ケルチ海峡事件
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ケルチ海峡事件(ケルチかいきょうじけん)は、2018年11月25日にアゾフ海のマリウポリ港に向かうために黒海からケルチ海峡の通過を試みたウクライナ海軍艦艇3隻に対し、ロシア連邦保安庁(FSB)の国境警備隊が発砲し、拿捕した国際事件[11]。ウクライナ紛争中にロシア軍が公然とウクライナ軍と交戦したのは初めてのことであった。
ケルチ海峡事件 | |||||||
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ウクライナ紛争中 | |||||||
ウクライナのギュルザ-M型砲艇から見た、ロシア国境軍警備艇「ドン」(右)に激突されたウクライナ海軍航洋曳船「ヤニ・カプ」(左) | |||||||
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衝突した勢力 | |||||||
戦力 | |||||||
艦艇10隻: ソボル型警備艇(英語版) (PSイズムルド&PSドン) 航空機: Ka-52 2機 Su-25 2機 |
ギュルザ-M型砲艇2隻 (ベルジャーンシク&ニーコポリ) プロメティ型航洋曳船1艇 (ヤニ・カプ) | ||||||
被害者数 | |||||||
2隻に僅かな損傷 |
乗組員24人が拘束[7] (3人負傷) 艦艇3隻が拿捕 (砲艇2隻、航洋曳船1艇。2隻の艦艇が損傷し、機関を喪失した)[8][9][10] | ||||||
2014年、ロシアはウクライナ領土として国際的に認められているクリミア半島を併合し、その後、海峡を渡るクリミア大橋を建設した。2003年の条約下で、海峡とアゾフ海は両国の共有領海であり、自由にアクセスできるようになっている[12][13]。一方、ロシアは、2003年の条約は法的に有効なままであるが、ウクライナの船舶は、海洋条約の法律で規定されているように、国境を越える航行の際は、クリミア半島の周辺沿いのロシアの海域に入る前に許可を求めなければならないと主張している[14]。ロシアによるクリミア併合はウクライナが認めていないため、ウクライナはクリミア海域についての国際条約の発動は違法であるとみなしている[15]。
2隻の砲艦と1隻の航洋曳船で構成された船団がケルチ海峡に近づくと、ロシア国境警備隊は、ウクライナ海軍艦艇に対し、国境警備隊が「ロシア領海」と呼ぶ所から離れるよう繰り返し要請したと述べた。彼らは、艦艇が海峡を通過するための正式な手順に従わなかった、ウクライナの艦艇が危険な操舵をしていた、そして彼らは無線通信に応答していなかったと述べた[16] [17]。ウクライナは、ロシア側に艦艇が海峡を通過することをロシア側に事前通知したこと、船団がロシアに無線で連絡したが、応答がなかったことを伝え、船団がロシアの領海に入ったとする主張に反する2003年の条約を引用した[18][19][20]。ロシアはウクライナ海軍艦艇を制止としたが、船団は橋の方向へと航行を続けた。ウクライナ海軍艦艇が橋に近づくと、ロシア当局は橋の下に大型貨物船を配置し、アゾフ海への経路を阻止した。ウクライナ海軍艦艇は、海峡で8時間停泊し続けた後、オデッサ港へと引き返した。ロシア国境警備隊は、海峡を離れるウクライナ海軍艦艇を追跡し、後にクリミア沖の公海で船団に発砲し、拿捕した[16][21][22][23]。衝突で3人のウクライナ人乗組員が負傷し、拿捕された艦艇の24人のウクライナ海軍将兵全員がロシアに拘束された[7][24]。
ウクライナ大統領はこの事件をロシアによる侵略の前兆の可能性として特徴づけ、ロシアとの国境沿いおよび黒海沿岸地域で戒厳令を宣言した(2018年12月26日に失効)[25][26]。ロシア政府は、この事件を2019年のウクライナ大統領選挙を控えたウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領による意図的な挑発と呼んだ[27]。ケルチ海峡事件は2018年のG20ブエノスアイレスサミットの数日前に発生し、西側の指導者たちは、ロシアに対する制裁について話した際にこの事件に言及した。