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階層型組織
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階層型組織(かいそうがたそしき、英:hierarchical organization)とは、組織内のすべての構成体が、ただ一つの例外を除いて、他の単一の構成体に従属するように構成された組織[1]。ヒエラルキー(階層制)の一形態である。通常、最上位の単独(または少数)権力があり、その下に段階的な中間権力が続く。
概要
階層型組織は、大規模組織における多数派の組織方式であり、ほとんどの株式会社・政府・犯罪組織・宗教団体は、権限や権威の段階を有する階層型組織の形を取る[2]。例として、カトリック教会の上位では、ローマ教皇→枢機卿→大司教→…と続く。別の例として、ヒンドゥー教のカースト制度における四つのカースト間の序列が挙げられるが、これは「各カーストが創造神ブラフマーの身体の異なる部位から由来し、上(頭)から下へと降る」という宗教的信念に基づく[3]。
階層型組織に属するメンバーは主に、直属の上司および直属の部下とコミュニケーションを取る。このように組織を構造化することは、情報の流れを限定することでコミュニケーションコストを低減できる利点がある[2]。
階層型組織は典型的にピラミッド(三角形)構造として視覚化される。ピラミッド内の高さが権力の地位を表し、幅は所属する人員や部署の数を表す。最上位の人々は頂点に位置しその数は非常に少なく(しばしば一人だけ)、底辺には部下を持たない多数の人々が含まれ[2]、頂点に近い者は底辺に近い者より権限が大きく、上位にいる人数は下位より少なく、高い地位を持ち、高い給与やその他の報酬を得る[4]。
階層型組織には、階層と分業という二つのメカニズムが関与している。たとえば、階層は上司一人と部下一人といった極小の関係でも成立する[5]。こうした単純な階層が、部下の専門化(例:生産・販売・経理)によって成長し、さらに各担当が自部門(生産部・販売部・経理部)を設け監督するようになると、典型的なピラミッドが生じる。この専門化の過程が分業である。
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社会における例
政府や大半の企業は階層型組織である[6]。伝統的には君主が国家の頂点に立っており、多くの国で封建制や荘園制が社会構造を提供し、君主を頂点として社会のあらゆる層に階層的な結びつきを張り巡らせた。
近代の脱封建国家でも、名目的な階層の頂点は依然として国家元首(大統領や立憲君主)にあるが、多くの現代国家では国家元首の権限は複数の機関に分散されている。国家元首の下(または並列)には議会があり、これらがさらに首相に日常の国政運営を委任し、首相はしばしば内閣を率いる。多くの民主国家では、憲法は理論上国民を国家元首より上位の概念的存在として置くが、実際に国民が行使できる影響力は選挙や国民投票に限定されることが多い[7][8][9]。
ビジネスでは、伝統的に株主が組織の頂点に位置づけられる。現代の多くの大企業では支配的単独株主が存在せず、実務上、所有者(株主)集団の権限は取締役会に委任され、取締役会はさらに日々の運営を代表取締役やCEOに委任する[10]。もっとも、株主が名目上階層の頂点に位置づけられるにもかかわらず、実際には多くの企業が経営陣の私的領地のように運営されることもある[11]。コーポレート・ガバナンスの規範は、この傾向を抑制しようとする。
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起源
家族・狩猟採集集団・部族・同好会といった小規模で非公式な社会単位は自発的に形成され、複雑な構造をほとんど必要とせず、自己組織化に頼ることがある[12]。一般的な見方では、階層的な習慣や構造は複雑性の増大に伴って発達し[13]、宗教の混合(シンクレティズム)や[14]、帝国拡大に伴う徴税の課題が[15]、こうした発展に寄与したとされる。
しかし他方で、単純な形の階層的リーダーシップは、人間および霊長類の共同体双方における相互作用から自然に生じると観察されている。たとえば、一部の個体が部族・拡大家族・氏族でより高い地位を得る場合や、能力・資源が個体間で不均等に分配されている場合などである[16][17][18]。
研究
組織開発理論家エリオット・ジャックスは(英語版)、自身の必然組織の概念の中で、階層に特別な役割を与えた[19]。
ロベルト・ミヒェルスの提唱した寡頭制の鉄則は、階層型組織が意思決定において寡頭化する不可避の傾向を描写する[20]。
ピーターの法則はローレンス・J・ピーター(英語版)が命名した用語で、階層型組織での人選が対象者の現在の職務での業績に基づいて行われ、将来の役職に必要な能力に基づかないことを指す。結果として、従業員は有効に職務を果たせなくなるレベルまで昇進し、管理者は無能レベルに達する。
ヒエラルキオロジーもピーターによる造語で、同名のユーモラスな著作で階層型組織とそのメンバーの行動を研究対象とする学として説明された。
この原理(ピーターの法則)を定式化したとき、私は知らず知らずのうちに新しい学、ヒエラルキオロジーを創始していた。ヒエラルキーという語はもともと、等級に区分された司祭による教会統治の体系を表す用語であった。現代的意味では、構成員や従業員が階級・等級・階層の順に配列されたあらゆる組織を含む。ヒエラルキオロジーは比較的新しい学ではあるが、公私の行政の分野で大いに適用可能であることがうかがえる—ローレンス・J・ピーター・レイモンド・ハル、『ピーターの法則』
デイヴィッド・アンドリュースの著書『ザ・IRGソリューション: 階層型組織の不利とその克服』は、階層型組織は本質的に非効率であり、私的・非公式ネットワークが育む大量の水平的・非公式コミュニケーションによってかろうじて機能していると論じた。
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類型
要約
視点
