ビーチング・アックス
ウィキペディア フリーな encyclopedia
ビーチング・アックス(英語: Beeching Axe、ビーチングの斧)は、1960年代にイギリス国鉄の収支改善を目的としたイギリス政府の取り組みに対する非公式の名称である。ビーチングという名は当時のイギリス国鉄総裁で報告書「イギリス国鉄の再建」 (The Reshaping of British Railways) の主著者であったリチャード・ビーチング(英語版)に由来している。この報告書では貨物輸送の新形態や幹線旅客輸送の近代化も提案されているが、輸送量の少ない不採算路線の機械的な廃止と、残る存続路線においても各駅停車と小駅の廃止を提言したことで知られる。
この報告書は、道路輸送の拡大で1950年代から鉄道輸送に大きな損失が発生し始めたことへの対策であった。1955年の鉄道近代化計画の実施後も根本的には改善せず、イギリス国鉄を悩ませ続けていた[1]。ビーチングは、大胆な措置が将来の損失拡大から鉄道を救う唯一の方策であると提案していた。
しかし、政府は報告書のうち投資よりも費用削減に多くの興味を示した。報告後10年間に4,000 マイル(6,400 キロメートル)を超える路線と3,000を超える駅が廃止され、鉄道網の路線長の25%と駅の50%が削減された。今日に至るまで、イギリスにおける鉄道ファンの団体や年配者、特に廃線に影響された地方の人々には、ビーチングの名は鉄道の大規模廃止や各駅停車の減便の代名詞となっている。