ナンセンス変異依存mRNA分解機構
真核生物に存在するmRNAの品質監視機構 / ウィキペディア フリーな encyclopedia
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ナンセンス変異依存mRNA分解機構(ナンセンスへんいいぞんエムアールエヌエーぶんかいきこう、英:Nonsense-mediated mRNA decay、以下NMD)は、すべての真核生物に存在するmRNAの品質監視機構である。その主要な機能は、何らかの原因(例:インデル)により本来よりDNA上の上流に出現した終止コドンを含むmRNAを分解・除去することにより、最終産物である異常なタンパク質の量を未然に減少させることである[1]。このような異常なmRNAがタンパク質まで翻訳された場合、最終的に合成されたタンパク質が生命体にとって有害な機能獲得性変異を生じたり、ドミナントネガティブ作用を引き起こしたりする[2]。
NMDという現象は1979年に初めて、ヒトの細胞と酵母菌における現象としてほぼ同時に記述されている。これは、この機構が系統発生学的に種をまたいで、また時間的にも広く保存されており、生命体にとって生物学的に重要な役割を持つことを示している。
NMDは、細胞においてナンセンス突然変異を持つアレルから転写されたmRNAの量が予想に反して少ないことがしばしばある、という現象が観察されたことから発見された。ナンセンス突然変異は、塩基対の置換や挿入/欠失(インデル)により本来の終止コドンではない場所に終止コドンをコードするような変異である。本来アミノ酸をコードしていたコドンが終止コドンに置換されることでmRNAの翻訳領域は本来より短くなり、最終産物であるタンパク質も短くなる。タンパク質のどの程度が失われるかで、その変異タンパク質がまだ機能できるかどうかが決定される。この現象は異常なタンパク質の翻訳を抑制するだけでなく、ある特定の遺伝子変異の臨床像に対する影響を決定づける可能性がある。