階層型組織は多面的な現象であり、その多様性を理解・把握するために各種の類型論が発展してきた。形式的と非形式的の区別はよく知られているが、四つのタイプに区別することもできる。
二つのタイプ:形式的と非形式的
マックス・ヴェーバーによれば、公式階層型構造とは、明示的な組織構造内の公的職位の垂直的序列であり、各職位は上位の職位の統制・監督下に置かれる[21]。「人に依存しない(中略)役割・地位の公的システム」で[22]、上意下達の指揮命令線で結ばれていると定義できる。
これに対し非公式階層型構造とは、コミュニケーションの結果生じる、人に依存する支配・従属関係を指す[23]。非公式階層型組織は、勤続年数・経験・社会的地位などの差に基づいて生じうる[24][25]。公式・非公式の階層構造は相補するため、同一組織内で共存する傾向があるが[26]、一般的パターンとして、公式階層が弱まると非公式階層が強まる(その逆も)というトレードオフがある[27]。
四つの権力軸
社会システムにおける階層型構造の権力軸を(1)公式的地位、(2) 達成度合い、(3) 自発性度合い、(4) イデオロギー整合度合い、の四つに分ける類型がある。[28]最初の二つは、先に述べた形式的・非形式的ヒエラルキーに対応する。この類型論は、そこに二つのタイプを加えて拡張したものである。[29]
- 公式的地位:これは意思決定の権限(地位)の段階的な序列として定義される[30][31][32][2]。企業における典型例は、取締役会→CEO→部門長→チームリーダー→一般従業員である[33]。地位的階層は、多くの場合組織の法的構造から生じる。たとえば、企業の所有者(株主や労働者、消費者、政府)がCEOを兼務するかCEOを任命し、CEOが部門長を任命・監督し、以下同様である[34]
- 達成度合:先述の非公式階層に相当し、非公式の仕組みによって人々を序列化する[35][36]。ここでいう序列とは、他者と相対した際の社会的・職業的な位置を意味し、公式的地位に由来しない差異を含む[37][38]。人類学・社会学では、これは属性原理に対する業績原理の概念に当たる[39][40]。背後にある仕組みは社会的階層化であり、専門性や年功を地位の根拠とみなす共有文化的信念を利用し、人々の間の地位差を自然で公正に見せる[41][42]。達成度合の軸は社会的に構成されるため、法的構造から(大部分が)生じる公式的地位の軸とは本質的に異なる[43]。また、達成度合の社会構成主義的性質は、頻繁に相互作用する集団(例:職場ユニット・チーム・家族・近隣)で、こうした梯子がとりわけ生じやすいことを意味する[44][45][46][47]。
- 自発性度合:組織設計(英語版)やアジリティの文献では、階層は業務活動から自生的に立ち上がる必要構造だと捉えられる[48][49][50][51]。たとえば、対等なパートナー3人の小企業は当初は階層なしで運営できるが、人員や業務が拡大すると調整と管理活動が必要となり、いずれかのパートナーが調整役を担い始める。別の例として、ホラクラシー(英語版)やソシオクラシーを採用する組織では、あらゆる人々が自発的に責任を負い、形式的権限ではなく実質的権限を行使する[52][53][54][55]。この観点では、責任は意思と義務感の表現である[56][57]。モンドラゴン協同組合企業のような労働者協同組合(初期段階)でも、自発的に階層が形成される事例が観察されている。[58]
- イデオロギー整合度合:イデオロギーに駆動される組織では、人々は宗教的・精神的・政治的な理念を持ち出して、上下関係の正統性を主張する[59][60][61]。古代エジプトのファラオや中世ヨーロッパの王を頂点とする行政階層はその長い歴史を持つ[62]。ファラオや王の正統性は、彼らが神と人間の仲介者として神意を代行するという強固な信念に由来した[63]。今日まで続く別例として、バリの共同体では稲作サイクルが神と人間の階層関係を構成すると信じられ、これが上位・下位カーストの階層をも正当化している[64]。カトリック教会やヒンドゥーのカースト制度も、イデオロギーの梯子によって支えられてきた。[65]また、ビジネス世界のあるべき姿に関する支配的価値観・信念によって駆動されるイデオロギーのヒエラルキーも多数存在する[66][67]。例として、「株主価値の最大化」というイデオロギーは上場企業で広く用いられ、株主から従業員への明確な権力階層イメージを創出・維持するのに役立つ[68]。もっとも、法的所有と実際の支配の分離により、実務上はCEOと取締役会が企業階層の頂点に立つ[69]。公開会社の組織が主として公式的地位に依存していることを踏まえると、この例は地位とイデオロギーが相補・相互強化し得ることも示している[70]。
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批判と代替
ウィリアム・ジェイムズ、ミシェル・フーコー、ヘイドン・ホワイトら多様な理論家の仕事は、階層的認識論への重要な批判を呈する。
スーザン・マクレアリ(英語版)ら多くの人々、そしてアナキズムのような階層組織に強く反対する政治思想は、階層と階層的思考を批判してきた。最も一般的に提案される代替はヘテラルキー(英語版)であり、これはジェラード・フェアトラフ(英語版)のトライアーキー理論において責任ある自律と結合されている。階層組織の最も有益な側面は、明確な指揮命令系統を確立する点にある。しかし、権力の濫用(英語版)によって階層が瓦解することもある[71]。
マトリックス組織は20世紀後半にマネジメントにおいて流行となった[72]。
情報通信技術の絶え間ない革新のなかで、階層的権威構造は、個人の意思決定裁量の拡大や職務の柔軟な定義へと道を譲りつつある。この新しい働き方は既存の組織形態に挑戦を突き付け、いくつかの研究は、伝統的組織と、オンライン・コミュニティのように個人的動機と自己決定の満足によって動くグループを対照している[73]。
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関連項目
脚注
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