1828年アメリカ合衆国大統領選挙

1828年アメリカ合衆国大統領選挙（1828ねんアメリカがっしゅうこくだいとうりょうせんきょ、英語: United States presidential election, 1828）は、1828年10月31日から12月3日にかけて施行されたアメリカ合衆国の大統領および副大統領を選出する選挙（第11回）である。

1828年アメリカ合衆国大統領選挙
United States presidential election, 1828

1824年 ← 1828年10月31日 → 1832年 投票率 57.6%[1]   候補者 アンドリュー・ジャクソン ジョン・クィンシー・アダムズ 政党 民主党 国民共和党 出身地域 テネシー州 マサチューセッツ州 副大統領候補者 ジョン・カルフーン リチャード・ラッシュ 獲得選挙人 178 83 勝利地域数 15 9 得票数 642,553 500,897 得票率 56.0% 43.6%

州別獲得選挙人分布図   ジャクソン   アダムズ   選挙人の出せない領土・係争地

選挙前大統領 ジョン・クィンシー・アダムズ 国民共和党 選出大統領 アンドリュー・ジャクソン 民主党

主な日程

1828年

• 10月31日：各州で選挙人選出手続開始。
• 11月13日：選挙人選出手続終了。
• 12月3日：大統領選挙人による投票。

1829年

• 2月4日：大統領選挙人による投票を開票。大統領および副大統領当選者が正式決定。
• 3月4日：大統領就任式。

概要

現職の大統領ジョン・クィンシー・アダムズと民主党の旗の下に候補者となった宿命のライバル、アンドリュー・ジャクソンの前回に続く再戦となった。

前回1824年の選挙とは異なり、2人以外には主要な候補者が参加せず、ジャクソンが支持母体を結集して選挙人選挙では容易にアダムズを破った。

アンドリュー・ジャクソンは1824年の大統領選挙の一般選挙^[2]と選挙人選挙で多数を獲得したが、それでも最終投票がアメリカ合衆国下院に持ち込まれたときにジョン・クィンシー・アダムズに敗れた。ヘンリー・クレイ（当時の下院議長）はキングメーカーの役割を果たす機会があった。クレイはアダムズと懇意な関係があるわけではなかったが、選挙中の西部での戦い方もあってジャクソンを軽蔑していた。クレイはアダムズに会ってその支持を確認し、そのすぐ後でアダムズが大統領を勝ち取った。選挙の数日後、アダムズは当時の考え方では次の大統領に繋がる役職である国務長官にクレイを指名した。ジャクソンとその支持者達は直ぐにクレイとアダムズを「裏取引」をやったと烙印を捺し、次の1828年の選挙まで大統領を非難し続けた。

候補者

選挙人の選出

選挙人の選出
選挙人の選定方法	州
州議会で選挙人を指名	デラウェア州 サウスカロライナ州
州内を選挙人選挙区に分割、1選挙区あたり1人を選出	メリーランド州 テネシー州
全州の選挙で2名の選挙人を選出、残りを州内の合衆国下院議員選挙区で各1名選出	メイン州
州内の合衆国下院議員選挙区で各1名選出。残る2名を選挙人が選出	ニューヨーク州
全州の選挙で選挙人を選出	その他の州すべて

選挙運動

選挙運動は圧倒的な量の中傷合戦によって特徴付けられた。ジャクソンの結婚が攻撃材料になった。ジャクソンがその妻レイチェルと結婚した時、2人はレイチェルの前夫との離婚が成立したと信じていたが、実際には成立しておらず、正式な書類が完成してから再度結婚しなければならなかった。アダムズの選挙運動でこれがスキャンダルになった。あるパンフレットでは、「姦婦だと宣告された者とその不倫の愛人を、この自由でキリスト教徒の国の最高位に就けるべきだろうか?」とされていた。

悪名高い「棺のチラシ」はジャクソンが行った軍法会議と脱走者の処刑、インディアン集落での虐殺、および何度も決闘したことを攻撃した。

アダムズも攻撃を免れなかった。アダムズが駐ロシア大使をしていた時に、アメリカ人の小間使いの少女を皇帝の欲求に任せたと告発された。アダムズはまた、公的資金を使って大統領官邸にギャンブルの装置を買ったとも非難された。その後、これはチェスのセットとビリヤードの台であることがわかった。

