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2022年キルギス・タジキスタン国境紛争

両国の国境線を巡る紛争 ウィキペディアから

2022年キルギス・タジキスタン国境紛争
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2022年キルギス・タジキスタン国境紛争は、2021年に同国境沿いで発生した国境紛争の翌年に続いて発生した、両国の国境線を巡る紛争。

概要 時, 場所 ...

2021年に両国間で一連の衝突が発生した後、2022年1月27日にキルギスタジキスタンの国境間で再度散発的な衝突が起こった[13]

キルギス当局によると衝突は2022年9月14日にエスカレートし、タジキスタン軍は戦車、装甲兵員輸送車、迫撃砲を使って少なくとも1つのキルギスの村に侵入、キルギスバトケンの空港と隣接地域を砲撃した[14]。 両国は戦闘について互いを非難した[15]。国境紛争は2日間続きその後両国は2022年9月16日夜、停戦に合意したが[16]、停戦は一日のみに終わり戦闘が再開した[17][18]

キルギスのサディル・ジャパロフ大統領はテレビ演説で、キルギスとタジキスタンの国境問題を純粋に平和的な方法で解決するための努力を継続すると述べた[19]。タジキスタン外務省は紛争解決の鍵は交渉にあると述べ、キルギスが戦闘を扇動したとの立場を改めて強調した[20]。ロシアの通信社はタジキスタンソグド州知事の声明を引用し、キルギスとタジキスタン両国が国境から追加の兵器と部隊を撤退させることに合意したと報じた[19]。2022年9月20日、タジキスタンとキルギスは和平協定に署名した[21]

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背景

歴史的な背景

現在のキルギスとタジキスタンにあたる地域は、どちらもかつてコーカンド・ハン国の一部であったが、19世紀にロシア帝国に征服された[22]。1920年代にはソ連が両地域に境界線を設け、飛び地が形成された[23]。両国は1991年のソ連崩壊に伴い独立した。両国は上海協力機構[24]集団安全保障条約機構[25]にも加盟していて、理論上は同盟関係にある。

前年の衝突

2021年4月28日、キルギスとタジキスタンの間で国境紛争が始まった[26]。 紛争勃発の経緯については議論があるが、衝突は飛地ヴォルフ[27]付近における古くからの水争いが原因で始まったと伝えられている[28][29]

2021年5月3日、両国は国境からの軍の撤退を完了し[30]、 2021年5月18日、両国当局は係争国境沿いの共同警備に合意したと発表した[31]。2021年7月9日の小競り合いを除き[32]、停戦は2022年1月まで維持された。

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経過

散発的な衝突

2022年1月27日、係争国境の両側で衝突が発生し、タジキスタン人民間人2名が死亡、複数名が負傷した[33]。タジキスタン国家安全保障委員会は、負傷者は10名でうち6名は軍人、残りは民間人であるとの声明を発表した。一方、キルギス保健省は、少なくとも11名の国民が中等度の重傷を負い、治療を受けていると発表した。キルギス当局は、タジキスタン国民によるバトケン州中心部とイスファナを結ぶ道路封鎖が衝突の原因であると述べた[33]

3月10日、キルギス・タジキスタン国境のバトケン州テスキー英語版村において、国境警備隊員同士の衝突が発生し、タジキスタン国境警備隊員1名が死亡した。事件後、キルギスのバトケン州とタジキスタンのソグド州の当局者らが協議を行った[34][35]

タジキスタンの情報筋によると6月3日、キルギス軍がヴォルフ近郊のキルギス・タジキスタン国境を越えた後、衝突が発生した[36]。2週間後の6月14日、キルギス国境警備隊との衝突でタジキスタン国境警備隊員1人が死亡、3人が負傷した[37]

エスカレーション

9月14日、キルギス国境警備隊が、タジキスタンが国境線上に陣取ったと非難し発生した衝突で、タジキスタンの国境警備隊員1人が死亡、2人が負傷した[38]。同日遅く、国境警備隊員2人が死亡、11人が負傷したと報じられた。負傷者のうち5人は民間人だった[39]

9月16日、紛争はさらに激化した。戦車や装甲兵員輸送車の投入が報告され、キルギスのバトケン市にあるバトケン空港への砲撃も行われた。タジキスタンは、キルギスが前哨基地と国境を接する7つの村を重火器で砲撃したと非難した。タジキスタン軍はキルギス国境の村にも侵入した。キルギスは少なくとも31人の負傷者を報告し、イスファラ駐留のタジキスタン軍によると民間人1人が死亡、3人が負傷した。その後キルギスは24人が死亡、87人が負傷したと発表した[14][40]

これまで高官級の間では何度も停戦が成立したが、繰り返し破られてきた[14]。偶然にも、両国首脳はウズベキスタンのサマルカンドで開催された上海協力機構の2022年SCO首脳会議に出席しており、そこで会談して紛争について話し合った[41]キルギス議会は、この事態を受けて緊急会議を開いた[42]。キルギスでは13万6千人以上が紛争地域から避難した[43]。タジキスタンは、キルギスのバイラクタル TB2ドローンによるモスク攻撃で民間人15人が死亡したと発表した[44]

キルギスのアク・サイロシア語版村では、市場や学校を含む住宅や民間施設が放火され、略奪されたと報告されている。キルギス当局は、13万7000人がバトケン州とオシ州に避難したと発表した[45]

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分析

ワシントンのディプロマット紙英語版は、この紛争をタジキスタンによる侵略行為と呼び、この攻撃はタジキスタンのエモマリ・ラフモン大統領が、現在タジキスタン国会議長を務める息子のロスタム・エモマリ英語版氏に大統領職を譲る計画があるのではないかという憶測と関連している可能性があると、指摘した。またラフモン大統領は、ゴルノ・バダフシャン自治州におけるパミール人の抗議活動から国内外の関心を逸らそうとしているのではないかとも推測している[46]

国際社会の反応

イラン外務省報道官ナセル・カナニー英語版は、問題解決を求め、イランによる仲介への協力を申し出た[47]

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はキルギスとタジキスタン両国の首脳に電話をかけ、和平合意に応じるよう促した[48]。ロシアは両国に軍事基地を置いている[49]

トルコ外務省は、緊張がこれ以上エスカレートすることなく速やかに終息し、紛争が対話を通じて平和的に解決されることを期待する声明を発表した[50]。トルコ議会のムスタファ・シェントップ英語版議長は、キルギス、タジキスタン両国の議長と電話で会談し「今日、兄弟として我々の間の協議は重要だ」とし、問題を解決するには「冷静さと常識」が必要だと述べた[51]

国連事務総長アントニオ・グテーレスは「永続的な停戦のための対話」を呼びかけた[52]

脚注

関連項目

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