セクロピア
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セクロピア (Cecropia; ケクロピアと表記することもある) は新熱帯区に自生する雌雄異株の木本植物の1属で、特異な系統をなす。同属には2005年時において61種が種認定されている[1]。セクロピアは、新熱帯区においてパイオニア植物(英語版)として多かれ少なかれ熱帯雨林の一角を占めており、またその大部分がアリ植物として知られている[2]。バーグ Berg およびロッセリ Rosselli の唱える説[2]によると、セクロピアは通常とは異なる際立った特徴を有している。具体的には
- 花序全体が開花まで苞にすっぽり覆われていること。
- 葉柄基部にある托葉の表面に毛の密生した部分があり、そこからミュラー体(フードボディとも)というアリが好んでエサとする小粒を分泌すること。
- 開花すると葯は切り離されること。
セクロピア属 | ||||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||
Cecropia Loefl. (1759) | ||||||||||||||||||
種 | ||||||||||||||||||
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セクロピアは、アリの生態におけるその役割や、アリとの共生についてはよく研究されている[2] 。分類学上の位置づけについては議論の余地があり、過去にはケクロピア科、イラクサ科、クワ科に分類されたりした[3]。現在は被子植物真正双子葉類(コア真正双子葉類バラ類真正バラ類I)バラ目イラクサ科にケクロピア亜科 Cecropiacean が置かれている。
セクロピアは中南米原産であり、現地の熱帯雨林構成樹の一つとしてもっともよく知られている樹種である。属名のセクロピアは古代ギリシア、アテナイの伝説上の初代国王、ケクロプスにちなんでいる。原産地では俗にヤルモ (yarumo) とか ヤグルモ (yagrumo) 、特に外見が良く似たウコギ科フカノキ属 Schefflera と区別するときには ヤグルモ・エンブラ "yagrumo hembra" すなわち〈雌ヤグルモ〉と呼び習わされる (対するフカノキ属樹木はヤグルモ・マーチョ "yagrumo macho" 、つまり〈雄ヤグルモ〉などと呼ばれる)。英語では両属ともにパンプウッド (pumpwood, ただし特に C. schreberiana という種のみを指すために用いられる場合もある)、もしくはそのままセクロピアと呼び習わしている。スペイン語圏の中央アメリカ、メキシコ、カリブ諸国、コロンビア、エクアドルではもっぱら通俗名として“グアルモ”(guarumo) を使用している[2] 。
日本ではアリ植物としての性質から、かつてアリノスノキと云う和名が付けられたことがあった[4]が、2013年現在この呼び名は廃れており、セクロピア、もしくは原産地名と同じヤルマと呼ばれる。