選挙結果

選挙人の選出は10月31日のオハイオ州とペンシルベニア州で始まり、11月13日のノースカロライナ州で終わった。選挙人団は12月3日に会した。

アダムズは、1800年アメリカ合衆国大統領選挙でその父ジョン・アダムズが勝利したのと全く同じ州で勝利した。すなわちニューイングランド各州とニュージャージー州およびデラウェア州であった。ジャクソンがその他の州全てを制した。アダムズにとって不運なことにこの選挙では1800年のときにあった州以外の州が多かった。結果はジャクソンの地滑り的な勝利であった。

e • d 

1828年アメリカ合衆国大統領選挙

（一般投票：1828年10月31日 - 11月13日施行、選挙人投票：1828年12月3日施行）

大統領候補		選挙人投票		一般投票		副大統領候補	選挙人投票
氏名 出身州	所属政党	得票数	得票率	得票数	得票率	氏名 出身州	得票数	得票率
アンドリュー・ジャクソン テネシー州	民主党	178	68.20	642,553	56.0	ジョン・カルフーン サウスカロライナ州	171	65.52
						ウィリアム・スミス サウスカロライナ州	7	2.68
ジョン・クィンシー・アダムズ マサチューセッツ州	国民共和党	83	31.80	500,897	43.6	リチャード・ラッシュ ペンシルベニア州	83	31.80
その他諸派・無所属候補総計		0	0.00	4,568	0.4		-	-
有効票		261	100.00				261	100.00
無効票・白票		0	0.00	不明	不明		0	0.00
投票総数		261	100.00	1,148,018	100.00		261	100.00
有権者（投票率）		261	100.00		57.6[3]
出典：Electoral College Box Scores 1789-1996, U.S. President National Vote. Our Campaigns[4]

州ごとの結果

		アンドリュー・ジャクソン 民主党			ジョン・クィンシー・アダムズ 国民共和党			州計
州	選挙人数	#	%	選挙人数	#	%	選挙人数	#
アラバマ州	5	0001361816,736	89.89	5	000486691,878	10.09	-	18,618	AL
コネチカット州	8	4,448	22.95	-	13,829	71.36	8	19,378	CT
デラウェア州	3	一般投票実施せず			一般投票実施せず		3	-	DE
ジョージア州	9	19,362	96.79	9	642	3.21	-	20,004	GA
イリノイ州	3	9,560	67.22	3	4,662	32.78	-	14,222	IL
インディアナ州[5]	5	22,201	56.62	5	17,009	43.38	-	39,210	IN
ケンタッキー州	14	39,308	55.54	14	31,468	44.46	-	70,776	KY
ルイジアナ州	5	4,605	53.01	5	4,082	46.99	-	8,687	LA
メイン州	9	13,927	40.03	1	20,773	59.71	8	34,789	ME
メリーランド州	11	22,782	49.75	5	23,014	50.25	6	45,796	MD
マサチューセッツ州	15	6,012	15.39	-	29,836	76.36	15	39,074	MA
ミシシッピ州	3	6,763	81.05	3	1,581	18.95	-	8,344	MS
ミズーリ州	3	8,232	70.64	3	3,422	29.36	-	11,654	MO
ニューハンプシャー州	8	20,212	45.90	-	23,823	54.10	8	44,035	NH
ニュージャージー州	8	21,809	47.86	-	23,753	52.12	8	45,570	NJ
ニューヨーク州	36	139,412	51.45	20	131,563	48.55	16	270,975	NY
ノースカロライナ州	15	37,814	73.07	15	13,918	26.90	-	51,747	NC
オハイオ州[5]	16	67,596	51.60	16	63,453	48.40	-	131,049	OH
ペンシルベニア州[5]	28	101,457	66.66	28	50,763	33.34	-	152,220	PA
ロードアイランド州[5]	4	820	22.91	-	2,755	76.96	4	3,580	RI
サウスカロライナ州	11	一般投票実施せず		11	一般投票実施せず			-	SC
テネシー州	11	44,293	95.19	11	2,240	4.81	-	46,533	TN
バーモント州[5]	7	8,350	25.43	-	24,363	74.20	7	32,833	VT
バージニア州	24	26,854	68.99	24	12,070	31.01	-	38,924	VA
合計:	261	642,553	55.97	178	500,897	43.63	83	1,148,018	US
選出必要数:	131

その後

レイチェル・ジャクソンは選挙運動中ずっと胸部に痛みを抱えており、結婚に関する個人攻撃のストレスで症状が悪化していた。レイチェルは1828年12月22日に屈辱のうちに死亡した。妻の死についてジャクソンはアダムズの選挙運動を非難し、ヘンリー・クレイについてはさらに強く攻撃した。ジャクソンは「私の敵は全て許すことができる。しかし妻を中傷した下劣な悪党達は神に慈悲を願わねばならない」と述べたという。