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電線管
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電線管(でんせんかん)は、電線を収める金属製あるいは合成樹脂製の管(パイプ)状の電設資材である。ケーブル工事においては外装を保護する保護管として用いられる。

概要
電線管は電気の伝送に用いられる電線を収納し、保護する役割をしている。電気設備の技術基準の解釈(以降、電技解釈)において低圧の屋内配線、屋側配線又は屋外配線の方法として定められている合成樹脂管工事(電技解釈 第158条)、金属管工事(電技解釈 第159条)及び金属可とう電線管工事(電技解釈 第160条)では屋外用ビニル絶縁電線を除く絶縁電線を用いることとなっている。絶縁被覆の上に保護被覆を持つケーブルを収める場合はケーブル工事(電技解釈 第164条)となる。
露出配管ではサドルなどの配管支持材を用いて構造物に固定される。また、配管支持用の形鋼(「ダクターチャンネル」や「Eハンガー」等)を利用することでより自由度の高い配管工事ができる。
電線管への電線の通線、電線管の曲げ、ねじ切り、接続は電気工事士でなければ行うことができない。電気工事士の筆記試験では工事の内容に適切な電線管の選択を問う問題、技能試験では実際に電線管を加工する問題が出題される。
ケーブル(電纜)を収容するもの、特に埋設用のものは電纜管(でんらんかん)とも呼ばれた[1]。
電線管の役割
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種類
要約
視点
鋼製電線管
「金属管」とも呼ばれる[2]。鋼製電線管は衝撃や圧縮に強く、不燃性である特長を持つ[3]。合成樹脂可とう電線管で代用される場所も増加しているが、丈夫さや見た目の良さから鋼製電線管が採用される場所もまだ多い[2]。JIS C 8305として規格され、「厚鋼電線管」「薄鋼電線管」「ねじなし電線管」の3種類がある[3]。
切断時はパイプバイスやパイプカッタを用いる[4]。折り曲げる時はチョークで曲げ始めと曲げ終わりの点に印をつけた後、手またはパイプベンダーで折り曲げる[5]。ただし、この手法は熟練した技術が必要なため、比較的簡単に鋼製電線管を折り曲げられるようにロールベンダーが開発されている[6]。
厚鋼電線管(あつこうでんせんかん)
薄鋼電線管(うすこうでんせんかん)
ねじなし電線管
- 厚鋼・薄鋼電線管とは異なり管端にねじが切られていないもの。接続はねじ込み以外の手段が用いられる[8]。接続が容易であることから、厚鋼電線管でなければならない場所以外ではねじなし電線管が用いられることが多い[8]。薄鋼電線管より肉厚が薄いため、切断や曲げなどの加工性に優れる[3]。
- 管の記号Eと外径と近しい奇数の呼び径を合わせて表示される(例:E25)[3]。管の記号からE管とも呼ばれる。
厚鋼電線管、薄鋼電線管とも管の両端に雄ねじを切り、電線管相互やボックスとの接続が行われる。電線管相互の接続は両側が雌ねじとなっている専用のカップリングを用いられる。露出スイッチボックスや丸形露出ボックスには接続部に雌ねじがついており、電線管を直接ねじ込んで接続される。分電盤やプルボックス、アウトレットボックスなどへの接続はノックアウトを開けてロックナットで挟み込んで固定される。厚鋼と薄鋼ではねじ山の形状が異なるため、径が近しい部材であっても併用はできず、それぞれに専用の附属品が必要である。
一方、ねじなし電線管は管の側面からビスで締め付けて接続する専用のカップリングやボックスコネクタが用いられ、電線管同士の接続やボックス類との接続の際に、管にねじを切って接続するという工法に比べ、省力化が期待できる。ただし、ねじ山がないため、防水性で劣るなどの欠点もある。
ケーブルや弱電線を収める場合には金属管工事とはならないため、厚鋼電線管や薄鋼電線管であっても適合したサイズのねじなしのカップリングやボックスコネクタなどの付属品を用いた工法とすることができ、省力化が図ることができる。
ライニング鋼管
鋼製電線管を合成樹脂で被覆した電線管であり、JIS C 8380「ケーブル保護用合成樹脂被覆鋼管」で規格化されている。内外面ともに被覆した鋼管(LL)と、外面のみ被覆し、内面を塗装した鋼管(LT)の2種類がある。管の呼びは鋼管の呼びに被覆の種類を合わせて表される(例:G22LL)が、PEGなどでも表される[9]。規格の名称はケーブル保護用となっているが、電気用品安全法に適合した製品であれば、絶縁電線を収める金属管工事にも用いることができる[10]。
ライニング加工の分だけ外径が大きく呼びサイズのままの固定金具では ライニング被膜を損傷する事があるので固定金具のサイズ検討が必要である(例:G42=外径φ47.8、G42LL=外径φ49.0、C51用のダクタークリップを適用)。
金属製可とう電線管

