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ERBB3

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ERBB3
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ERBB3(v-erb-b2 avian erythroblastic leukemia viral oncogene homolog 3、ErbB3)またはHER3(human epidermal growth factor receptor 3)は、ヒトではERBB3遺伝子にコードされる膜タンパク質である。

概要 PDBに登録されている構造, PDB ...

ErbB3は上皮成長因子受容体ファミリー(EGFRファミリー、ErbBファミリー)の受容体型チロシンキナーゼである。キナーゼ活性をほぼ持たないErbB3はErbBファミリーの他のメンバーと活性型ヘテロ二量体を形成することが知られており、そのパートナーとして最も有名なものはリガンド結合を必要としないErbB2である。

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遺伝子と発現

ヒトのERBB3遺伝子は12番染色体英語版の長腕12q13に位置し、1342アミノ酸タンパク質へと翻訳される[5]

ヒトの発生過程では、ERBB3皮膚筋肉神経系心臓腸管上皮で発現している[6]。正常な成人では、ERBB3消化管生殖器、皮膚、神経系、泌尿器内分泌器で発現している[7]

構造

ErbB3は他のErbBファミリーのメンバーと同様、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、そして細胞内ドメインから構成される。細胞外ドメインは4つのサブドメイン(IからIV)からなる。サブドメインIとIIIはロイシンに富み、主にリガンド結合に関与している。サブドメインIIとIVはシステインに富み、ジスルフィド結合の形成によってタンパク質のコンフォメーションと安定性に寄与している可能性が高い。また、サブドメインIIには二量体形成に必要な二量体化ループが含まれている[8]。細胞内ドメインは、膜近接領域、キナーゼドメイン、C末端ドメインから構成される[9]

リガンドを結合していない受容体は、二量体化を阻害するコンフォメーションをとっている。リガンド結合サブドメイン(IとIII)にニューレグリン英語版が結合することでコンフォメーション変化が誘導され、サブドメインIIの二量体化ループが突出することで、活性化そして二量体化が引き起こされる[9]

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機能

ErbB3はヘレグリン[10]NRG2英語版[11]をリガンドとして結合することが示されている。リガンド結合はコンフォメーション変化を引き起こし、二量体化、リン酸化、そしてシグナル伝達の活性化が可能となる。ErbB3はErbBファミリーの他の3つのメンバーのいずれともヘテロ二量体を形成することができる。キナーゼ活性を持たないタンパク質の活性化には結合パートナーによるトランスリン酸化が必要となるため、理論的にはErbB3ホモ二量体は機能的でないものとなる[9]

リガンド結合に伴う自己リン酸化によって活性化される他のメンバーとは異なり、ErbB3はキナーゼ活性が損なわれていることが知られており、自己リン酸化活性はEGFRのわずか1/1000、そして他のタンパク質をリン酸化する活性は持たない[12]。そのため、ErbB3はアロステリック活性化因子として機能する。

ErbB2との相互作用

ErbB2-ErbB3二量体は可能なErbB二量体の組み合わせの中で最も活性が高いと考えられているが、その理由の1つとしてErbB2は全てのErbBファミリーのメンバーにとって選択的な二量体化パートナーであり、ErbB3はErbB2の選択的パートナーであることが考えられれている[13]。このヘテロ二量体化によって、シグナル伝達複合体はMAPKPI3K/AktPLCγなど複数の経路を活性化する[14]。また、ErbB2-ErbB3ヘテロ二量体はEGF様リガンドを結合して活性化される証拠も得られている[15][16]

PI3K/Akt経路の活性化

ErbB3の細胞内ドメインには、PI3Kのp85サブユニットのSH2ドメインの認識部位が6つ存在する[17]。ErbB3への結合によってPI3Kの脂質リン酸化サブユニットであるp110αがアロステリックに活性化されるが[14]、こうした機能はEGFRやErbB2にはみられない。

がんにおける役割

ErbB3の過剰発現や恒常的活性化、または変異がそれ単独で発がん性となる証拠は得られていないが[18]、ヘテロ二量体化のパートナー、特にErbB2のパートナーとして、成長、増殖、化学療法耐性、浸潤や転移の促進に関与していることが示唆されている[19][20][20]

ErbB3は多くのがんにおいて標的治療に対する耐性と関係しており、次のようなものが知られている。

ErbB2の過剰発現は、ErbB3や他のErbファミリーのメンバーと、リガンド結合を必要としない活性型ヘテロ二量体の形成を促進し、弱いものの恒常的なシグナル伝達活性を引き起こしている可能性がある[14]

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正常な発生における役割

ERBB3心内膜床英語版間葉系細胞で発現しており、この領域はその後心臓弁へと発生する。ErbB3ヌルマウス胚では房室弁に重度の形成不全がみられ、胎生13.5日で致死となる。ErbB3の機能はニューレグリンに依存しているが、ErbB2はこの組織では発現しておらず、ErbB2には依存していないようである[29]

また、ErbB3は神経堤の分化や交感神経系の発生[30]シュワン細胞など神経堤由来の細胞の発生[31]にも必要とされるようである。

出典

関連文献

関連項目

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