以上の金属イオンを同定するにはマスキング剤を加えるなどして選択的に金属イオンの滴定する[4]。
代表的な金属指示薬
代表的な金属指示薬を以下に挙げる。
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参考文献
- 藤永 太一郎、松井 正和「指示薬変色の理論」『Journal of the Japan Society of Colour Material』第34巻第3号、Japan Society of Colour Material、1961年、94-100頁、CRID 1390001205465292288、doi:10.4011/shikizai1937.34.94。
- 和田弘子「PANおよびその類縁体の金属指示薬としての応用」『分析化学』第21巻第4号、日本分析化学会、1972年、543-550頁、CRID 1390001204053021696、doi:10.2116/bunsekikagaku.21.543、ISSN 0525-1931。
- M. Cecilia Yappert; Donald B. DuPre (1997-12-01). “Complexometric Titrations: Competition of Complexing Agents in the Determination of Water Hardness with EDTA”. Journal of Chemical Education (American Chemical Society) 74 (12). doi:10.1021/ed074p1422.
- Zhai, Jingying; Bakker, Eric (2016-03-27). “Complexometric titrations: new reagents and concepts to overcome old limitations”. Analyst (Royal Society of Chemistry) 141: 4252-4261. doi:10.1039/C6AN00538A. ISSN 1364-5528.
- 栢多利博「キレート試薬とキレート滴定」『ぶんせき』第606号、日本分析化学会、2025年6月、161-162頁、ISSN 0386-2178。
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脚注
関連項目
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