鋼製電線管とは異なり、可撓性があり管を自由に曲げることができる。屈曲性が容易であることから、曲げ加工が必要な場所や、電動機などの機器への配管に用いられる[11]。
JIS C 8309で規格化されている二種金属製可とう電線管とビニル被覆二種金属製可とう電線管、および同規格の付属書Aに示されている一種金属性可とう電線管とビニル被覆一種金属性可とう電線管があるが、絶縁電線を収める金属可とう電線管工事に用いることができるのは前者2つの二種可とう管に限られる。JIS では管の記号が定められていないが、国交省の官庁営繕工事の技術基準では二種可とう管の記号F2とビニル被覆二種可とう管の記号F2WPが定められている(例:F2 24)。
合成樹脂製可とう電線管
可とう性に優れ、曲げや切断が容易にできる特長を持つ[12]。束巻形状であるので運搬や仮置きがしやすく、作業時に騒音が出ないため施工性に優れる[12]。ただし、合成樹脂製のため熱や圧力に弱い[13]。
大きな圧力や衝撃を受ける場所では適切な防護装置(コンクリートの埋設など)なしにこの管を用いることはできない[14]。また、爆発性粉塵や可燃性ガスのある場所では使用が禁止されている[14]。周辺の温度が高い場所(60℃以上)では使用を避けた方がよい[14]。JIS C 8411で規格化されており、細分すると次の二種類がある。
PF管(Plastic Flexible conduit、ピーエフかん)
CD管(Combined Duct、シーディーかん)
硬質ポリ塩化ビニル電線管
ポリ塩化ビニルまたは塩化ビニル樹脂を押出成形して製造された電線管[11]。機械的強度は鋼製電線管より劣るが、耐腐食性や電気的絶縁性などで優越性があり、腐食性ガスや湿気のある場所で用いられる[3]。記号は「VE」で、水道用硬質ビニル管のVPやVUと区別される[11]。
基本的には直線で伸ばしたい箇所に用いられるが、バーナーで炙ったりノーマルベンドなどで曲げることもできる。JIS C 8430で規格化されている。内径に近しい偶数の呼び径を合わせて表される(例:VE22)。定尺は4メートルである。
その他
波付硬質合成樹脂管
地中埋設用の配管。FEP管ともいう。JIS C3653「電力用ケーブルの地中埋設の施工方法」に規格がある。
ステンレス電線管
食品・医薬品工場など衛生規定が厳しい施設や、沿岸部など腐食が進みやすい環境向けにステンレスを採用した配管。
フレキシブル電線管
可動部などの頻繁な変形が想定される部分に使用される電線管である。
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電線管付属品
電線管付属品とは電線の保護や配線の整理を行うための部品のことである[16]。電気設備の安全性や見た目の向上を図れ、維持管理を効率よく行えるメリットがある[16]。
- カップリング
- 電線管どうしの接続に用いる[17]。サイズや種類の異なる電線管の接続ができるようになる[16]。ねじ付きとねじなしのものに分かれる。
- コネクタ
- ボックスや電線管、電気機器を電線保護チューブと接続する際に用いる[16]。
- エンド
- コンクリート打込配管で型枠に伏せて用いられる。
硬質電線管
市場
日本
鋼製電線管の2011年時点の日本の製造メーカーはパナソニック電工SPT、丸一鋼管、日鉄鋼管(現:日鉄建材)の3社のみ[8]。特にパナソニック電工SPTは2006年(平成18年)4月に業界1位の松下電工と業界2位の住友鋼管が電線管事業を統合したことで誕生した会社で、鋼製電線管の市場シェアの半分以上を占めるようになった[8]。
合成樹脂製可とう電線管の2011年時点での主要な製造メーカーは古河電気工業、パナソニック電工、未来工業、カナフレックスコーポレーション、バクマ工業の5社[8]。かつては十数社が製造していたが、撤退が相次ぎ上述の5社に集約された[8]。古河電気工業・パナソニック電工・未来工業の3社が合成樹脂製可とう電線管工業会に加盟しており、この3社で全国シェアのおよそ95%を占めている[8]。
電線管はメーカー代理店・電材店・流通商社などの取扱店を経由して、工事業者に販売される[8]。
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沿革
日本での電線管の製造は日本パイプ製造株式会社(現:パナソニック電工SPT)が始めたものであり、「電線管」の名称も同社が命名したと言われている[19]。
日本では1935年(昭和10年)の電気用品取締規則が発令され、電気用品としての電線管やその付属品はこの規則によって製造され始めた[20]。1951年(昭和36年)11月16日に電気用品取締法が公布され、1952年(昭和37年)9月15日には電気用品の技術上の基準が制定[20]。この基準に従って電線管やその付属品が製造、販売や使用されるようになった[20]。基準の制定によって日本工業規格で定められた規格も改訂された[20]。
脚注
関連項目
参考文献
外部リンク
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